-01.宗教じゃないですから
「皆さん初めまして。マジカル・ワールドの代表である玉田紀夫です。
この会社は俺の同級生9人と立ち上げた会社で今までは19人と家族を巻き込んでの会社となっていました。
この会社は私が授かったある力に基づいて俺の周りのみんなが幸せになれるような活動をしていくために運用しています。ああ、だからと言って宗教じゃないのでご安心ください。」
全員が笑ってくれた。よし、つかみはOK。
「俺たちの会社はマジカル・ワールド、魔法の世界という名前です。
今から皆さんにちょっとしたマジックをお見せしましょう。
まずは一人ワンセットずつ配ってください。」
みんなで手分けして、スクラッチカードを配った。
「ここにおられる方は全員が俺たちの会社に就職を希望しているとお聞きしています。
間違いがなければ右手を上げてください。」
全員が右手を挙げてくれた。
「ありがとうございます。皆さんとは守秘義務の契約を結んでいただきます。
平たく言うと『会社で業務上知りえた秘密を他者に話さない。』というものです。
これはどこの会社でも取り交わす契約書の一種ですが、俺たちの会社ではこの約束がまず第一歩なのです。
雇用契約書の前に、まずこの契約書にサインして捺印してください。
もし、この契約が破られると、相応の損害賠償請求の対象となります。覚悟して、記入、捺印願います。」
またみんなに秘密保持契約書がボールペンと共に配られた。
今日みんなのために用意した椅子はリサイクルショップに大量にあった袖机の付いた会議用パイプ椅子だ。椅子として起こすと小さな机がついているものだ。それをちょっと改造して、ドリンクホルダーなども付けてある。
「皆さん、秘密保持契約を結んでいただきありがとうございます。
さて、俺の身に何があって現在に至っているかを少しお話しします。
ある日私はある方法で力を授かりました。
それは【豪運】という運を左右する力でした。
俺の力はそれから毎週増えていますが、まずその豪運の力を皆さんに見ていただきます。
先ほどお配りした封印されたスクラッチカードをどうかその場で開けて削ってみてください。」
みんなが削りだすとそこかしこで歓声が上がりだした。
当たっているのが自分だけではないと気づき、その歓声はますます膨れ上げってきた。
さすがに200人もいるとすごいね。
「皆さん、当たってましたでしょうか?
ここ3日間ほどいろんなところの宝くじ売り場を回って当たりくじ、それも2等が入っているものだけを買ってきたつもりですがどうでしょうか?
2等が当たった人は手を挙げてもらえますか?」
これも全員手を挙げた。
「はい、ありがとうございます。
これで皆さんは全員が10万円の口止め料を手にしました。
誰にも言っちゃだめですよ。
皆さんのまず一番初めの仕事はその当たりくじをもって、明日にでも住民票を取得して、銀行で口座を作ってきていただきます。
もちろんその口座は皆さん個人の口座ですし、そのお金も皆さんのものです。
しかし、10万円という金額。小遣いにはなるけれど資産というには全然足りない。
そこで俺たちはこのお金を増やしていこうと思っています。
今から支給するスマホはすべて会社名義のものです。通常会社との連絡はこれを使ってください。
それと、皆さん個人のスマホはお持ちでしょうか?
もし持たれていない人がいれば手を挙げてください。
その方々には個人のスマホも入手していただきます。
今はお金がなくて個人でスマホを契約できないという方もご相談くだされば給与天引きで購入費用をお貸ししますので、個人で契約してきてください。
さて、なぜ会社の連絡用と個人のスマホが必要なのか。
会社の連絡用は仕事のやり取りで発生する電話料金を個人に負担させたくないからです。
では個人のスマホはどうするのか。
皆さんにはそのスマホで資産を増やしてもらいます。
ああ、勘違いしないでくださいね。あくまであなたたちの個人資産です。
その個人資産を20億まで増やす予定です。
元金は先ほど皆さんが当てた10万円です。
ああ、言い忘れてましたが、初めての給料から先ほどのスクラッチ購入金額として2,000円徴収しますからよろしくお願いしますね。
そうしないと当たりくじを贈与したことになっちゃいますから。
あくまでそれらの当たりくじはそれぞれが個人で購入されて当たったものです。
宝くじ売り場からじゃなくて、俺からですが。」
ここでも少し笑いが取れた。うんうん。みんなリラックスしてきたね。
「皆さんの個人のスマホのアドレスを、あとで私に教えてくださいね。あ、ナンパじゃありませんので念のため。」
また笑ってくれた。
「その個人のメールアドレスに私から毎日メールが届きます。
1日10通ほどです。
そのメールは俺たちが開発したもので、受信すれば、勝手に株取引のツールを開いて、皆さんの口座から株取引を行います。
ああ、皆さんの個人スマホにその株取引ツールもインストールさせてください。
そして株取引専用の講座も開設してください。
詳しいやり方は後程資料をお渡ししますので、よく読んで行っていただければ問題ないと思います。
さて、その株取引ツールで皆さんの10万円のうち5万円を運用していきます。
大体1週間ほどで一億程の資産を作れると思います。
2週間目には20億に達するまで投資を続け20億に達した時点で、資産運用は終了させます。
このお金はあなた方が自分のスマホを使って株の取引を行い、資産を作ったものですから、もちろん個人のものです。
株取引口座から自分の口座に移せば自由におろしたり使ったりできます。
このお金はこれから先、老人になってもお金に不自由しないようにと考えて作るお金です。
お金に困っていると夢を追うことも、不自由なく生活することもできません。
できればその資産は大切に残しておいてください。
あまりにも金遣いが荒いようですと注意いたします。それでも辞めない場合は解雇させていただきます。
決して贅沢させるためにあなたたちを儲けさせる気はないのです。
あなた方が今後お金に追われて、また同じような仕事に戻らなくて済むようにこちらが考えた救済策なのです。
2週間後また皆さんには集まってもらって、そこでこの先この会社で続けて働くかどうかを確認させてもらいます。
その時点をもって一度雇用契約を解除します。そしてその後も続けていただけるようなら新たな雇用契約を結んでいただきます。
これは今回皆さんが合われた不幸に対する救済策と考えてください。
2週間後、この会社を去って行っても誰も文句を言いませんし、20億はそのまま持って行ってください。
その代わり、その時点で俺たちマジカル・ワールドとあなたとの関係は終わりです。
又資産を増やしてくれと来ても二度と同じ救済は行いません。
だからどうか、ひものような男と付き合っている人は縁を切ってくださいね。」
おっと外したか?笑えないか。
「さてここまでが救済措置です。ここからがようやく俺たちの仕事の話です。」
あ、これは笑ってくれた。
「皆さんには呉竹西駅、呉竹駅、呉竹東駅の駅前にそれぞれあるリサイクルショップの店員になってもらいます。
もちろん資材発注や在庫管理、給与計算などの裏方の仕事もありますので、それはそれぞれで選んでください。
できるだけ希望に沿った職場につくように配慮します。
その3店舗で行う業務は着物リサイクルとブランド品リサイクル、それとパワーストーンの販売店です。
これらは私の力の一部を使った機能で行うことができます。
これはこの週末20日にまた新たに呉服屋さんから補修依頼が来ますのでその際にお見せしますね。
現在のところ、呉服屋さんからは全国からの依頼で10日に一度500枚ほどの着物が当社に持ち込まれています。
ここでの補修費は単純明快で現在の着物の評価額と補修した後の評価額の差額の半分が補修費となります。
先日の500着の補修で1億円の補修費がすでに決まっています。
つまり現状でも当社は月に補修費だけで3億程の売り上げ予測が立っています。
そして、株取引では会社資産としてすでに1000億円の利益を上げています。」
これにはみんな驚いたみたいだね。
「そこで私たちは皆さんを救済することにしたのです。
警察や国があなたたちを守ったり助けてはくれないと思います。
きっかけは妹が攫われそうになったことでした。
そこから一つ一つ手繰っていくと、この町のやくざがいろんなところで人を不幸に陥れて、自分たちだけがうまい汁をすするという状況が分かった時に、俺はこんな奴らに不幸にされた人たちを今の状況から救い出したいと決意し、今に至っています。
これからも救っていきたいと考えています。それには普通に働いて食べていける仕事。環境が必要だと思うのです。
こんなこと言うと益々宗教染みてると思われるかもしれませんが、本来宗教って人を幸せにしないといけないと思うんです。
物を買わせて金を集める宗教って、宗教に名を借りた詐欺だと思いませんか?
本当にご利益のある宗教なら加入したらお金も儲かって生活に困らなくなるってぐらいでようやく宗教って言えると思うんです。
ああ、だからと言って当社は宗教法人じゃありませんよ。立派な営利企業です。」
みんな泣き笑いしだした。
「それと、皆さんの大半はお子さんがいらっしゃると思います。
既に報告を受けていますが、皆さん既に離婚が成立しています。
これはあまり言いたくないことなんですが、子供を人質にして仕事に縛り付けるというやり方が彼らの手口なんです。
その子供たちの面倒は会社が見ます。もちろん人質なんかじゃありません。
子供たちには勉強を教えます。
幼児教育はまだ開発していないので申し訳ないのですが、小学生から中学生、高校生までの通信講座をこの9月から開校予定です。
これも俺の力の一つラーニングという力を使って動画を作成します。先ほどご紹介した俺たちの母親たちも含めた21人、一人中学生もいますが、先日有名予備校の大学受験模試を受験してきました。
先ほど話したラーニングの力を使って学習したのです。
結果、全員21名が10位以内に入りました。
21人で10位っておかしいですよね。
現役高校生の俺たちは加点も含めて10教科1,000点満点中、1,005点で同率一位になりました。
その次が満点の1000点でこれは母さんたちと妹がとりました。
だから同率10位なのです。皆さんにはこれからそのラーニングを体験してもらいます。
さて、ここでいったんトイレ休憩をはさみますね10分後にまたここに来てください。ラーニング実施中は身動きが取れないでしょうから、トイレに行くこともできません。
ここにはトイレが10か所ほどありますが隣の2002,2003にも同数設置されていますので分散していってください。10分じゃ短いか。30分後にしますね。」
お俺はこうやってようやく休憩が取れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます