12.耐久増加【6/17】

 俺は会社に置いてある木本組のリストを見て愕然とした。

 そこには200人に及ぶ被害者の名前が書き連ねられていた。


 そればかりではなく、現在どれだけの借金を背負わされているか、どういう手口で風俗に売り飛ばされたかが克明に記録されていて、現住所も記載されていた。


 つまり、木本組は今もこの人たちからお金を巻き上げていたのだ。


 押収品の中に借用書も大量にあった。

 それをリストと照らし合わせて、現住所を特定した。

 そこからは仮面の出番だな。

 仮面をかぶった不審者がやってきて、借金はなくなった、というか債権者がいなくなったことを伝え、借用書を確認してもらって目の前で破り捨てた。

 その上でこれからどうしたいかを聞き、人生をやり直したいという人はうちで預かることにした。もっとも、借金がなくなったので田舎に帰って暮らすといった5人以外は全員引き取ることになった。

 俺は不動産屋にマンション一棟買いたいと申し出た。

 丁度新築のマンションでこれから分譲を始めようとしていたマンションがあるそうだ。ワンフロア15室、3LDKの20階建てだそうだ。


 う~ん。ここまでおあつらえ向きがあるかね?


 それも俺たちのマンションのすぐ近くだそうだ。

 値段は20億。う~ん。これって大分安いよな。

 でも大金だし、渋っている様子を見せて、なんでこんな値段で売ろうとしているのか探ってみた。

 すると答えは意外なことだった。


 一つにはこの地域のマンションの供給過多が起こっているようだ。

 道理で33階もワンフロア一気に買えたはずだ。

 もう一つは、大量の麻薬の売人が検挙されて、今この地域の地価がぐんぐん落ちているようだ。

 俺はそのマンションを15億まで値切って丸々一棟購入した。


 実は…と言いながら、他にも何棟かそういう物件があるという。

 ついでに言うと、うちのマンションの32~30階までのフロアーもすべて空きだそうだ。値切り交渉の結果、俺は30階までの3階分を2億5千万で購入し、さらにマンションをもう一棟購入した。

 こちらは30階建てで、各フロア20戸で600戸の物件だ。

 1戸1,000万円でも60億の物件を20億で購入した。

 月にそれぞれのマンションで200万円程維持メンテナンス費がかかるそうだ。

 これは入居者から管理人を選んで管理してもらった方がよさそうだ。

 会社の資産はすでに200億を超えていたので、ちょうどよかったかもしれない。

 個人資産はそれぞれすでに50億に達したので、それ以上増やすことはやめている。


 あ、今日授かったスキルが、さっそく役に立ちそうだ。

 早速購入したマンション全体にかけてきた。

 これで故障なども少なくなるだろう。


 今日は水曜日だ。

 新しいスキルを授かった。

【耐久増加】というスキルだ。

 これは

『耐久力が増加する。』

 としか書かれていなかった。

 また検証をしなければいけない。


 カアサンズとトウサンズは受け入れ体制ができたことを伝えると、すでにマジカル・ワールドに移籍を希望している人たちをすぐにでも今の環境から切り離したいとどんどん引っ越しさせた。


 これ全部女性なんだよな。風俗に売られたんだからそうなんだろうけどね。

 益々女性比率が高くなっていくんだよ。わが社の。


 一度全員集めて説明会を開くことになりそうだ。


 説得していく過程で、あまりにもひどい風俗店は店主が不慮の事故にあい、営業停止に追い込まれていた。

 借金の証文をカタに働かせられていた人は、店主がそれらの借金を清算して、借金はなくなったことになった。

 元々法外な利息をつけて、どれだけ働いても返す見込みが立たないものばかりだったので、弁護士さんを間に入れて訴訟しますよと脅すと借金はすでに完済したことになった。


 ワンフロア15室20階建てのところを下から順に入居してもらった。

 3LDKで家賃は10万円にした。会社の社宅としての扱いなので半額を支給し、実質家賃は5万円だ。

 これは同程度の新築マンションの半額ぐらいで通常20万円程するんだそうだ。

 このマンションの名前は『マジカル・ホープ』と命名した。


 最上階と一つ下のフロアまでを開けてもらっている。最上階の20階と19階は5室ずつを繋げて改修してもらったので上2つの階は合計6室となっている。

 ここはオフィスとして使おうと考えている。


 2階から18階までの255室に皆さんに入居してもらった。

 実際は14階までで収まったので15階から18階までは空き室になっている。


 呉竹市にある3つの駅前に店舗を借りて、そこでパワーストーンと高級和服、高級ブランドバッグのリサイクルショップをオープンすることを目標に動き始めてもらった。

 俺はまた不動産屋に行き、駅ビルの1階部分での空き店舗を探してもらったところ3駅共に空きがあるそうで、それぞれ3つのスペースに分けても十分な広さがあった。

 そこをすぐに抑えてもらい、それぞれ見て回ったが、駅からすぐに見えるところとあって、かなり商売がしやすそうだった。


 ここも、例の件で撤退していったチェーン店があったらしく、駅前というのに格安で賃貸できることになった。どの駅前の店舗も100万円/月だ。

 内装デザインや看板のデザイン、紙袋、査定表、HP,などどんどんデザインしていってもらって今試験的に動かしているサーバーにHPを立ち上げてもらった。

 うちの社員はみんなSE程度の技術は持っている。

 こうしてパワーストーンショップ、着物リサイクルショップ、ブランドバッグリサイクルショップを開店させる準備に入った。


 実は2週間ほど前に母さんがまたやらかしていた。

 前に頼まれて直した父さんからのプレゼントのブランド物のバッグ。

 実はあれ、父さんのばあちゃんから代々受け継いできたような骨とう品のバッグだったらしい。

 それを下げて、そのブランド専門店に入ったからさあ大変。


 目ざとい店員に店の奥に通され、どうやってこのバッグをここまでの状態で維持できるのかと問い詰められたらしい。

 すでにそのバッグの生産が中止されて100年は立っており、ヨーロッパの方の本店にも現存していないバッグだそうだ。


 代々受け継いできて、秘伝で修理して使い続けているというと、その店のオーナーは涙を流して喜んだという。

 ここでも断り切れずに俺のところにブランド物のバッグが大量に届くことになるらしい。

 バッグ類も着物と同じように、現在価格と補修後価格を鑑定しておいてその差額の半分を修繕費としていただくことにした。


 絶対に誰がやっているのかどんなやり方をしているのかは明かさないし探らないという契約の下、それらの修復も請け負うことになっていた。じゃあどうせならと型遅れのバッグの買い取りとそれらのリサイクル品の販売を行うことにしたのだ。


 着物の時の失敗を生かして、ブランドバッグでも同じようにカルテを作って対応するようにしている。

 カバンでもいろんなタイプがあるようなので姿絵が描かれた伝票などはカアサンズに任せた。


 引っ越しなども落ち着いた日曜日に俺は全員をマジカル・ホープの最上階2002号室に集めて、いくつかの約束をしてもらって契約書として作成した。もちろん守秘義務のことだ。


 この日までに買っておいた200セットほどのスクラッチは2等10万円の当たりくじが入っているようにした。

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