‐09.悪いことしたな
他のチームはどうだろうか?
本部に問い合わせてもらったら、両方とも順調に進んでいるようだ。俺たちは美香と合流してそれぞれに手口を教えて、アパートやマンションなんかは外から部屋の中を丸ごと収納してくればいいと伝えて、本部の指示で、手分けしてまわることにした。一人当たり3か所ほどだ。
尋問した中で一番やばいと思われるところは俺が担当した。
オフィス街の中の倉庫なのだが、セキュリティがガチガチらしい。
俺は若頭からそこのカギを奪っておいたので、それを使って開錠して中身を丸っと収納してきた。
何がやばいって、倉庫に麻薬が山ほど積まれていた。ここはいわゆるパケという小分けにした分包を作る作業所のようだった。そこで作業していた連中も身包み剥いで膝ひじを破壊しておいた。鑑定してみたがこいつら全員しゃぶ中だ。
次々にアジトを壊滅して会社に戻ってこれたのは朝の5時を回っていた。
続々とみんなが返ってきた。全員無事だったようだ。
さて、俺たちは着替えて学校に行かなきゃいけない。
既に金曜の朝だ。
俺たちは3503号室にそれぞれの班ごとに一部屋ずつ分け、押収してきたものを置いていった。木本組の押収物は結構な量に上っていたため2部屋占拠することになった。カジノのルーレット台なんかも押収してきたようだ。
母さんたちが朝食を作ってくれたのでそれを食べ、俺たちは学校に向かうことにした。
美香が心配だと話すと母さんが家に帰りしな、送っていくことになった。
みんなご苦労様。取りあえず寝られる人は寝てくださいね。
俺たちは眠気を我慢しながら放課後を迎え、教習所に行って教習を受けてから解散した。
さすがにみんな眠そうだ。
19時に家に帰りついて少し寝て起きたのは0時ごろだった。
昨日の朝発覚した呉竹市暴力団組織同時襲撃事件として報道されていた。
一昨日にも一つの暴力団組織が壊滅に追い込まれていたことから全国区のニュースになっていた。
俺たちは土曜の昼間になってようやく会社に集まってきた。
カアサンズとトウサンズはすでに押収した資料から、麻薬の売人や顧客などの関係性を相関図で作ってくれていた。
中でも中学生と高校生は見過ごせない。
高校生が36名、中学生が13名顧客リストに名前があった。
今日は土曜日だから、月曜まで待たないと学校に行けないので、どんな奴なのか調べることもできそうにない。
押収した麻薬はすべて俺が預かることにした。
こんなに処分に困るもの、組において来ればよかったな。
ん?今からでも行けるか?
そんなことを考えてると、ニュースで街の状況が報道されていた。
今この町は他から来た暴力団の草刈り場と化しているようだ。
俺は閃いてみんなと話をして、隠密スタイルに変身して、街で暴れてたり、職質受けてるやつらのポケットに麻薬のパケを一つずつ入れて回った。
あまりに囲まれている状況などは足元に音を立てて落としてやった。
あらかじめ鑑定でどこかの暴力団の構成員なら仕掛けるというルールのもと大勢の暴力団員が検挙され、近隣都市の暴力団事務所も家宅捜索が入ったようだ。
直接ポケットに入れる必要はなく、30m以内であればどこにでも取り出すことができるので、この方法は効果的だった。
この日だけでこの町に集まってきたチンピラたちは300人ほど検挙されている。
逮捕された全員が覚せい剤等麻薬取締法違反で検挙。この異常な事態もマスコミは大いに取り上げた。
二日連続で起こったことなので、どこの組も身に覚えがないことといえ、家宅捜索に入られている。中にはもちろん麻薬が事務所から出てきた組もあった。
この異常な事態に呉竹警察署も麻薬撲滅取り締まり対策室を急遽設置。
警視庁からの応援部隊も併せて、捜査が進められた。
このことにより、街にいた麻薬の売人の撤去にもつながっている。
さて、俺たちは明日、ライブハウスのオーディションがある。
時間は10時からだそうだ。
軽音部の部長とスマホで連絡を取り、俺たちは駅前のロータリー前の広場で待ち合わせることにした。
美香も一緒に行きたいというので、どうせならと美香を入れた曲も一曲やることにした。何曲出来るのかもわからないけどね。
一応俺たちが演奏してまだ演奏させてもらえそうなら美香も加わることにした。
俺たちは俺がボーカルを取る『アウトレイジ』という曲と、しおりが歌う『フラワー』という曲をやることにした。
フラワーでボーカルを取るしおりの代わりに美香のギターが入ることになる。
美香を交えての練習でその後の時間はつぶれた。
しかし、思っていたよりもグループの効果は高く、あっという間に同調してきた。
これなら何とかなるだろう。
翌日、俺はギターを背負って美香と一緒に駅前広場に向かった。
みんなはすでに集まっていた。
外でこうやってみんな私服で待ち合わせするって、よく考えたら初めてなんじゃないか?
俺は革ジャンにジーンズとTシャツだ。
身体が大きくなって今まで持ってた服を着るのをあきらめていたんっだけど、アイテムボックスが思いのほか優秀で、昔の服もリメイクして着れるんでよかった。
これをもっと早く思いついていれば、アンナにジャージ買い足さなくても済んだのに…。
みんなも体形が変わってるのでそれぞれがアイテムボックスを使って同じようにリメイクしているらしい。古くても新品になるしね。
俺たちは集まったけど部長たちはまだ来ていない。
時間は9時半だ。
オーディションは10時からと聞いている。
遅いなと待っていると部長からスマホに電話があった。
「はい、玉田です。」
「悪い、実はドラムの子が腹痛で行けなくなっちゃって。」
「え?それじゃ今日は無しですか?」
「いやいや、君たちは受け付けてもらえるように既に話しておいたから大丈夫だよ。」
「えっと。じゃあ俺たちだけで行けってことですか?」
「悪いけどそうなる。実はこないだの君たちの演奏を聞いてみんなビビっちゃってね。オーディション一緒に受けても受かるわけないって。」
「はぁ。」
「多分腹痛も仮病なんだと思うんだけどね。」
「はぁ。」
「申し訳ないけど君たちだけで受けてきてよ。」
「わかりました。なんかすいません。」
「気にしなくていいよ。おかげでみんなやる気にはなってるんだ。負けたくないって。」
そう言って部長は電話を切った。
「なんだって?」
と義男が聞いてきた。
「う~ん。何か先日の俺らの演奏聞いて自信なくしちゃったみたい。今日は俺たちだけで言ってくれって。」
「それは悪いことしたな。」
「まあ、気にしても仕方ないし場所は頭の中に地図が入っているからわかるし、行ってみよう。」
俺たちはライブハウスに移動することにした。
俺たちは駅前商店街の中にあるライブハウスまで移動した。
そのビルは上はカラオケルームやショットバーなんかが入っているようだ。
ライブハウスはこのビルの地下だ。
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