‐07.作戦会議

 多分2時間ぐらいかかるだろう。


 俺は地図の用意と、手袋やマスクの代わりになるものを探しに駅前に出た。

 もちろん普段の服装に直してある。まだ20時ぐらいなのにものすごい警戒だ。


 俺はまず靴屋に行って、スニーカーをみんなのサイズに合わせて買いこんだ。

 次に、スポーツ用品店でジャージを購入、あとは薬局で炊事用ゴム手袋、洋品店でTシャツを買った。あとはマスクだけど…。


 おもちゃ屋に行ってみたらネットで有名になったアノニマスのマスクが売っていた。これを改造して使おう。これも21個何とかあった。

 俺は物陰でそれらをアイテムボックスにしまうと、会社に戻る前にバーガーショップに寄ってハンバーガーを一人3個づつ購入した。もちろん俺のも買った。他にも飲み物が欲しいなと思って、スーパーでジュースを1Lのものを数本買っておいた。

 あとはコーヒーか紅茶にしてね。


 俺が大量のジュースをもって帰ろうとすると呼び止められた。

 気配察知で気づいていたが、逃げるのも不自然なので、声を掛けられるがままにしておいたんだ。


「君、昨日そこのバーガーショップで、女の子をかばって揉めてなかったかい?」

 やはり、この人は刑事のようだ。

「はい。妹たちを無理やり連れ去ろうとしてたんで、殴りかかってきたのをよけた後、裏に連れて行って説教してやりました。」

 俺はニコッと笑ってそう言った。


「その説教って、殴るけるってやつか?」

「いいえ、話し合いですよ。もし妹たちに手を出したら容赦しないと、脅しておきました。」

「その時に暴力は振るってないか?」

「いえ、特には…。いったい何があったんですか?今日昼間うちの会社に警察の方が来られたようですが…。」

「ああ、俺たちだ。俺は呉竹署の捜査第一課の司という。こいつも同じ課の大竹だ。」

 そう言って警察手帳を見せてくれた。

「実はその三人組、怪我をしててね。今は市の総合病院に入院している。」


「え?なんでだろ…。そういえば俺が何で女の子をさらおうとしたんだって聞いたら、女を連れて行かないと殺されるってぶつぶつ言ってたんですが…。」

「ああ、その夜、その三人組の兄貴分が襲撃されて、腰骨を粉砕骨折されていた。」

「怖いですね。で、その件と俺がどうつながってるんですか?」

「いや、単なる事情聴取さ。君が揉めていたのを通行人がたまたま見ててね。それで会って話を聞いてみたかったんだ。」

「そうですか。ご苦労様です。あの三人組はつかまるんですか?」

「まだ逮捕までには至ってないんだけど、さっきの兄貴分ってやつが強姦未遂でつかまってね。どうやら今の話とつながってくるような…。」


「俺はもう行っていいですか?せっかく買ったジュースがぬるくなっちゃうんで。」

 と両手に抱えたジュースの袋を上に少し上げてアピールしてみた。

「ああ、すまないね。そういえば君社長なんだってね。」

「ええ。パシリでジュース買いに行かされる社長ですけど何か。」

「え?ハハハ。じゃあありがとう。引き留めて悪かったね。」

 警部はそう言って立ち去っていった。

 俺はそのまま会社に戻った。できるだけ重そうにジュースをもって。


 ふ~。


 これで警察は大丈夫だろう。

 まあ、油断しないようにしよう。


 俺は会社に戻って、さっそく買ってきたものをそれぞれの体形に合わせて作っていった。鑑定を掛けるとかなり細かい寸法まで出てくる。そしてそれを記憶しておいてそれにあわせて物を作り替えることができた。


 いくつか買い足しておいたデジカメも胸の上の方にとりつくようにステーを加工しておいた。これは各班一人でいいだろう。

 みんなが起きだしてきた。それに合わせてハンバーガーを会議机に出すとみんな群がってきた。ジュースも冷えてるだろう。

 みんなが思い思いに飲んで食べて落ち着いたのを見計らって話し出した。


「みんながラーニングしている間に俺はみんなのコスチュームをそろえてきたよ。まずはこれが母さんの、これが美香の…。」

 全員にいきわたるように渡した。義男がさっそく早着替えに挑戦してパンツ一丁の姿をさらしていた。みんなに笑われている。いいよなこいつの性格。助かるよ。


「え~っと。次にはマスクです。取りあえずおもちゃ屋にあったもので作りました。」

 そう言ってそれぞれに渡していった。アノニマスのマスクは正面だけだ。髪型とかもばれないように少しマスクの面積を広げて後頭部に合わせ目を作った。俺も同じ仮面をかぶった。


 みんな3チームに分けた。本)が本部付け、実)実働部隊。

 Aチーム

 本)玉田みどり(1)

 実)玉田紀夫(2)、玉田美香(3)、護摩木しおり(4)、加藤すみれ(5)、米田源蔵(6)、米田由香里(7)


 Bチーム

 本)護摩木小百合(1)

 実)義男(2)、紗理奈(3)、明智都(4)、三好順子(5)、井之口京子(6)、明智喜久子(7)


 Cチーム

 本)加藤すみれ(1)、

 実)加藤翼(2)、沢田千秋(3)、井之口美穂(4)、徳田あかり(5)、徳田美智子(6)沢田五郎(7)


 そしてそれぞれの襲撃地点を説明した。

「今から作戦を説明します。作戦中はすべて念話でお願いします。尋問の際にも念話はかなり有効です。姿が見えない敵から頭の中に語り掛けられるというのは一種の恐怖です。こういう心理はうまく使って敵をやっつけましょう。あ、それとさっきジュース買いに行ったときに警部と会いました。事情聴取には応じておいたんで、あれでもう何も言ってこないと思います。」

 みんなは心なしかほっとしていた。


「それぞれのお面のおでこに番号が振ってあります。俺ならA-2となります。もしどうしても声で呼ばなければいけない時にはこの数字で呼んでください。絶対に名前では呼ばないようにしてくださいね。」

 みんなはそれぞれのお面を見て自分の番号を覚え、チームの番号も覚えていった。ここらは身体強化で記憶力が増大されている分記憶するのもすぐだ。


「ではまずAチーム。この班は佐藤組を襲撃します。

 3階建てのビルに入っているので、まず屋上まで跳躍して、屋上のドアをひねりつぶします。

 この時、一人は建物の外に控えていてください。

 警察や佐藤組の応援などが来た場合、すぐに念話で中のみんなに知らせてください。

 近くに上から見下ろせるような場所があれば、そこでスタンバイしておいてください。

 このあたりは各班共通です。今のうちに決めておきましょう。

 Aチームは美香にこの役をやってもらいます。

 みんなの服やマスクには耐刃性、衝撃耐性、耐銃撃性を改造の時に施していますが、十分に気を付けてくださいね。

 拳銃で撃たれれば普通は死にます。それをよく頭に入れておいてください。

 撃たれる前に避けるが基本です。次に遮蔽物を作る。いいですね。

 気配察知も侵入時からかけておいてください。会社から出るときは気配遮断だけで十分です。

 みんなの頭の中には特殊部隊の潜入方法などがあると思います。それを活用してください。

 今のみんなだと、たとえ特殊部隊であろうと負けないと思いますけどね。


 上から侵入するので恐らく最上階は組長がいるでしょう。

 まず部屋に入って、中の人間を掌底を首筋に打ち込んで気絶させます。

 気絶しない場合は心臓に向けて掌底を打ち込んでください。

 皆さんの靴の先には鉄板が仕込んであります。釘を踏んでも踏み抜くこともありません。足元が悪いときはそれを思い出してください。

 それで、このタイラップで手首同士と足首同士を結束してください。

 できれば相手が来ている服は、アイテムボックスに収納しちゃってください。

 あとはどこか身体を壊すのがいいんですが、今日はひざとひじにしましょうか。関節は逆に曲げると壊れます。難しい場合は関節を踏み抜いてくれればいいです。それで一生歩くことも物をつかむことも難しくなるでしょう。こういうことはためらうと逆にその災難は自分に降りかかってきます。

 マスクに一応、音声は漏れないように固定で隠密は掛けてありますが、できるだけ声を出すのは我慢してください。

 金庫の中身などはアイテムボックスの収納機能で中身だけ取り出せます。拳銃、麻薬、お金、証券証文などがあると思いますが全部収納しておいてください。この係も決めておいた方がいいですね。荒事は苦手だという人はこの役をお願いします。

 そして上から下に徐々に降りて行って、根こそぎ収納していきます。で、一人残らず駆除できたら撤収です。

 各班の1番の番号の人は本部に残って情報を念話で取りまとめてください。これは結構重要な役目で、麻薬の隠し場所、お金や拳銃などの武器の隠し場所なども1番の人が聞きだした傍から書き留めてください。

 本部とのやり取りをする人を決めておいた方がいいですね。

 それと尋問をする人。尋問をする人と本部に連絡する人は別にしとかないといちいち間が開いてしまいますからね。

 例えばAチームなら収納役をしおりさん、本部との連絡役をすみれさん、尋問役を俺がします。

 これはフェーズが尋問のフェーズに移ってからの役割です。初めの強襲は全員でかかることを忘れないでくださいね。侵入は一人ずつでいいですからね。


 Aチームではまず俺が侵入して、制圧してからみんなに入ってきてもらって拘束して、収納、尋問に移るという具合です。

 この尋問の際が一番危ないです。

 だからあとの二人、源蔵さんと由香里さんは下の階の警戒を行ってください。

 もし上ってきたら部屋の中に入れてから意識を奪うというやり方の方が確実に制圧できます。

 こちらから階段や部屋の外に出ていくと物音や扉の具合でいきなり発砲してくることも考えられます。むしろ廊下に人がいる時は外に出ないぐらいがいいと思います。こちらの姿は隠密であちらには見えていません。もし隠密が解けるようなことがあればすぐにかけなおして場所を移動してください。

 あとは下まで降りて、玄関から出ていきます。泣きわめいてうるさいようならそこらにあるカーテンなどを割いて猿轡にして黙らしてください。こんなとこかな。」

 

 俺はそこでいったん説明を切った。

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