11.グループ【6/10】
さて、すがすがしい水曜日の朝が来た。
KLX?ごめんよ。そんな昔のことは忘れちまったな。
…いや、忘れられねえよ。
結局あのあと9台KLX買うって言ったらおじちゃん大笑いしだすし。
本当に買うなら1台60万でいいぞって言ったから、その日は銀行寄れたんでみんな70万ほど持ってたんだよね。
それで契約書書いてコンビニで住民票取って、サインしてハンコ押して…。
KLX230か…。いいんだけどね。モトクロス好きだから俺。
でもみんな、金遣い荒くない?
金銭感覚狂ってない?
あ、ごめんよ。すがすがしい朝を物欲で汚しちまったみたいで。
今日のスキルは【グループ】
『グループ化したものどうしでスキルが共有できる。共有するスキルは選択できる。グループ化した相手と思念通話ができる。』
これ、もう使ってるよ。
まあ、いちいち学習しなくていいってメリットはあるけどね。
何だろなって感じだな。
でもこれもまたなにかと合わせて化けるんだろうな…。
そんな気がする。
気を取り直して今日も元気に学校に行こう。
俺は1階に降りて顔を洗って食卓に着いた。
今日も朝ご飯ありがとう。いただきます。
「お兄ちゃん。今度の日曜日バンドのオーディションがあるって聞いたよ?」
「うん。呉竹商店街にあるライブハウスでオーディションがあるんだ。」
「私呼ばれてないんですけど。」
「え?」
「私呼ばれてないんですけど?」
「いや、だってあくまで高校生が集まったバンド…。」
「私呼ばれてないんですけど!!」
「うん。わかったよ。偶数日はバイクの教習で奇数日はいつもマンションで練習してるからお前も入るか?楽器は何やりたい?」
「お兄ちゃんは何やってるの?」
「俺はギターとブルースハープとソプラノサックスを練習してるよ。」
「じゃあ、私もそれやる。教えて。」
「え?いいのか、それで。」
「いいの。お兄ちゃんが教えて。」
「お…おぅ。わかった。まず楽器の使い方と曲の構成を学習してから教えるな。その方が覚えるのも早いから。」
「じゃあ、それでいい。」
「おぅ。」
何だ?何の琴線に触れて怒りだして、何の琴線に触れて機嫌が直った?
俺の周りは琴線だらけか?
気配察知なにしてる!
空気読めるのは君しかいないんだ。
「お兄ちゃん早く食べないと置いてくよ。」
「お、おぅ。」
俺は急いでご飯を食べた。
「かあさん。今日の呉服屋の納品お願いね。」
「そうね、今日だったわね。前回うまくいったから大丈夫だと思うわよ。」
「うん。よろしく。」
俺は美香と共に行ってきます。
中学校で別れるまで、どんな曲やってるのかとか誰が歌ってるのかとかいろいろ聞いてくる。
最近、中学でみんなと遊んでから帰ってくるから、ろくに会ってなかったもんな。
あ、今日の放課後忘れずに美香の楽器そろえておかないといけないな。
またリサイクルショップに行くか。
俺はその日の放課後、リサイクルショップに寄って美香の楽器をそろえておいた。
なんとなくだけど、俺が使ってるのと同じのを欲しがる気がして、同じように改造しておいた。
俺が会社に到着すると
「遅い!お兄ちゃん。」
と、開口一番お叱りの声が聞こえてきた。
「悪い悪い。じゃあ、まず…。」
と言いかけた時、美香がほかにも友達を連れてきていることに気づいた。
ああ、最近この子たちと遊んでたから、会社の方に顔出してなかったのか。
「え~っと。その子たちは?」
「私の中学の同級生。ほら、自己紹介して。」
男の子2人と女の子2人だ。
「は…初めまして。僕は時任次郎…と言います。よろしくお願いします。」
どっちかというと細身でひょろっとしたタイプの男の子だ。
俺も中学の時、こんなだったな。
今では身体強化の影響で180㎝まで身長伸びて、自分で見てもマッチョになっちまったのは否めない。
「俺は真田一郎。よろしくお願いします。」
この子は柔道でもしてそうな体格だな。
二人とも身長はまだ170㎝もないのかな?
「私は福本五月。よろしくお願いします。お兄さん。」
この子は妹の美香と比べても見劣りしないぐらいの美人だな。
それにスタイルもいいし、出るとこ出てるし。
今どきの中学生ってみんなこんななのか…。
「私は伊丹保奈美と言います。よろしくお願いします。」
この子は黒髪がきれいな子だな。
日本人形みたいだ。
「ああ、えっと、次郎君に一郎君に五月ちゃんに保奈美ちゃんだったね。俺は美香の兄の紀夫だ。よろしく。」
と俺もあいさつした。
今の時間はみんなは3503号室に行って練習してるんだろうな。
俺も早く合流したいんだけど…。
「で、美香。どうして会社にお友達を連れてきたんだ?」
と俺は美香に聞いた。
「バンド。バンドやりたいの。」
「バンド?ああ、それは朝に聞いたからお前の楽器は揃えてきたけど…。」
「そうじゃないの。私たち5人でバンドやりたいの。お兄ちゃん達みたいに。」
「…なるほど。そういうことか。みんな同じ中学の同級生ってことでいいのかな?うちから家は近いのかな?」
「そうだね。みんなうちから5分ほどの距離なんだ。」
と美香は答える。
「う~ん。だったらうちの蔵を貸してあげるから、そこで練習するか?こっちでは高校生バンドがやってるからね。なかなか練習の時間も取れないだろうし。うちの蔵の俺が作ったスタジオなら、今は夜中に俺が使うぐらいで誰も使ってないから、放課後集まれば練習できるよ。そっちの方がそれぞれの家も近いだろうし、いいだろう。」
「う~ん。確かにそうだね。お兄ちゃんに教わりたかったんだけど。」
「俺はどこでも教えられるからな。むしろ家の方が都合はいいかもしれん。」
ここはあまり一般人を招き入れたくないんだよな。無意識でスキルの話が出ちゃうし、仕事の話もあまり他人に聞かせれるようなもんじゃない。
「じゃあ、うちの蔵に移動しよう。俺はその前にみんなに先に帰ることを伝えてくるね。あ、そうだ。みんなはどんな楽器やるの?見たところ手ぶらみたいだけど…。」
「え~っとね、お兄ちゃん。私がお兄ちゃんに教えてもらってバンドやるって昼休みに話したら、みんなもやりたいって言いだして、それで連れて来ちゃったの。だからまだ楽器も決めてないんだ。」
「そ…そうか。じゃあ、それぞれでやりたい楽器ある?」
「僕はベースをやってみたいんです。親戚のお兄ちゃんがやってるの見てかっこいいなってあこがれてました。」
と次郎君。
「俺はドラムかな。ああいうのをドコドコやれたら気持ちいいだろうなって思うんだ。」
と一郎君。
「私は漠然と何かやってみたかっただけなんで、これといった楽器は思いついてません。」
と五月ちゃん。正直でいいよ。
「私はピアノを習わされたけど、毎日同じ練習が嫌でやめちゃって…。それ以来楽器を触る機会がなかったです。」
と保奈美ちゃん。
…それぞれをちょっと鑑定。
「う~ん。じゃあ、適当に楽器が蔵にあるから、それをいろいろと触ってみようか。そのうち好きな楽器も見つかるさ。じゃあ、俺は仲間に帰るって伝えてくるね。」
俺はそう言って3501号室を後にした。
…え~っと。美香はバンドに入りたいって言うんじゃなくてバンドをやりたいってことだったのかな?だから自分のバンドが組めるようにメンバー揃えてきたってことなんだろうな。
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