09.気配察知【5/27】
瞬く間に又水曜日がやってきた。
今日のスキルは【気配察知】だ。
『見えていないところでも周りの気配を感じることができる。周囲100mの範囲で気配がわかる。』
う~ん。俺ってやっぱり忍者か暗殺者に近づいて行ってる?
これもみんなのご意見を伺おう。
≪順子 それより模試よ模試。私たちにとっては20年ぶりぐらいの一大イベントなのよ。今日にでも前にやったらしいヤマを張った所教えなさいよね。
おっと。すでに赤本も20冊ラーニングしてるのにまだ不安か。
仕方ないね。今日は勉強会だな。
千秋のところのお父さん沢田五郎さんは、引っ越しの話が出た時にちょうど五郎さんからも家族に話すことがあったらしい。
いわゆるリストラに合いそうだということだった。
俺のところにすぐ電話があり、それならぜひうちに来てもらおうとスカウトしたところ、渡りに船だったらしく、今はすでにMW(マジカル・ワールド)に詰めてくれている。貿易事務をしていたらしいので、さっそくパワーストーンと呼ばれるような宝石のクズや不良品をどこかから仕入れられないか探してもらっている。
こういうのはやはり実戦でバリバリやってた人の方が頼りになるね。
そのうち千秋のところの親父さんにも会いたいんだけどな。
その日の夕方。全員が集まっている中で椅子だけを並べて、俺が一人ホワイトボードに向かって話しながら書きなぐっていく。
埋まるとスマホで写真を撮って、次に行く。
10教科全部終えるのには夜の10時までかかってしまった。
みんなそれぞれ急いで家に帰っていった。
俺はスマホの画像をみんなのチャットアプリに挙げて、それをそれぞれ見返してもらった。
やはり中間テストのときと同じように頭に入っているようだ。
本当はぶっつけ本番で、みんなの実力が見たかったんだけどな。仕方ないね。
カンニングなんかしなくて済むという汚名を晴らすための戦いだからね。
美香も全部理解できたようだ。
小学生から高校生までの教科書全部ラーニングで学習したからね。
応用問題も赤本で対策してるし。
あとは当日を待つばかりだよな。
金曜日。模試前日。
残念教師に呼びつけられた。
「試験勉強の方はどうだ?」
「いやいや。もう試験勉強なんかしてないですよ。頭に入ってますからね。」
「それにしてもお前らのお母さん方も受験すると聞いた時には笑ったぞ。」
「人はいくつになっても勉強できるんですよ。今回はそれを証明しますよ。」
「言うねぇ。私もだんだんお前らが本当に全部勉強してるのかもと思いだしてきたぞ。」
「まあ、結果が全てですからね。期待しておいてください。あれって翌週の火曜日には結果が出るんですよね。」
「そう聞いてるな。あそこの予備校の模擬試験は実績もあるから、進路指導の判断基準にもなっているしな。」
「なるほど。」
試験当日。美香なんかは母さんとまるでピクニックに行くぐらいの気軽さで朝の準備をしていた。
受験票、シャーペン、消しゴム。
俺はいつも多めにアイテムボックスの中に入れている。
みんなにもこの3つだけは絶対忘れるなとチャットした。
試験会場は受験番号が続きだったせいか同じところだった。
見るからにお母さんたちが9人、高校一年生が9人、中学生が1人いる状態に会場でどよめきが上がっている。
予備校の人みたいな年配の人が寄ってきて事情を聴いてきた。
俺は高校で満点を取ったけど先生方は疑ってばかりだったこと。
教え方次第で高校一年でも大学受験レベルの学習はできること。
それの証明のために俺たちの母親にも教えて、妹も含めて受験しに来たことを伝えた。
予備校の先生たちは驚いていた。
俺たちがカンニングなんかしてないことを証明したいので、監督をよろしくお願いしますと言っておいた。笑って請け負ってくれたよ。
試験が始まり、割と簡単に解いていった。
豪運が作用しているのか、やはりヤマを張ったところは完全に出ていた。
ここの模試では加点があると聞いている。
ひょっとしたら1,000点以上が出るかもね。
俺たちは一日目を終え、みんな余裕の表情をしていた。
やっぱり大丈夫だったみたいだ。
俺たちは家に帰る途中、駅前のステーキハウスによって豪華な食事をして帰った。
翌日曜日も全く同じだった。
みんな余裕で解けたといっている。
美香なんかはあまりに余裕で解けたんで何か勘違いしてるかもと何度も見返していたそうだ。
まあ、結果は火曜日には出るさ。
月曜日は昨日行えなかった着物の納品と出荷検査に追われていた。
もちろん、俺たちは学校だったので母さんたちにお願いした。
てきぱきとした行動と、事前に呉服屋の方でも用意していたカルテがあったので、ずいぶんと仕事が早く終わったそうだ。どうやら番頭は無事更生の道に入れたようだな。
火曜日の3限目の授業中、俺たち9人はいきなり放送で校長室に呼び出された。
俺たちはいぶかりながらも校長室に向かった。
そこには担任の春日先生と教頭と校長先生がいた。
俺たちはなんで呼び出されたかはわかっていた。もちろん模擬試験の結果が出たのだ。
教頭は今にもかみつきそうな顔をして、俺をにらんでいた。
「君は教え方次第で、成績は上がると豪語していたそうだね。」
「豪語というか事実を言ったまでです。」
「その上でカンニングしたといううわさが流れてると知って、担任の春日先生に大学入試模擬試験で証明するといったそうじゃないか。」
「はい言いました。」
「その上君が教えたという母親たちと中学一年生の妹も一緒に受験したそうだな。」
「はい、そうですね。今日にもその結果が学校に届いていると思うのですが。どうでした?」
「…」
「ん?はい?」
「全員が満点で半分の我が校生徒は全員が1,005点の課点満点だそうだ。」
「ああ、そうですか。それはよかった。」
「君は何をしたのかね。」
「いや、勉強ですけど。」
「普通に勉強してこんな点が取れるわけがないだろう。やはりカンニングなのか?」
「どこまで疑えば気が済むんですか?それを晴らすためにわざわざ模試まで受けたのに。あなたの学生時代より相当に成績がいい俺たちのことが妬ましいんですか?」
「おい、玉田。言いすぎだ。」
「はい、春日先生。この人が現実を見切れないようなのでちょっと頭に来て言ってしまいました。申し訳ございません。」
俺たちは黙ってしまった。
「教頭先生。これは褒めるべき案件ではないのかね?大学受験模試で全国一番が同率で9人も我が校から出た。それも全員一年生だ。君は何を怒っているんだ。」
「いえ、自分は怒っているわけではないです。ただ、信じられないので不正を疑っております。」
「君は君が信じられないからと言って、現実を見もせずに生徒を疑っているのかね?実は事情はこの結果を持ってきてくれた予備校の先生から直接聞いたのだよ。なぜ母親や妹まで受験しに来たか。彼は彼の学習方法で勉強すれば学習効果が上がるといっていたそうだ。その時は若い子供の言うほら話だとみんな思っていたそうだよ。しかし、採点結果を見て愕然としたそうだ。それだけ目立つ集団だからね。試験官は特に目を光らせて監視していたそうだよ。しかし全員早々に回答を終えて時間を持て余していたらしい。中学生の子だけは何度も見返していたようだがね。」
「それは妹がこんなに簡単に解けるわけがない。私は勘違いしているのかも。という疑いが消えずに最後まで問題をよく読んでいたそうです。」
校長はそれを聞いてあきれた顔をした。
「その中学一年生の妹さんも1,000点で満点だよ。」
「ありがとうございます。妹も喜ぶでしょう。」
「それにしても加点はなかったとはいえ、お母さん方も全員満点だ。」
「母たちも喜ぶと思います。」
「次点は975点で2郎生だそうだ。こんなことはここの予備校始まって以来の快挙だと講師の先生は興奮していたよ。」
そこでしばらく黙ったがしばらくこちらも黙っていると口を開いた。
「君たちはどうしたい?」
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