-10.印刷物

 会社に戻るとみんなはパソコンを前にして、いろいろと調べ物をしているようだ。

 母さんはそのままキッチンに入って昼食の用意に取り掛かった。といってもまだ炊飯器を買えてないや。お昼はソバにするようだ。乾麺は大量に買ってるからね。


 俺はみんなに一枚ずつスポーツジムの会員証を渡した。

 初回に写真を撮るそうだから寝癖とっていくようにと俺が言うと、妹からそれってお兄ちゃんのことよねと言われて失笑を買ってしまった。


 おそばが出てきた。

 ざるそばと野菜かき揚げだ。

 かき揚げは作ってくれたんだな。

 サクサクとおいしい。

 うん。蕎麦もいいね。

 かき揚げも大きくて食べ応えがある。

 こういうのをサラッと作ってくれる主婦ってすごいよね。

 俺は感謝して平らげた。


 俺はお昼をいただいてから、さっそく呉竹呉服店とやり取りするための帳票類の原稿を作り始めた。

 大きさはA6ぐらいのメモ帳サイズでいいか。

 内容は受け取った日付、納品した日付、伝票№、受け取り伝票№ぐらいかな。

 あとはざっくり開けて、所感が書けるようにしておけばいいか。ああ、受け取り者名、納品者名もいるね。


 あとは納出庫の際は録画するようにしとかないとね。

 誰が出入りするかわからないからな。

 あとは着物を広げて写真を撮る台がいるな。

 縦2m×横2mぐらいの無地の代を作る必要がある。

 これってホームセンターでベニヤ板買って、生地屋で緋毛氈でも買って合成すればいいか。3色ほど仕入れとくか。赤と黒と白ぐらいがいいのかもしれないな。


 あとはデジタルカメラと三脚と照明か。

 これって床に広げて上から撮れれば便利なんじゃない?

 カメラ買うときに聞くか。焦点距離がどれぐらいになるのか。

 広角レンズはいるんだろうな。


 それと、着物保管袋を発注しないとね。

 聞いた問屋さんに電話で確認。

 なるほどこれはFAXでやり取りするのが早いかな。

 俺はパソコンでサクッと絵柄を作ってコンビニから送ることにした。

 まだFAXはないんだよね。

 固定電話はとりあえず一台買っておくか。オフィスフォンはまた今度考えよう。

 着物袋には洗浄補修済みと真ん中より少し上で大きめに印刷してもらおう。

 日付は…よく考えたらボールペンやマジックだと下の着物に影響が出る可能性があるな。これはシールで対応しよう。


 よし、これでいいだろう。

 俺はできたデザインをプリントアウトして、先ほど聞いた卸問屋のFAX番号の控えと伝票原稿をカバンに入れた。

 あとは

「俺今から印刷屋に行ってくるけど名刺のデザイン出来てる?」

 するとしおりが

「うん出来てるよ、印刷したのがこれ。」

 うん、いいね

 地球の上を箒に乗った魔女が飛んでる。

 マジカル・ワールドを表現しているな。


「うん。いいね。じゃあ、このロゴデザインと社名、住所、電話番号FAX番号を書いたもの…そうそう、こんな感じ。いいんじゃない?もしまた不満があったら、作り直そう。このデータをこのUSBメモリーに落として。OK。じゃあこれの印刷も掛けてくるね。」

 俺はそう言って母さんのところに言った。


「母さん、買い足さないといけない家電のリスト書いてくれてる?あ、これね。OK。これを買ってくるね。それと食材をちょっと買い足しておこうか。うん。コメは大量に要りそうだしね。」

 俺は母さんに確認を取ってリストをもらった。

「それじゃ行ってきます。」

 と俺は会社を出ていった。


 俺が駅前を印刷所に向けて歩いていると、ばったりと担任の春日先生と出会ってしまった。残念美人さんだ。


「お?お前玉田か?スーツなんか着てるから見違えたぞ。で、スーツ着てなにしてるんだお前は?」

「え~っと。仲間と会社作ったもんで、いろいろと動いてるんですよ。」

「会社?お前まだ高校一年だろ?確かに会社作るのに年齢制限はないけど、親御さんは知っているのか?」

「はい。知ってますよ。っていうか一緒の会社で手伝ってもらってます。」

 俺は暫定的に作った名刺を先生に渡した。

「これってそこのタワーマンションか?なんでこんなとこに会社作れるんだよ。」

「ちょっと急いでるのでごめんなさい。」

 俺は担任の春日先生を振り切って印刷屋に向かった。

 一応母さんたちに知らせておいた方がいいかもな。名刺も渡したから直接行く可能性もあるしな。

 俺は以心伝心のテレパシーを使って母さんに状況を説明しておいた。

 これで大丈夫だろう。

 俺はようやく印刷所についた。

 印刷所で、名刺を各人100枚ずつ、封筒を小さいのと大きいのそれぞれ500枚、しおりは原稿を作ってなかったが、レポート用紙を100枚束のものを100冊注文した。

 名刺はフルカラーで、片面刷り。封筒は白黒で濃淡で表現してもらうことにした。レポート用紙は上中央にロゴマークの白黒の濃淡で、下にMagical Worldと入れてもらった。

 うん。なかなかいいものができそうだ。

 俺はお金をカードで支払って、そのまま電気量販店に行った。


 母さん指定の1升炊きの炊飯器ってあるのかな?

 あったわ。ガス専用みたいだ。

 ここまで大きくないと20人のご飯が作れないそうだ。

 確かに一人一合でも2升は要るよね。

 つまりこれ2台か。

 イヤ、一台は一升炊き、もう一升は5合炊きを二台って方が使い勝手がいい気がする。

 5合炊きなら電気だしね。

 ちょっといいのを買っていこう。


 そのほかは電子レンジ2台。これはオーブンレンジってやつにしとこう。

 トースター5台。


 ……うちは飯場か何かか?


 あと寸胴2台。これらは金物屋に行かないと無理だな。

 俺はここで買えるものは全部買い、宅配してもらえるように手配した。

 急遽金物屋に行かないとね。


 商店街の中に業務用の鍋などを扱うお店があったので、そこに入って寸胴やフライパン、中華鍋、包丁、まな板などを買った。

 これは2個の寸胴の中に入れてもらい、それぞれ片手で持って店を出た。

 ビジネスバッグは肩から掛けている。


 人目があるし、見られてるからここで収納するのは無理そうだな。

 俺は食材を買うのをあきらめて一度会社に戻ることにした。

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