07.以心伝心【5/13】

 今日は水曜日だ。スキルメールの日だ。

 今週は【以心伝心】というスキルを授かった。


『相手に気持ちを伝えられる。 相手の気持ちがわかる。 相手の行動が読める。』


 というものだった。

 う~ん。テレパシー?

 俺はしおりに頭の中で話しかけてみた。

『しおり聞こえるか?今頭の中に話しかけてるんだけど』

『…聞こえるわ。これで返事ができてるのかな?』

『十分伝わってるよ。今週授かったスキルで以心伝心ってやつを試してみてるんだ。』

『そうなんだ。これってテレパシー?』

『うん。そんな感じだよね。』

『これってテストのカンニングし放題?』

『ハハハ。俺たちにそんなの必要ないのはこの二日間で知ってるだろうに。』

『そうだね。すごいよね。のりちゃんのヤマ全部当たってたんだもん。』

『まあ、あれは多分豪運スキルの影響もあると思うよ。』

『じゃあ、試験最終日、気を抜かず行こう。』

 と、こんな具合だ。


 俺はこのスキルがほかにも有効に使えることに気づいた。

『相手の行動が読める。』という部分だ。

 これは敵対する相手の行動もそうだが、次の一手をどうとるかが読めるようになる。


 これは株取引にも使えると思う。

 今日の放課後にでも、翼と検証だな。


 俺はいつものように朝ご飯をいただいて、美香と一緒に登校する。

「お兄ちゃん。最近夜遅いよね。」

「うん。兄ちゃん会社作ろうと思っててさ、そのための書類とかいろいろあるんだ。」

「なんか大変そうだよね。手伝おうか?」

「いやいや。お前を手伝わせるほどじゃないよ。今全部で9人で動いてるからね。問題は学校行ってる時間が長いんだよ。昼間やりたいこともできない。明日からのテスト休み中が勝負だけどね。」

「なるほどね。じゃあ頑張ってね。今度私の服を買いに行くときに付き合ってね。」

「おう。俺にセンスなんかないぞ?それでいいなら荷物持ちで付き合うよ。」

 俺は中学校の前で美香と別れた。


 そうか服か。

 中学生になって色気づいてきたのかな。


 …ってそういえば、俺たちもスーツなんか作っておいた方がいいんじゃないかな?

 今日みんなと話をしよう。


 俺のマンションは会社への賃貸として賃貸料が支払われることになる。

 あの部屋が俺たちのオフィスだ。

 5LDKあるから一部屋2人ずつかな。

 基本作業や話は広いリビングでするからな。でも会議机や椅子位はいるよな。

 昨日みんなのためのノートパソコンとタブレットは購入しておいたから、今日はみんなに配ってセットアップしてもらわなきゃだね。


 俺はしおりと合流して、義男と合流した。

 義男は親父さんから温泉施設の図面を預かってきてくれたようだ。

 早速今日の議題に挙げよう。


 今、マンションのカギは全員が持っている。

 いつも俺がいないとマンションに入れないようなら事務所として機能しないからね。

 さてテスト最終日だ。


 俺たちは、最終日の試験を無事に乗り切り、今は呉竹駅前のバーガーショップだ。

 そこでハンバーガーとコーラ片手に乾杯している。

 早速みんなに聞いてみたかったことを聞いてみる。

「まずはみんなおつかれさま。明日からの準備はできてる?印鑑と住民票。」

 俺はみんなを見回すとみんなうなずいていた。

「じゃあ、申し訳ないけど呉竹支店と呉竹西支店、呉竹東支店でそれぞれ分散して2人ずつかな明日の朝の9時から回ってくれるかな。それで口座を作ったらとりあえずスタンバイ完了だな。俺としおりと義男は行政書士なんかを回って会社設立のための書類で不備がないかを確認しておくね。それでOKが出たら、会社設立だね。ああそうだ、明日会社の定款をもって銀行に行って会社の口座も作っておくからね。メインバンクは宝くじの銀行を外そうと思ってるんだ。ほかにも口座があったほうがいいしね。給与なんかの振込手数料なんかは多くとられるけど、銀行も倒産する時代だからね。少しでも分散しておくのがいいと思ってるんだ。」

 そう言ってみんなを見回した。


「今頃、学校の教職員の間で大騒ぎしてるかもな。」

「え?なんで」

「だってここにいる全員多分ミスしなかったら100点でしょ。」

 みんなで笑った。

「しかしあそこまで同じ問題が出るかね。まるで初めから答案を知っていたような…。」

「それ以上はストップね。万が一でも他に聞かれて疑われたらいやだからね。まあ、証明の仕方はあるんだけどね。」

「どうやるの?」


「教師がテストの問題を作る前に俺たちが勉強会をやって、それをスマホで取っておく。すると、その問題がまったく同じだとしても後から作ったのは教師なんだから文句は言えない。」

「なるほど。逆に私たちの勉強会見に来られました?って聞くのもいいね。」

「それは傑作だけど趣味悪いよ。」

 みんなで笑いながら試験後の解放感に浸っていた。

 あ、行かなきゃいけないとこがあったんだ。


「そうだ。まだ話さなきゃいけないことがあるんだけど、まずはまだお昼のうちにここから歩いて10分ほどのところにあるリサイクルセンターに行かないか?会社の会議机や椅子とかソファーも見直したいからね。」

 みんなでリサイクルセンターに行くことになった。

 そこでちょうどいい大きさの会議机と会議椅子。

 それに大きめの冷蔵庫と洗濯機などを買い込んだ。

 配達してもらうことにして、その場は去った。

 アイテムボックスに入れられるんだけど、前にもここで買い物して、それを覚えてたみたいなんだよな。絶対見張られるだろうからね。

 それで俺たちはマンションに戻り、いくつか話し合わなきゃいけないことを話し合った。


「まず、一番重要でまだ決まってないのは会社名。これは早急に決めなきゃいけない。それと、俺たち基本学生服だけど、仕事中の仕事着というか、人に会うこともあるだろうから、スーツと作業着みたいなのは揃えておいた方がいいね。それとできればロゴマークや会社が一目でわかるイメージイラストとかかな。業務は今のところ株取引、リサイクル、洗浄、修繕、販売ってところかな。」

「温泉施設は入れないの?」

「う~ん。まだまだ先の話だしね。あとから営業項目に入れることもできるし、別会社も有りかなと思ってるんだ。あ、それと会社の口座作ったらみんな200万ずつ振り込んでね。俺が400万円振り込んで合計2,000万円を資本金にするからね。」

「わかった。でも数日前まで、自分が200万円振り込むって思わなかったわ。」

 と三好さんはくすくす笑っている。

 三好さんと井之口さんのところは母子家庭のようだ。結構大変だったようだから、お金が潤沢にあることなどなかったのだろう。


「これからは三好さんに経理の仕事をお願いするから頼むね。それから沢田さんは総務だな。この事務所が使い勝手のいいように必要な備品を買ったりもしておいてね。掃除は全員がすること。翼は株取引の情報をみんなに送信するためのシステム作りだな。メールの一斉配信でも良いんだけどタイムリーにしようと思ったら俺がボイスチャットで送るのも一つかなと思うんだ。そのあたりのメリットデメリットを検討してほしいんだ。しおりと義男と徳田さんは温泉施設のことを一緒に考えてほしい。実際の運営まで考えるつもりでいるからよろしく。井之口さんと明智さんはちょっとリサイクル事業の見直しをしたいんで知恵を貸してほしい。」

 それぞれが了解してくれた。


 当面の会社の売り上げは呉服問屋からのリペア依頼だな。その手の案件が後2~3欲しいんだよね。

 あ。忘れるとこだった。


「みんなに昨日ノートパソコンとタブレットを買って来てあるんだ。それぞれセットアップしてくれるかな。家に帰ってからでもいいけど、ここでやっておいた方が、ごみも置いておけるしいいだろうと思って。はい。これみんなで一つずつね。」

 俺は忘れかけていたタブレットとノートPCをみんなに渡した。

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