-02.密談

「そのスキルとラーニングは違うの?」

 と、徳田美千代。


「うん。俺も初めはわからなかったんだけどね。それがさっきの勉強会で一通り分かったんだ。記憶力を強化するのは身体強化で間違いないんだ。ラーニングは知識を頭に刷り込んで忘れさせないようにするみたいなんだ。だから、問題集なんかをやると応用問題なんかも解けるようになってくるんだ。これは単純な記憶ではできないからね。それとさっき勉強会で試した、実践することで学習することができるんだ。これは俺が教えることを実践した結果みんなにもラーニングと同じ効果が上がったと思ってる。」


「なるほどな。でも他にもスキルってやつあるんだろ?今の話じゃ親父が言ってたリフォームの達人って話にはならないもんな。」

「うん。アイテムボックスの基本機能として収納、解体、修復、復元、改造ってのがあるんだ。山田さんの家から電気とガスと水道の配管を先に収納して、家ごと収納、修復、復元して元通りに設置したから新品同様にきれいになってるんだよ。だからお前の親父さんのところに手伝いには行けない。」

 俺はそう言って笑った。みんなもそりゃそうだよねと笑っていた。


「俺の今のスキルは豪運、鑑定、アイテムボックス、身体強化、感覚強化、ラーニングの6個だ。今日は5月7日の木曜日だ。来週の水曜日にまたスキルを授かることになると思う。」

「それが一年間か…。で、私たちに何をやらせる気?」

 しおりが俺を攻めるように言った。

「いや、別に嫌なことを強要するつもりはないよ。いくつかやりたいことはあるけどまず初めはお金稼ぎかな。ずっと宝くじじゃ目立っちゃうからね。多分銀行からはすでに目をつけられていると思う。その次はアドバイザーかな。俺のスキルってどんどん増えるし、その割にヒントが少ないんだよな。どんな事やればどうなるのか、それを模索しながら今日までは来たんだよ。うちのかあさんと妹はこの力のことは知ってるからね。今までは二人に相談してたんだ。で、できれば一緒に組んでいける仲間が欲しくなったってこと。いつまでもごまかせないだろうしね。それと、もしあるんなら君たちが持ってる夢をこの力を使って実現して行けないかなと思ってるんだ。」

「え?それって、玉田君が力を使って手助けしてくれるってこと?」

 と、徳田京子が言った。


「そう、その通り。だってこんな力、公にはできない。けど一人で持つには重すぎるんだよね。大げさかもしれないけど誰かが何かの目的で俺に力を授けてくれてるのかもしれないけど、今の俺にはわからないからな。それなら、周りの人たちだけでも幸せになるために力を使ってみたいなと考えてるんだ。」

「なるほどな。その第一弾がジジババ温泉かよ。」

 と、義男が言った。

「ジジババ温泉ってひどいネーミングだよな。うちの隣の山田さんのおじいちゃんが亡くなって広大な農地と山を買い取ってくれって言われて買い取ったんだよ。そこの家をさっきのアイテムボックスで修繕したから、そこを使って温泉掘って近所のじいちゃんやばあちゃんたちに使ってもらえたらいいなと思ってるだけなんだ。もちろん俺たちも入るけどね。で、その横にポケバイのサーキットも作って子供たちにも来てもらいたい。そんな構想をもって義男ん所の米田工務店に手伝ってもらってるんだよ。」

「でも、温泉掘るってすごくお金がかかるんじゃない?なんかのテレビで見たことあるよ。」

 と、井之口。

「うん、今のところ温泉掘って入浴施設作るのに3,000万円ぐらいかな。全部入れると1億ぐらいはかかりそうだよな。」

「え?そんなにかかるの?採算とれるの?」

 と、しおり。

「いやいや、そこはあくまで個人の所有だからね。趣味だよ趣味。まあ、ゆくゆくは何かしらのお金を生み出すことを考えないと維持費も出ないからね。」

「でも一億って…。」

「ああ、今時点での俺の個人資産は30億を超えてるよ。」

「なるほど、それで株なんだね。」

 と、翼。

「うん、そうなんだ。このマンションで株を売り買いしてお金を増やしたいんだよね。」

「いいよ。私は全面的に協力する。」

 と、しおり。

「俺もやるぜ。腐れ縁だしな。何より面白そうだ。」

 と、義男。

「確かに僕も株ばかりだったから他に投資することも考えたかったんだ。僕も協力する。」

 と翼。

「いいわね。高校一年生から起業するってことでしょ?めったにない話だし、玉田君に教えてもらえば大学受験なんて簡単に突破できそうだしね。私も協力するわ。」

 と、三好紗理奈。

「私ももちろん協力するわ。差し当たってスカウト料も500万円ほどもらったしね。」

 と、井之口美穂。

「私も何ができるかわからないけど協力する。でも私にできることあるかな。」

 と、沢田千秋。

「それをみんなで探していこうってのがこの集まりなんでしょ?いいわよ。私も参加する。」

 と、明智都。

「うんうん。すごく面白そうだね。そんな温泉出来たらおばあちゃんたちもうれしいだろうしね。私も協力するよ。」

 と、徳田あかり。


 そんなこんなでこのマンションを拠点として、まずは第一歩を踏み出すことにした。


 そして、会社設立のための行政書士を探すのと会社設立のための書類作成、そういう事務作業を三好が中心にやってくれることになった。

 それと、試験休みの間に各自口座を作りに行かなきゃいけないので、住民票の取得と印鑑は用意しておく必要がある。家の人にお願いして、銀行口座作りたいから住民票取ってきておいてと頼める人は頼むことになった。全員がそこまでは何とかなりそうだ。

 それと俺が使ってるところと同じ証券会社の口座をその銀行口座と連動して作っておいてもらう。俺がメールで指示出せばそれぞれがスマホで株を買えるからね。そのあたりのシステムは翼と俺が担当することになった。

 まずは試験を乗り越えて、その先に楽しいことが待ってるから頑張ろう。


 俺たちがこの夏にはバイクの免許を取りに行くと話すとみんなも一緒に行きたがった。

 今はみんなお金があるからね。

 ああ、そうだ。会社を興すことと、株で資金を作ることは親にも了承をもらっておいてほしいとお願いした。

 あとで問題にならなきゃいいんだけどね。

 まあそのうち自分の子供が株で儲けてるってわかると安心するんだろうけどね。


 そうそう。親や親族対策もしておかないとね。

「え~っと。もし親から『俺の金も増やせ』なんて理不尽なこと言われたら教えてね。対策は考えてあるから。」

「どう対策するの?」

 としおり。

「うん。株のメルマガを発行しようと思ってるんだ。そうだな1通10万円ぐらいで100万円ぐらいは儲かる情報を流すんだ。それで私たちはそこから情報をもらってるから仕方がないから紹介するけどほかには絶対言っちゃだめだよってことで、毎回自分で10万円払って情報を買ってもらおう。あくまで自分でやらないといけないってことを強調してね。めんどくさがればやらないだろうし、お金が儲かるならやる人も出てくるだろうね。まあ、どちらにせよ、メルマガ買ってる人が情報を他に流したらそれ以降は買えないと言っとけばいいよ。少しは抑止力になるだろうしね。うちのかあさん達だって俺から買い目をメールで受け取って自分でポチポチしてるからね。できないことじゃないと思う。」

「まあ自分が一人で暮らすぐらいには儲けてるってぐらいに言っておけばいいよね。」

「うんうん。実際には自分の娘の口座に50億とか入ってるの見たら卒倒するだろうからね。」

 俺は笑い話のつもりで言ったのにみんなは真剣な顔をしてた。

「玉田君。それ笑えないからね。」

「まあ、そのうち家でも建ててやって『これで株で儲けたお金全部使ったわ』とか言っておけばいいんじゃない?」


 まあ、そのうち皆に何百億って口座持たしてあげるからね。

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