-01.共犯者増える

 俺はまずいつものバーガーショップに寄って、持ち帰り用でそれぞれの好みを聞いてハンバーガーと飲み物を購入した。

 俺がすべて会計し、みんなにそれを持たせて、マンションに向かった。

 俺がカギで入り口のドアを開けるとみんなが唖然としていた。


「どうぞ。」

 とみんなをマンションの1階エントランスに招いた。


 実はここにはクラスメイトで残っていた5人もいるのだ。

 彼女たちはみんなかなり頭が良くて、中学の頃はそれぞれの学校で主席を取っていたような子ばかりだそうだ。

 翼ももちろん頭がいいらしい。

 俺はその8人を連れて、最上階にある俺の部屋まで案内した。

「どうぞ、入って。」

 と招き入れた。

 それぞれに出した客用のスリッパをパタパタ鳴らしながら、みんなはリビングに進んだ。

 リビングに入ると自然に

「うわー。」

 とみんなが歓声を上げた。

 この部屋は最上階にあるため、景色がすごくきれいなのだ。


「え?ここって誰の家?」

 と、しおりが聞いてきた。

「ん?俺の家。というか先日この部屋買ったんだ。」

「いくらしたんだよ?」

 と、義男。

「5,500万円」

 みんなは息をのんだ。

 確かに高校一年生で買えるものじゃない。


 実は駅前でみんなの前で一つ仕込みをしていた。

「さっき駅前で、スクラッチを俺が買ったよね。それがこの6束ね。しおりと義男はすでに体験済みだから今日は無しね。」

 俺がそう言うと、俺が何をしようとしているかを察したようだ。

「今回のこのスクラッチは1等が500万円らしい。」

 俺はテーブルの上にその6束を置いておいた。

「例えばの話ね。例えばここにある6束すべてに1等が入っている確率はどれぐらいになるだろう?」

「うん。まず不可能だね。天文学的数字過ぎて計算する気にもなれないよ。」


「じゃあ、それぞれに1等から5等まですべての当たりくじが入っている確率は?」

「それこそあり得ないわね。魔法使いでも無理じゃない?」

 と、三好紗理奈が言った。


「うん。一応この話はここで置いとこうね。さて、俺の秘密の話だったな。ばかげていると思っても決して途中で止めないでね。俺は嘘をつかないから、ちゃんと聞いてほしい。それともう一度念押しだけどここで聞いた話は絶対に他で話さないでくれ。」


「あなたが私たちに秘密を話すメリットはどこにあるの?」

 と、井之口美穂が言った。


「俺にもメリットはあるよ。俺は優秀な人材が欲しいんだ。今すぐにでも起業してやっていけるほどの。それがもし同じ高校にいたらこれは大きなメリットだと思う。秘密を聞いたうえで協力してほしいんだ。俺がやりたいことを。まだ全然漠然としてるんだけどね。」


「いうことは、これは一種のスカウトということね。」

 と沢田千秋は言った。


「そうとってもらって構わないよ。そうだ、さっき買ったハンバーガーは口止め料だからちゃんと食べてね。」

 俺がそう言うと少し緊張がほぐれたのか、それぞれがハンバーガーを出して食べだした。

 俺も一口食べてコーラを飲んだ。


「食べながらでいいんで聞いててね。高校の入学式の朝。正確には午前0時に一通のメールが俺のスマホに届いたんだ。何かの勧誘かいたずらメールかなと思ってタイトルを見たら『週刊スキルメール』と書いてあったんだ。俺がこのメールに気づいたのは登校している最中で、しおりに歩きスマホは危ないと注意されて、まだメールは開けずにいたんだ。そしてクラス分け発表が下足室であって、俺たち中学からの仲良し3人組はバラバラのクラスになった。俺はあとで少し後悔したんだ。しおりに止められてもあの時メールを見ておくべきだったかもってね。まあ、その話は少し置いておくね。で、入学式の前、教室にみんなが集まって席を確認した後にメールのことを思い出して、俺はメールを見たんだ。そしたらこんなことが書いてあったんだ。


『週刊スキルメール、これから一年間、毎週スキルをお届けします。』


 で、その初めの週のスキルは『豪運』というスキルだった。俺はそれを読んで何かのいたずらかなと、あまり気にもせず入学式に出たんだ。その間際に翼が俺に声をかけてくれたんだったな。で、無事入学式が終わり、帰り道で義男と別れ、しおりと別れ、大通りに出たんだ。それで信号で少し止まってたんだけど、向かいのスーパーマーケットの横にある宝くじ売り場に気づいたんだ。」

 俺は少しコーラを飲んだ。


「で、豪運ってやつが本当に俺にあるのかどうかスクラッチを買ってみたんだ。10枚ワンセットで1等が300万円。俺はそこのイートスペースにあったテーブルに陣取って、その場でコインで削っていったんだ。すると…。」

 俺は翼を見た。

「ひょっとしてさっき言ってたことって…。」

「その通り。1等から5等までがたった10枚の中に入ってたんだ。売り場のおばちゃんに聞くとそこの売り場では5万円までしか換金できないって言われたんで3等以下の11,200円を換金して、家に帰ったんだ。そして、手元には310万円分の当たりくじが残った。」

 俺はハンバーガーを少しかじってコーラを飲んだ。


「俺は豪運というスキルのことが気になっていたけど、こんな話誰かにしたって信じてもらえるわけがない。で、スキルメールのことは伏せて、母さんと妹に100万円ずつ分けるから、換金に付き合ってと頼んだんだ。で、その日のうちに無事換金。俺はその口座からネット決済で宝くじが買えることをその銀行に貼ってあったポスターで知ったんだ。で、家に帰ってまだ時間があったからナンバーズ4とナンバーズ3とビンゴ5でその日の抽選分を買ったんだ。結果すべて1等が当たって、俺の口座残高は1千万円を超えたんだ。」

 俺はみんなを見回して、残りのハンバーガーを食べてから切り出した。


「俺の仲間になって手伝ってくれるなら、さっきのスクラッチを10枚2,000円で譲ってあげるよ。もちろん当てればその金額はその人のもの。今の俺の話を信じて仲間になってくれるならどうぞ俺から買ってください。」

 そういうと全員その場で財布を出して2,000円支払い、俺からスクラッチを購入した。

「ありがとう。もうそれは君たちのものだからどうぞ削って見て体験してみて。」

 それから6人は一心不乱に10枚を削っていき、最後に息をのんでいた。

「6人全員が1等から5等まで当たってる…。」

 と明智都はつぶやいた。

「当選金額合計が5,311,200円。ハハハ…。すごすぎてなんだかよくわからないよ。」

 と徳田あかりも続けてつぶやいた。

「ちなみにしおりと義男には実験に付き合ってもらって既に2,000万円程になってるけどね。」

「実験って?」

 と翼が聞いてきた。

「俺が選んだ番号が当たるのか、だれが選んでも俺が買えば当たるのか、俺が選んだ数字で俺の金だけど買いに行くのは他人とかね。」

「それで実験結果は?」

 と、三好紗理奈が聞いてきた。


「何らかの形で俺がかかわれば100%当たることが分かった。唯一外れたのはナンバーズで違う数字を同時に買った時、両方が外れた。」

「なるほどね。なんとなくそれはわかる気がするね。矛盾が起こっちゃうんだろうね。」

 と井之口美穂が言った。

「4月1日から毎週ってことは既にいくつものスキルを持ってるってこと?」

 と沢田千秋。

「おっしゃる通り、俺はいくつかのスキル、昨日時点で6個のスキルを持っている。これはしおりたちも知らないことだ。そして今日みんなに見せたスキルは『ラーニング』というスキルで俺が学習した教科書の内容なんだ。」

「ラーニングって早く学習できるってこと?」

 と明智都。

「うん、そうだね。ほかにも持っているスキルで『アイテムボックス』ていうのがあるんだ。異世界物やアニメなんかでは定番になってるスキルだね。スキルって、才能や能力っていう意味だと思ってるんだ。そのアイテムボックスにこうやって教科書を収納してるんだけど」

 とアイテムボックスから教科書を取り出して見せた。

「昨日のラーニングのスキルを授かってからアイテムボックスの選択肢に学習ってのが増えたんだ。それを実行すると教科書だとどの教科も30秒ほどで学習できた。」

「それはずるいはね。卑怯よ。私たちが地道に勉強しなきゃいけないのを…。」

 俺はそう言いだした明智都の前に手を挙げて遮った。

「だから今日、そのラーニングの成果をおすそ分けしたろ?ラーニングの実践するという機能を使ってみんなに教えたんだ。まだ明確にさっき黒板で書いたことが頭に残ってると思うけど、どう?」

「……確かに残ってるわ。じゃあ、最近よく本屋に行ってたのは?」

 としおり。

「あれはその前に授かった身体強化と感覚強化というスキルで記憶力が向上したんで面白くなってどんどん覚えてたんだよ。」

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