06.ラーニング【5/6】
おはよう。水曜日の朝だ。
先週も濃い毎日だった。
今週もまだゴールデンウィークで休みだ。
俺は顔を洗い、ご飯を食べにキッチンに向かった。
「ねえねえ、お兄ちゃん。今日は水曜日よ。今週はどんなのが来た?」
と、美香が聞いてきた。
「俺もまだ見てないんだ。」
と言って自分の部屋にスマホを取りに行った。
1階に降りてきてメールを見ると今週は【ラーニング】というスキルだそうだ。
『読んで学び、見て学び、実践して学ぶ。』
う~ん、なんだこりゃ?
美香にメールを見せてやると、美香は興奮していった。
「ねえねえ、これってひょっとして教科書でも読むだけで理解するってことなのかな?それだとすごいよね。」
うん。それだと確かにすごい。しかし俺ってすでにそうなってる気もするんだよな。
「そうだな。まだ何も検証してないからはっきり言えないけどね。今日から試してみるよ。」
俺はそう言って朝食をいただいた。
うん。今朝もおいしい。
俺は先日から、ほとんど部活帰りに毎日、駅前の本屋によることにしている。次から次に覚えておきたいものや学んでみたいものが出てきて、その都度買い足している。
ゴールデンウィーク中の休みで、2~3年生の教科書は全部覚えた。
けど今日授かったラーニングだとどうなるんだろ?
俺は頭の中にアイテムボックスを思い浮かべて教科書を取り出そうとした。
すると、いつも見える収納、解体、修理、復元、改造の横にもう一つ『学習』という項目が現れていた。
…これって、ひょっとして…。
俺は教科書を指定して、学習を選択した。
すると知識として頭の中に流れ込んでくる。
俺は30秒ほど、呆けたような状態になったが、高校1年生の数学Ⅰは完ぺきに頭に入ってることがわかる。
これは面白い。
俺は次いでだと思って、中学生のころからの教科書をすべて『学習』していった。
約30分ほどで中学、高校の学習を終えることができた。
身体強化での勉強は記憶力の強化みたいだったが、ラーニングでは理解力の強化と言えばいいのか。すべて理解できている。
数学でも解答を求めるとき、他の計算式で解答できないかということを無意識レベルで考えていて、思考しているというか。
これはすごい能力だ。
俺は最近購入した本を片っ端から『学習』していった。夜中までかかって、最近購入したあらゆる専門書を学習した。
これって今大学受験受けても通るんじゃね?
次は大学受験の赤本を買ってきて試してみよう。
次の日、俺は本屋で赤本を20校分ほど買ってきた。
これはその晩のうちに学習し終えた。
ここまでくるとどんなことができるのか挑戦してみたくなった。
最新の百科事典も購入してみた。2日で学習できた。
実際、すでに学校の授業は退屈になってきていたので、授業中の時間つぶしに最適だ。
会話なんかも英語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、中国語、韓国語、フランス語など本屋に売っていた外国語会話学習本はすべて購入し読破した。
これっていよいよやばくないか。
俺は来週から始まる中間テストのために義男たちと勉強会をすることになった。
いつも3人の中では俺が一番成績が悪かったのだ。
俺はすでに放課後のクラブ活動はテスト期間中だということで休止しているので、教室に残って俺のクラスで、勉強会をすることになった。翼も一緒に勉強するそうだ。クラスの女子も5人ほどが一緒に残っていた。
そこで徐に俺は
「しおり、義男。実は俺、もう高校の勉強をすべて終えてるんだ。頭の中に全部入っている。」
二人+周りで聞いていた翼たちがかわいそうな奴を見る目で俺を見ていた。
「うんうん。わかったからお勉強しましょうね。」
としおりは俺の頭をなでながら励ましてくれている。
…いや、違うんだ。
「いやいや。違うって、お前らかわいそうな奴を見る目で俺を見るな。」
俺はおもむろに黒板に向かって俺が教科書から拾った試験に出そうな個所を次々と書き出していった。
身体強化もあってか、あっという間に黒板を埋め尽くす今回の数学Ⅰのヤマが出来上がった。
「これだけ覚えてれば90点は確実に取れるぞ。」
「いや、多いし。そんなに覚えられるわけねえじゃん。」
義男はすでにギブアップ宣言のようだ。
「いいからこれをスマホに撮っとけ。」
俺は無理やり義男のスマホで黒板を写した。
俺は撮影を終えた後
「次は数学Aな。」
と、これまた同じスピードで黒板を埋め尽くした。
呆気に取られながらも、他のしおりたちもスマホで撮影しだした。
「いい?次は英語。」
これもまた同様。
次から次に科目別のヤマを書き出していく。
手には何も持ってない。もちろんだ。
国語総合、地理A、現代社会と次々に進んでいく。全部で7教科。
やがて下校時間の合図のチャイムが鳴った。
俺はパンパンとチョークの粉を払って
「今書いたところ絶対出るから騙されたと思って勉強しとけよ。もちろん試験範囲内だから覚えておいて損はないしね。」
そう言って席に戻った。
みんなが俺を見ている。
「お…お前。さっき言ってた教科書が全部頭の中に入ってるってあれ本気?」
「ああ。本当のことだ。すでに受験のための赤本も20校分過去5年分終えている。」
「嘘…。」
「本当だって。」
「なんでそんなことできるの?」
「う~ん。ちょっとコツがあってね。さっき俺が教えたことになるから、多分あの内容はもう君らの頭の中に入ってると思うよ。」
みんな半信半疑だったようだが、思い返してみると確かに理解しているようだ。
各々がスマホに撮った写真と自分の記憶を照らし合わせてる。
「ウソ~~~。ほんとに頭に入ってる。」
「だから言っただろ。俺教えることもできるみたいなんだ。」
これはラーニングの『実践して学ぶ』というところの応用だな。
俺が実践すると学ばせることもできるみたいだ。
俺が今日いきなりこんな感じで板書しだしたのはこの実験のためだ。
みんなが呆けたままのところに担任の先生が見回りに来た。
「おい、お前たち。とっくに下校時間のチャイムはなってるぞ。さっさと帰らんか。」
と言って追い出された。
校門前でしおりはなんで?どうして?と言って俺の服の袖をつかんで離さない。
弱ったな。
「そういえばのり。親父が言ってたぞ。お前のリフォームの腕はプロ級だって。いつの間にそんな修行してたんだよ。」
「最近急に体が大きくなって身体能力が上がってたわよね。今日のことと関係あるの?」
「そういえばこの前サッカー部でボール蹴り割ってたよね。」
これは翼だ。
う~~ん。ちょっとやりすぎたかな。
「わかったよ。お前らに俺の秘密を話すからちょっと付き合ってくれるか?ただし、他言無用だぞ。」
俺はみんなを連れて、呉竹駅に向かった。
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