-01.成長期だから
俺は翌日から制服も身体に合ったものが手に入り、サッカー部の方でも身体に合ったジャージで参加した。
しかし、まだ俺はみんなから注目を浴びていた。なんでだ?
「「そりゃそうだろ!」」
と義男と翼から突っ込まれた。
「お前、なんでか知らねーけど昨日よりまた身体が大きくなってないか?」
義男がそう言い、翼はコクコクとうなづいている。
「え~っと、…成長期だから?」
「「そんなわけねーよ。」」
「で、なんでお前が疑問形なんだよ。」
ダブル突っ込みの上にかぶせ突っ込みまでいただきました。
いや、俺もそうは感じてるけどね。
こうなっちゃったんだもん仕方ねーだろ。
しかし、身体が思う通りに動くって気持ちいいんだな。
走り込みして、ダッシュして、筋トレしてを4セット。
みんなは今日もへとへとだけど、俺は結構余裕があるな。
「さすがに、お前なんかあっただろ?」
「そうよ、なんでそんな急に体が大きくなるのよ!」
「いや、成長期だから。」
帰りしなに俺はしおりと義男から突っ込まれていた。
あくまで成長期だと突っぱねた。
そんな感じで週末まで、身体を動かすのが楽しくて、いろいろと鍛えてみた。
土曜日、久しぶりに裏の荒れ地の起伏を利用したモトクロスのコースで50㏄のバイクで走ってみた。
うん。気持ちいい。
このアクセルを回す感覚に全身がついて行ってる感じがすごくいい。
今までは、50㏄で走ってみても、身体が追い付いてないっていうか、バイクの力を持て余してた感じがあったんだな。今ならよくわかる。
よし、これなら大丈夫だろう。
俺は先日新品に戻した200㏄のモトクロッサーを引っ張り出して、エンジンをかけた。
さすがに初めの3週ぐらいはバイクのパワーに振り回されて、思うようにバイクが扱えない。ちょっとアクセルを吹かすだけで、50㏄では考えられない加速が生み出される。その加速を持て余しているうちに次のカーブが来る。これはきつい。
初めはゆっくりとアクセルを回すように心がけた。
だんだんとバイクの挙動がわかってきた。もう少しアクセルを回してみる。
とっさの対応がうまくいった。が、もう次のカーブだ。
俺はひたすらにバイクの挙動と自分の感覚を合わせるのに一生懸命になった。
身体強化の身体がないととてもじゃないけど乗れなかったな。
俺は何度も何度もガス欠になるまで走った。
お昼になって、美香がご飯だよと迎えに来てくれた。
「もう、お兄ちゃん。ずっとバイクの音がうるさかったんだよ。もう少し音を小さくできないの?」
「う~ん。モトクロッサーだからな。サイレンサーを何とかしないといけないだろうな。
…ん?そうだ。」
俺はモトクロッサーをアイテムボックスに収納して、改造の項目を選んだ。
頭の中でどこを改造するか選択できるので、マフラー部分を選んで、「静音」を意識して改造してみた。改造が終わって、バイクを出してエンジンをかけてみた。
さっきまでバリバリとやかましかった排気音がトルルルルと、かなり静音性が上がった。初めからこうしておけばよかった。
俺は日曜日一杯まで、静穏性が上がったバイクを使って、身体とバイクの動きが一体になるように、調整していた。
途中から美香も50㏄のモトクロッサーで、コースに参加してきた。
俺は美香のバイクをパッシングするときも、大周りにスムーズにコース取りできるようになっていた。
「お兄ちゃん、ずるいよ。すごくうまくなってる。それって身体強化のおかげ?」
「ああ、そうみたいだな。残念ながら、元の俺だとこの200㏄のバイクだと振り回されるのが落ちだっただろう。」
「今や手足のように動かせてるね。」
「まあ、丸二日練習したしな。バイクのパワーと身体の力で言うと、まだ体の力を押さえてるってところが本当のとこだな。バランスが崩れると無理な体制でハンドルをこじったりしちゃう感覚がまだあるから、もっと練習しないとこれ乗りこなせそうにないよ。」
俺は身体から出る力に振り回され、バイクに振り回されしながらようやく乗れてたってことを実感していた。
美香の50㏄のバイクも静音性を増す改造を施しておいた。
月曜日、ようやく体が大きくなるのは収まりつつあるようだ。
しかし、身長で10㎝ぐらい伸びたかな?
さすがにこれだけ伸びると少し歩く感覚もおかしいな。
これはどんどん体動かして、早くなれないとなんでもないところでつまずいたり、とっさにつかまったものを握りつぶしたりしそうで怖いな。
俺は今朝もしおりと義男と一緒に登校している。
うん。もうあきらめた。開き直った。
「ノリ君身長伸びてるよね。」
「うん。先週から10㎝ほど伸びた。」
「え?うそ。今どれぐらいあるんだよ。」
「多分、180㎝ぐらいかな。」
「いいな~お前。」
「急に体が成長したから、感覚を合わせるのが大変なんだよ。」
「でものり君、筋肉もすごくついてるみたいだね。」
「そうなんだよな。あのサッカー部の筋トレが効いてるんだろうな。」
「いやいや、それだけじゃないだろう?」
「ん?確かに昨日とおとといはモトクロスの練習で丸二日バイクに乗って練習してたけどね。」
「え?あのバイク治ったの?」
「うん。何とかね。でも今まで50㏄で急に200㏄となるとパワーが4倍では効かないからね。振り回されちゃって大変だったよ。」
俺たちはそんな話をしながら、学校にたどりついた。
「玉田君だっけ?俺、同じクラスの北条。君身長伸びたね。うちバスケ部なんだけど、一度バスケットやって見ない?」
「俺サッカー部なんだ。」
「それでも一度試してみなよ。昼休みでもいいよ。体育館でいつも昼休みも練習してるからね。一度覗いてみてよ。」
「ああ。ありがとう。バスケも興味はあるんだ。一度覗かせてもらうな。」
「そう来なくっちゃ。」
北条は俺の肩を叩きながら、自分の席に着いた。
バスケね。確かに中学の頃は遊びでよくやってたけど、今の身体の感覚でうまくできるのかな?
俺は休み時間の度に動画サイトでバスケット選手の動きを見ていた。
かなり、素早いモーションからのシュート。
躍動感あふれる跳躍からのダンクシュート。
うん。今の俺ならこれ出来るかもね。
ドリブルの仕方やパスの出し方。シュートの基本やフェイントなど動画サイトには様々な動画があふれていた。
昼休み、北条が誘ってくれたので、俺は体育館に行くことにした。
しおりと義男と三人でお弁当を済ませてから、一緒に体育館に向かった。
そこには何人かすでにバスケットを楽しんでいた。
俺は北条に来たことを伝え、ボールを一つ借りて、基本的なドリブルやパス、シュートなんかを動画の手本を思い出しながら黙々とやっていた。
昼休みが残り10分ってところで3オン3で試合してみることになった。
「俺素人だけどよろしくね。」
「いや、さっきシュートやドリブル見てたけど、結構うまいよ。こちらこそよろしく。」
と、握手して試合が始まった。
ルールはわかっている。3歩以上歩いちゃだめだ。
俺はパスされたボールをドリブルして、ディフェンダーを交わして、シュートした。
北条がポカーンと呆けて、俺のこと見ていた。
「お前、素人って嘘だろ?今の俺でもできないぞ。」
「そんなことないだろ?休み時間に動画サイトで見て覚えたからやってみただけなんだし。」
「いやいやいや。そこまでやれたら十分だよ。バスケ部に来てくれたら歓迎するよ。」
俺はそんな勧誘を受けながら、昼休みを終えた。
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