04.身体強化【4/22】

 さて、又水曜日の朝が来た。

 もう先週も今週も部活でずっと走り回っているせいで大分体力がついてきたし、腕なんかにも筋肉がついてきた。

 今週になってから走り込みの後に、筋トレが始まったからだ。

 そんな俺にぴったりのスキルが今度は授かれた。


【身体強化】というスキルのようだ。


『身体能力を強化する。記憶力が上昇する。』

 おぉ。これは今俺が欲しいものだ。


 俺はいつものように聞いてくる母さんと美香に説明した。

 けどもう慣れたのか「へ~」という程度になった。


 このスキルはかなり重宝するんだぞ。

 俺はここに書かれている『記憶力が上昇する』という項目にも結構期待している。

 GWが明けると中間試験がすぐだからだ。

 あ、そうそう。忘れないうちに母さんと話しておくことがあったんだ。


「母さん。蔵の電気配線なんかのことなんだけど。」

「ああ、配線全部取っちゃったのよね。大丈夫なの?」

「うん。分電盤から引き込んでる配線だけを取ったから問題ないんだけど、あの修理って素人じゃ無理だよね。」

「そうね、電気工事って確か免許がいるわよ?」

「それで、義男ん所の工務店に頼もうかなと思ってるんだ。」

「ああ、そうね。いいんじゃない?」

「それで俺、昼間学校だから母さんが対応してくれない?何をどうするかは全部俺から依頼しておくから。」

「わかったわ。それならあの呉服屋さんからいただいたお金を使えばいいわね。」

「うん。そうしてほしいんだ。それと山田さんちの電気とガスと水道も一緒に頼むつもりでいるから、対応よろしくね。」

「わかったわ。まあ、先日振り込まれたお金以内なら出しておくから。」

 あれから2度は修復してるから3000万円ほどになっているのか。

「うん。十分足りると思う。」

 これで改装も進めてもらえるだろう。


 俺は身体強化の検証を進めるため、学校にいる間中、できるだけ英単語の記憶に挑戦してみた。

 10分の休み時間の間に50ほどの英単語が記憶できた。これはすごい。

 調子に乗って各休み時間は英単語ばかり集中して覚えた。

 今日だけで300ほどの英単語を覚えたことになる。

 大学受験用の豆単を持っていたのでそれをはじめから読んでいったのだ。

 この勢いで行くとこの単語帳にある3,800程の単語は2週間ほどで覚えられることになる。それも休み時間だけで。

 本当にそんなことできるかどうかは置いておいて、俺はひたすら英単語を覚えた。

 昼休みだけは、株取引をしている。お金も大事だからね。


 放課後の部活でも身体強化は威力を発揮してくれた。

 みんなに合わせたランニングは余裕でこなせるようになった。

 筋トレも余裕だ。これは少し加減をしないと怪しまれる域だな。

 部活をしている時に事件が起こった。

 筋トレしている俺の方にボールが転がってきたので、蹴り返そうとした。

 ずっと筋トレと走ってばかりだったからサッカー部ってことを忘れそうだ。

 俺はそんなストレスを込めて蹴った。蹴ってしまった。

 すると足がボールに当たった瞬間ものすごく大きなパンっという音と共に蹴ったボールが破裂してしまった。

 それを見たグラウンドの運動部員すべてが止まった。

 やばい、やっちまった。

 俺は

「うわー、ボールが古かったんですかね?まさかはじけるとは思いませんでしたよ。」

 というと

「「「「「そんなことあるか!」」」」」

 と同じサッカー部員から突っ込みを受けた。


 なんとかかんとかごまかして、俺は部長のところに行って、サッカーボールを弁償させてくれと頼んだが、使えなくなるボールは毎年一定数出るので、部費で確保すると、弁償を断った。


 やべー。


 これはボールを使った練習をするまでに加減を覚えないと間違いなくサッカー部を首になる。

 だって蹴るたびにボールが裂けるってどうよ。


 俺は部活帰りに、今まで着ていたジャージが少し小さくなっていたこともあり、駅前のスポーツ用品店に行くことにした。義男としおりも一緒だ。翼もついてきた。

 俺は替えのジャージを3セットとスパイクを2セット、それにサッカーボールを3個と空気入れを買った。

 大荷物を抱える俺を怪訝そうに見るしおりと義男。


「お前…。又なんかあった?」

「い…いや。別にちょっと最近筋肉が付き始めたからかな。身体の加減ができなくて。」とごまかした。


 いやいやいや。多分ごまかせてないだろうな。


 俺は家に帰ってから早速ボールに空気を入れて軽いリフティングから始めることにした。サッカー部に所属しながらサッカーボールに触れたのは中学の授業以来だった。

 俺は足を使ったリフティングから頭や肩を使ったものまで身体が面白いように動くので、次々に試していった。そういえばと以前見た動画サイトで有名なプレイヤーのボールさばきを見て真似てみると結構すんなりできるようになった。


 こうなってくると止まらない。


 俺は次々にプロ選手の動画を見てボールタッチを学んでいった。

 妹が呼びに来るまで熱中していた。

 俺はざっとシャワーだけ浴びて、ご飯を頂いた。

 うん、今日もおいしい。

 おいしすぎて5杯もお替りした。

 いや、食べすぎだって。

 しかし、今日はやたら腹が減る。

 身体強化のスキルの影響もあるんだと思う。身体能力が上がったんでその分腹が減るんだろう。

 俺はご飯を食べた後も納屋の方に行ってさっきの続きをやった。

 また汗をかいたので、今度は湯船にお湯をためて風呂に浸かった。

 風呂から出て鏡を見ると、別人のようなマッチョな体になっていた。

 こりゃ、ジャージをもう一度買いなおしかな?

 少なくとも制服は無理そうだな。

 当分ジャージで登校できるように先生に申告しておこう。

 俺が風呂から上がってくると母さんがびっくりしてた。

 だから今朝、新しいスキルで身体強化ってのを授かったって説明したのに。

 俺は風呂上がりでパンツ一丁だったので、足の筋肉も見られた。

 うん、我ながらすごいな。これってパンツも相当きついな。


 翌朝、俺はやはり制服のサイズが合わず、しかたなくTシャツにジャージで登校した。


 みんなが俺を振り返る。

 そんなに異常かな?

 しおりなんか朝から口をきいてくれず、俺のこと目が点になりながら見ている。

 義男も同じだ。

 あ、義男には頼まなきゃいけないことがあったんだ。

 俺は目が点な義男に俺が書いてきた見取り図とやってほしい配線なんかを書いた紙を義男に渡して、米田工務店に発注した。

 いや、本来俺がうかがってお願いするべきなんだろうけどね。

「最近うちの親父も暇だって言ってたから、やってくれるんじゃない?」

 ようやく目が点から復帰してくれたようだ。

「配線や配管は全部取っちゃってるんだ。だからそこに関してはまた穴をあけたりしなきゃいけないと思うけど、それもうまく頼んでおいてよ。」

「う~ん。どういう状況かはわからんが話は分かった。親父に言っておくよ。」

 お金や確認は母さんが家にいるのでやってもらってくれと頼んだ。


 それはともかく…

 この注目度はさすがにやばいな。


 俺は昼休みのうちにサッカー部の顧問の先生に休みをもらって、制服や身体に合ったジャージを買いに放課後駅前まで行った。

 これ以上は大きくならないだろう。だよな?

 余裕を見て今の身体より一回り大きい制服を作ってもらおう。

 俺はだぼだぼにならない程度で少しゆったり目で制服を作ってもらった。

 さすがに季節外れなので今日中に作ってくれるらしく、俺は作ってくれている間に昨日行ったスポーツ用品店に行って、さらに大きなジャージの上下3組とTシャツを10枚ほど買い込んだ。

 俺がスポーツ用品店から戻ると制服が出来上がっていた。

 お金を払って受け取り、家に帰った。

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