-01.屋敷は難しそうだ

 俺はそれから放課後部活でへとへとに疲れながらも、山田さんから買い取った家の中や納屋や蔵などの収蔵物を次々に新品に修復していった。


 山田さんちって、できた頃はすごく立派だったんだろうな。

 俺は自分の家ではできなかったが、ここでは最悪取り壊してもいいだろうということで、いろいろと検証してみた。畳など取り外せるものはすべて新品にすることができた。


 しかし、一体になっている柱や壁や梁などはその一体ごとならいけそうだけど部分的には無理だった。

 ということは結線や配管を外した状態だとうまくいくということだろう。

 一度、電気関係は全部やりなおした方がいいみたいなんだよな。

 かなり古い配線で給電している様で、見た目も銅線むき出しのところなんかもあって、ちょっと怖い。

 水道などの配管も同様だ。

 下水道も同様になっている。

 これは建て直した方が早いかも。


 いや…待てよ…。


 俺は止水栓が閉じているのを確認して水道管だけを収納してみた。

 やはりうまくいくようだ。ということは…。

 電気の配線も屋根裏に入り込んで配線だけを収納した。

 あとはガスか。

 ガスも外の元栓が閉まってるのを確認して、家の中の配管をすべて収納した。

 おお。やればできるじゃないの。

 あとつながってるのは下水道ぐらいだろう。

 これは外れても何か不具合がすぐに発生するわけじゃない。

 それじゃ行きますか。

 俺は山田さんちを丸ごと収納して、修復、復元。そして元の位置に寸分狂わず再設置することに成功した。うん、やったね。

 修復した山田さんちは新築同然の立派な姿を取り戻していた。

 山田さんちってこのあたりの地主さんだったからな。

 あとは電気配線と、水道管、ガス管の敷設をしてもらえば何とかなりそうだな。

 義男の家が工務店やってるから頼んでみるか。


 お次は蔵か。

 蔵自体は照明用の電気配線だけが引き込まれていたので、それをまず収納してから、全体を収納、修復、再設置っと。

 蔵の中身もすべて新品にした。

 するとかなりきれいな着物などもたくさん出てきた。

 甲冑や日本刀などもあり、これらも新品に生まれ変わっていた。

 山田さんちには3つの蔵があり、うちにも2つ蔵があった。

 山田さんの息子さん曰く、がらくたばかりだから中身は処分してくださいって言ってたけど、新品にして鑑定掛けたら10億ぐらいの資産になったよ。


 でもこれって売りに出せないだろうな。


 古いものの価値って新しくしちゃうと違う価値になっちゃうもんね。

 この蔵の中身はせっかく修復したけどアイテムボックスにしまっておこう。

 また日の目を見るときもあるだろう。


 うちの蔵の中身も全部収納して、蔵自体も復元したので、一つは蔵書庫、一つはスタジオにすることにした。

 どちらもまだ少し改装が必要なのでこれも義男んちに頼むしかないな。


 俺は蔵から出てきた着物を母さんに見せて、どれでも好きなのをもっていっていいからねと言っておいた。

 山田さんの蔵にはかんざしや櫛なども大量にあった。

 こういうのって確かに捨てられないよね。

 母さんはそれを見て

「紀夫。どっからこんなきれいな着物を持ってきたのよ。」

「山田さんちの蔵を全部きれいにしたら、中から出てきたんだ。」

「あんたって緑のタヌキより便利ね…。」

 かあさん。それを言うなら青い耳なし猫だよ。緑のタヌキはうどんだろ?


 預けて数日後、大騒動が起こっていた。

 母さんがそれらの着物の価値を知るために、駅前にある呉服屋に車で持ち込んだのだ。中には貴重なものもあるかもしれないし、保存方法もわからないので教えてもらうために持ち込んだのだ。


 するとその呉服屋さんが腰を抜かした。

 なんでもすでに歴史の中で遺失してしまった柄や織物が大量にあったからだ。


 それも新品同様で。


 帯や小物類も保存状態が良くて素晴らしいと絶賛されたそうだ。

 どうやってこれらを保存してたのかと問い詰められて困った母さんが我が家秘伝の洗浄方法があって、それで洗うときれいに汚れが落ちるといってしまったものだから。


 我が家には大量の着物が運ばれてきた。


 まあ、仕方ないかと俺も安請け合いして汚れを落とすだけでいいのに修復してしまったからさあ大変。

 自分の失敗に気づいたのは、ひとつづつ呉服屋さんが検品している時にほつれなどもしっかり修復されているのを見つけた時だった。


 詳しくは言えないが汚れを落としたり、修復するための秘伝があると一点張りで逃げて帰ってきた。

 翌日母さんのところに、それらの修復と洗浄代だといって、1,000万円ほどのお金が振り込まれてきたそうだ。

 着物のくすんだ黄ばみなどが全部落ちているために着物の価値が数倍から数十倍になったそうだ。

 それからも呉服屋さんは秘伝は詳しく聞きませんので何卒修復してくださいと、頼んできた。

 仕方ないので絶対にうちがそれをやっているとは知られないようにという約束の下で、月に一度トラックでそれらがうちの蔵に運ばれてきて、俺はそれを修復している。

 うちの蔵も修復してきれいにしてる。あ、電気だけ早く頼まないとね。


 そのたびに母さんには1,000万円ほど振り込まれているらしいけど、俺は知らない。

 老後のために置いておいたらと母さんにもらってもらっている。


 さて、俺の方ではいろんな車やバイクを買いあさっている。

 いろんなバイク屋をめぐっては中古車や事故車、故障車などを安く買っている。


 この時鑑定がうまく作用した。


 その壊れたバイクの価格や価値を言い当てて、修理するのにどこを直さなきゃいけないかなど、事細かくわかるんだ。

 それを話ししていくと最後には捨て値のような価格で、山積みになっていたジャンク品も一緒に売ってくれた。格安で。

 俺は晩のうちに取りに来ますとお金を渡し、領収書をもらって、そのお店が終了した後に回収しに行った。

 そうして俺は様々なビンテージバイクを手に入れることができた。


 そのうちほかの土地のバイク屋にも遠征していろいろと集めてみよう。


 平日の休み時間と土日は相変わらずFXの売買に費やし、資産を増やしている。


 俺はそろそろ本腰を入れて、会社設立のことを考え出した。

 何やっても受け皿がないといろいろと税金なんかで持っていかれると思う。

 俺はちょうどいいかと、リサイクル業をメインに起業することにした。

 着物のリフォームなんかもここを受け皿にしてやり取りすればいいと考えたんだ。

 何人か信用のおける人をそろえないとな。

 俺はそう考えていたがあてがあるわけでもなく、高校生で起業する難しさや、もどかしさを感じていた。


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