03.アイテムボックス【4/15】

 あっという間にまた1週間が過ぎ、又水曜日の朝がやってきた。

 今週もメールが来ていた。

 さて、どんなスキルを授かるのか。


 今週授かったスキルは【アイテムボックス】というらしい。

 これもファンタジーでは定番中の定番だな。


 しかし、このスキルっていったい誰が俺に授けてくれてるんだろうか。

 謎は深まるけど、解き明かしようがないから無視している。


『無限収納空間に物を出し入れすることができる。中の時間は止まっている。中にあるものは解体、修理、復元、改造ができる。改造するためや欠損を復元するためにはその構成原料が必要になる。』


 これって、とんでもないスキルじゃない?

 物がしまえるのはまだいい。

 問題はその次だ。

『中の時間は止まっている。』

 つまり、いくらでも食べ物を入れていてもいつまでも腐らないってことになる。

 その次もすごい。

『中にあるものは解体、修理、復元、改造ができる。』

 これって骨とう品や絵画も材料さえあれば修復できるってことか。

 まあ、欠損なんかは全く同じ素材を見つけるのに苦労しそうだが、割れるとか破ける程度ならすぐに治りそうだな。

 これって中古バイクなんかも新品になったりして…。


 俺はいてもたってもいられなくなり、すぐに納屋に向かった。

 対象は俺が修理しているオフロードマシン。

 アイテムボックスに収納と念じると目の前のバイクが消えた。

 頭の中にリストが浮かぶ。これは便利だ。

 それじゃ、次だ。

 このバイクを修理して復元することを考えると、足りない部品なんかが頭に浮かんだ。

 俺は父さんが用意してくれていた部品を全部アイテムボックスに収納した。

 そうすると修理、復元完了と頭に浮かんだ。

 俺はアイテムボックスから取り出すと、まっさらな200㏄のモトクロッサーが現れた。

 これはすごい。

 これなら母さんの10年落ちの軽自動車でも新品にしてあげられるだろう。

 この復元ではパーツそのものがなくても例えば鉄とかの素材だけでも復元してくれるようだ。


 俺は家に戻ってすぐにご飯を食べだした。

 学校に遅れてしまう。

 母さんと美香が今週のスキルを聞いてきたけど、帰ってきてから説明するとだけ言って美香と一緒に家を飛び出した。


 通学路で美香に聞かれたので、朝起こったことを歩きながら話すと美香はまた目を輝かせて言った。

「じゃあ、古くなったバッグとか本とかも新品にできるんだよね。」

 と聞いてきたので、

「恐らく可能だと思う。どんな不具合かわかれば大体のものは治ると思うよ。俺の鑑定と合わせたらどんな材料がいるのかはわかるからね。」

 と答えておいた。

 じゃあ、あれもこれもと美香は指折り何か考えていた。

 母さんと何か相談するんだろう。

 俺は美香と別れていつものルーティーンで学校まで登校した。


 授業を受けながらもいろいろと可能性を考えていた。

 例えばバイクや車の修理にしても、何台か材料用のジャンクのバイクや車をアイテムボックスに入れておき、その上で修理したい車やバイクを入れれば、すぐにでも新品に生まれ変わるんじゃないだろうか?これは試してみる価値はあるだろう。

 ちなみにアイテムボックスに入っているものも鑑定できた。


 今日の帰りはちょっとリサイクルショップにでも寄ってみよう。


 俺は今日も部活で走り倒して、今日は用事があるとしおりと義男と別れて、翼と一緒に駅前の方に向かった。駅から少し離れたところに大きなリサイクルショップがあったのを思い出したからだ。

 俺は翼とも別れて、一人でリサイクルショップに入っていった。

 俺はそこでジャンク品として売られている大型の液晶テレビや全自動洗濯機、オーブンレンジ、業務用の大型冷蔵庫などを買いあさった。それぞれ複数個ずつ買った。

 さすがに店長があきれてるな。

 他にもちょっと興味があったんで、ギターやベース、ドラムやキーボードなどのジャンク品を複数台ずつ買った。

 全部店の前の一角に集めてもらい、俺は家の人が迎えに来るからと店の人は店の中に入ってもらった。

 その隙に全部アイテムボックスに収納して、俺はそのまま家に帰った。

 ジャンク品ばかりだったからか、あれだけ大量に買っても3万円もしていない。

 全部1個当たり500円程度の値段だった。

 そりゃそうだよな。

 普通なら治せないからあってもごみ同然だもんな。


 俺は家に帰ってアイテムボックスのことを話した。

 すると母さんがいくつかのブランド物のバッグを持ってきた。

「これって治ったりするのかな?」

「う~ん。一度試してみるね。」

 と、それらのバッグをアイテムボックスにしまった。

 すると今日買ったもので材料は足りているようなので、全部修理してみた。

 修理が終わったものを母さんの前に並べた。

 するとやはり、新品のようになっていた。

 母さんは涙を流して喜んだ。

 これらは父さんからプレゼントされたものだったそうで、不注意で金具が壊れていたり、ひっかき傷ができたものとかもあったそうだ。

 それで使いたくても使えなくて今までしまっておいたそうだ。

 うん。思い出の品が治ってよかったね。

 すると次から次に母さんと美香から修理依頼が舞い込んだ。

 割れた壺や、破れた掛け軸、汚れが落ちない服など。

 それらはすべてきれいに新品同様になった。

 俺が授かったスキルの中で一番喜ばれたのかもしれない。


 思い出はお金じゃ買えないからね。


 俺はその晩に家中の家電と洋服をすべて新品によみがえらせた。

 美香が小さいころの服などもあり、これはこれでチャリティなどで出すことができると喜んでいた。

 後、靴の類も痛みが激しいものもあったが、全部新品にしておいた。

 踵が減った俺のスニーカーなんかも新品になった。

 最後には朝考えていた母さんの車を新品にして俺はようやく解放された。


 それからも俺は修理屋として母さんと美香から重宝された。

 一番驚いたのはサークライトなどもよみがえったことだな。


 ひょっとして、これって家も丸ごと新品にできるんじゃね?

 と俺がぽそっとこぼすと母さんも美香も俺を連れて家を出て、わくわくしながら俺を見ていた。

 やってみたが、さすがにできないようだ。

 いや、無理やりやればできるんだろうけど…。

 電線や水道管、下水道管などがどうなるかわからない。

 最悪は水道管から水が出っぱなしで、ガス漏れ、電線は電柱からぶら下がった状態になるかもしれない。

 ひょっとしたら豪運さんがうまくしてくれるかもとも考えたが、使おうとすると、無理だとわかってしまう。

 俺たちはあきらめて家に戻った。

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