-01.やまださんち

「そういえば夕方に救急車が隣の山田さんところで止まってたけど誰か急病なのかな?」と美香が言い出した。

「山田さんのところはおじいちゃんとおばあちゃんだけだからね。もしどちらかが倒れでもしたら大変だろうね。」

 と母さんが言った。


 あくる日、山田さんのおじいちゃんがなくなったことを聞いた。89歳だったそうだ。

 山田さんちも農地を持っているけどもうだいぶ長いこと耕されていない。

 通夜の席で息子さんとみられるおじさんから母さんが話しかけられていた。


 家に帰って何話してたか聞くとどうやら、おばあさんも足が悪いそうで、この後老人ホームに入るみたいだ。

 それで今の家を売りに出したいんだけど買ってくれないかと打診されたそうだ。

 今晩にもアメリカの父さんに電話して聞いてみるそうだ。

「それ、何とか買ってあげれないかな?下手におかしな人が隣に来られても困るし、今なら俺がお金出してもいいから買ってあげよう。」

 と母さんに言っておいた。


 夜に父さんに電話して、父さんも買うことには賛成してくれたようだ。

 俺も電話に出て父さんと少し話をした。

「あまり詳しくは話せないけど、俺、株も始めて何とかお金を稼げるようになったから、俺が買ってもいいよね。」

「株で儲けたって言っても知れてるだろう。それでもいずれ相続の問題も出てくるだろうから、紀夫の名義の方が後々楽は楽だろうけどな。まあ、足りなかったらまた相談しろよ。」

 と父さんは電話を切った。

 俺はすでに1,000万ほどの貯金はあるからね。


 翌日山田さんの息子さんと不動産屋が来て査定したらどうやら500万円ほどらしい。

 農地などはほとんど値が付かず、家も老朽化がひどくてこれも値が付かないらしい。

 取り立てて開発用地にもなっていないのでこの程度の金額になるらしい。

 で、俺がその査定金額が書かれた算出書を見たら、びっくりした。

 山田さんが売りにだそうとしている土地はうちの畑の先にある山も含まれているようだ。それで500万円。

「買います。」

 と俺は即答で答えた。

 坪1,000円ほどらしい。つまり5,000坪?

 ただ、建物とか建てる場合は用地変更を出さなきゃいけないらしい。

 このあたりはまた調べればいいや。


 俺は教えられた口座にさっそく振り込みをしてその場で確認してもらい、領収書を切って、土地と建物の権利書を置いていった。

 これであの土地は俺のものだ。

 ウハハハハ…

 ついつい、魔王のように笑ってしまった。

 妹にはバカみたいとなじられた。

 ちょっとした茶目っ気じゃないか。


 山田さんのおばあちゃんは数日後、息子さんに連れられて、特別養護老人ホームに入ったらしい。

 一人で暮らしても何かあったら誰も気づかないし、息子さんも東京のマンションで家族と暮らしているようで、そんなに余裕はなかったらしい。

 いろいろと考えるところはあったけど、こうするのが一番よかったんだろうな。

 俺がキャッシュで支払ったんで、結構いいところのホームに入れたらしい。

 なんでも温泉も湧いてるそうで。そう考えるとそういう老後もまんざらでもないな。

 聞くところによると、日本中どこをほっても2,000mも掘ると温泉が湧くそうだ。

 俺が買った土地でぜひとも温泉を掘り当てたいね。

 で、露天風呂を作って、家族で楽しめるようにするんだ。

 父さん帰ってきたらびっくりするぞ。

 俺の豪運があれば失敗することはないだろう。

 なんでも温泉をそこまで掘るには2,000万円ほどかかるらしいから、また少しお金を貯めないとね。


 俺は、昨日と今日で鑑定の効果的な使い方を思いついて、それを検証していた。

 株のトレーディングだ。

 俺がパソコンやスマホから見れる株価の動きを予測しようとすると鑑定が作用して、上がる傾向にある、とか具体的に〇〇円まであがるとかわかるようになったんだ。

 これには豪運も味方してるのかな。

 俺は昨日と今日の休み時間だけを使ってFXをスマホでしてみたんだが、それだけで1,000万円程の利益を上げることができた。

 こまめな値動きで売り買いを指定できるのがうまく取引できた原因だ。

 休み時間に円相場を見る。

 一通り、いろんな通貨を見るとどれがどれだけ上がったり下がったりするかが鑑定で出てくる。

 それに100万円ずついくつかを買ったり売ったりして、それがいくらの値に行きついたら手放すかをあらかじめ打ち込んでおける。

 こうやって時間を気にせず、取引を終えたらスマホは電源を落としておいて授業を受ける。で、又次の休み時間にスマホを取り出して結果を確認して、又それぞれ100万円ほど買ったり売ったりする。

 これを午前中だけで4回、午後は2回繰り返すだけで一日で500万ほど、二日で1,000万円ほどを作ることができた。これはいい。

 負けることがないからね。

 こうして俺は着々と資産を増やしている。

 高校の同級生から高1から株かよとちょっと引かれたけど、まあいい。


 何と翼も株のトレーディングを中学生のころからやっているらしく、今では何億も動かすほどの実力らしい。

 俺はそんな翼の株の知識を聞きながら、危ない株は売らせて、安全な銘柄をいくつか教えておいた。

 これぐらいならいいだろう。


 俺はその週の週末、駅前の不動産屋を訪ねた。

 先日山田さんの息子と連れ立ってきた不動産屋だ。

 別に購入した土地にクレームがあってきたのではない。

 俺は駅前にマンションが欲しいのだ。


 いや、別にやり部屋が欲しいわけじゃない。

 興味がないとは言わないが。

 そうじゃなくて、完全に趣味で使えるような部屋が欲しかったんだ。

 俺でも買えそうな物件がここのような地方都市ならあると思うんだよね。


 俺は5LDKのマンションを2,000万円で購入した。

 この町では結構高級な部類に入ると思う。

 一番気に入ったのは最上階だということと屋外にあるジャグジーだ。

 俺はこの部屋を今後行うビジネスの拠点として使おうと考えている。

 会社も作ったほうが何かと便利そうなんで、さっそく次の試験休みの時にでも設立登記のために動こうと考えている。

 そこまでは母さんも了承済みだ。

 いつまでも宝くじの当選金目当てにしても堕落するだけだからね。

 どうせならビジネスをしてみたいと母さんに言うといいよと二つ返事で未成年者ではできないところを手伝ってくれることになった。

 俺は土日はこのマンションの部屋にこもって株の売買を続けた。


 あっという間に資産が20億を超えた。

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