-01.担任は残念美人だった
「あ~。お前たち、スマホを持ってくるのは構わんが、着信拒否、バイブにしとけよ。授業中に鳴らしたり、スマホいじってるやつがいたら没収の上、校庭3週走らすからな。」
といきなり俺の方を指さして、そういった。
「私がお前たちの担任の春日京子だ。一年間よろしく頼む。さて、時間もないことだし、体育館に移動するぞ。みんな廊下に並べ。順番は適当でいいからな。」
と、どうにも豪快な話し方をする先生だ。
美人なのに勿体ねぇ。これってあれか?残念美人ってやつか?
俺がそう考えたのがわかったのか俺のことをキッと睨んで
「お前、スマホ慌ててしまっただろ。入学式の間だけでも電源切っとけよ。」
と言われた。
俺は慌ててスマホを取り出し、電源をオフにした。
周りのみんなも電源を落としているようだ。
廊下で男子と女子で並んで2列になって担任について体育館まで移動。
市長の代理やら、PTA会長やら、校長先生のあいさつやら…
いや、長いって。
椅子に座ってるからまだ楽だけど、眠いんだよ。
なんでこういう偉そうな人たちの話って眠くなるんだろうな?
催眠術でもかけてるんじゃないだろうな?
あ、術で思い出した。
さっきのメールの『スキル』ってなんだ?
それが毎週届くって書いてあったよな。
まあ、いたずらメールかなんかだと思うけど、妙に引っかかるんだよな。
あのドメイン。
あんなの見たことなかったな。
そんなこと考えている間に、入学式は終わった。
…二組のところであからさまに伸びしている馬鹿がいる。
あ、義男だ。
早速担任の筋骨隆々なジャージ着た先生に頭叩かれてる。
よかった。相変わらず義男は義男だった。
周りのみんなの失笑を買いながらも、あいつはあれでコミュニケーション取るのがうまいから、すぐに周りに人が集まってくるんだよな。うらやましい。
俺たちは教室に戻り、明日からの授業のカリキュラムなどを聞いた。
今日はもうこれで終わりだ。
さて、帰ろうか。
俺が教室を出ようとすると、廊下でしおりと義男が待っていた。
三人で下足室で靴を履き替え、帰路に就いた。
「のりたまはどこのクラブに入るか決めたのか?」
「う~ん。いまいちピンとこないんだよな。それと俺、今年中にバイクの免許取ってバイクが欲しいから、バイトも探さないといけないし…。」
普通二輪の免許を取るだけでも10万円ほどかかる。
大型免許にも同額だ。大型は18になるまで取れないそうだけど。
それにバイク自体は新車だと平気で100万円とかするものがごろごろしている。
学生ではなかなか手が出ないが、頑張ってみたい。
まあ、初めは中古のバイクを買って、自分で直しながら走ろうと思っている。
実は父さんがそうやってオークションサイトなどからバイクを買って自分で直して乗ってるんだ。
家の納屋には3台ほどのバイクが置いてある。
たまに日本に帰ってきたときにはバイクの調子を見ながら一日つぶしている時がある。
ああいうの、やってみたいんだ。
俺はそのたびに父さんの手伝いをしながら、バイクをいじってた。
今も200㏄のオフロードバイクを一台父さんから預かっている。
これを直して裏の休耕地で走らせるのが当面の目標だ。
一応父さんがメンテナンスするための道具や部品は取り揃えておいてくれているので、時間の問題だろう。
「私もバイクに乗りたい。自分で運転するって気持ちいいだろうな。」
しおりもバイクにあこがれている。
俺と父さんが直している間、ずっと一緒に見てたからな。
うちの妹も50㏄のモトクロッサーを与えられて、休耕地でバイクを走らせている。
私有地なら免許もいらないからね。
ちょっとした起伏なんかは父さんがバックホーなんかで作ってくれているので、すでにコースと化している。
「ねえ、のりたま。私もバイトして免許取りたい。一緒にバイト行かない?その方が親も安心すると思うから。」
「いいよ。じゃあ、バイトは俺も働けるようなところ一緒に探そうか。」
「お前らはバイト組か。う~ん、俺はサッカー部にも興味があるんだけどな。」
「サッカー部って休みもなしに毎日?」
「それすらわからん。だから明日にも一度覗いてみようと思ってる。」
「体験入部ってやつか。それなら俺も付き合うぞ。別に体験入部したからって必ず入らなきゃいけないってこともないだろうしな。」
「お、サンキュー。心細かったんで助かるよ。」
そんな話をしながら俺は義男、しおりの順番で別れて、大通りの交差点まで来た。
交差点の向かい側にあるスーパーマーケットの一角に宝くじ売り場を見かけた。
「そういえばあのメールに、俺にスキルとして豪運が与えられたって書いてたな。ちょっと買ってみるか。」
とその宝くじ売り場の方に向かった。
いろいろと種類があるんだな。
お、スクラッチなんかもあるんだな。
「おばちゃん、そのスクラッチっていうの10枚ちょうだい。」
俺は何となく選んだ1つの束を指さした。
「これでいいかい?」
「いや、その右側の。そうそれ。」
俺は何となくそれに当たりが入ってる気がした。
1枚200円で、10枚2,000円だ。小遣いが減るのは痛いが、なんせ今日は高校デビューの日だしな。縁起もんだ。
早速そこにあったテーブルに座りコインで削りだした。
ここのスーパーの飲食スペースが併設されてるから、俺たちもよくここでおやつ代わりに、ソフトクリームやたこ焼き食べてたんだよな。
流行っている漫画のキャラクターのスクラッチだ。
3つの削るとこを削って、そこに同じ絵柄があれば当たりらしい。
とりあえず、全部削ってからじっくり見るか。
俺は黙々と全部削っていった。
こういうのをワクワクしながらやるのもいいんだけど、そういうの一人でやってもね。
「お、これ200円当たってる。」
俺は2枚目ですでに、1つのあたりを見つけた。
でも、投資は2,000円だ。せめて回収したいけど無理だよな。
3枚目、4枚目を確認すると、また当たってた。
「これは…4等1,000円だな。」
これで半分は取り返せたな。
5枚目、6枚目…
「あ、当たってる。この図柄は…。3等一万円だ。」
うぉおおおお…
俺は叫びだしたい気持ちはあったが、なるべく冷静に何度も見返した。
これまで3等4等5等と当たっている。
十分元は取り返した。明日はあいつらにも何か奢ってやろう。
7枚目、8…
うそだろ?この図柄は2等だぞ。
2等って10万円だぞ?
9…10
「うっ」
当たってる。1等も当たってる。
300万円?
え?こんなに当たらないよな。10枚買ってその中に1等から5等まで全部入ってる確率ってどれだけだよ。
俺はおばちゃんにそっと出して…。
「おばちゃん換金ってここでできるの?」
と聞いた。すると
「お、当たったのかい?もちろん換金できるよ。ああ、高額当選はここでは無理だけどね。そういう時はここの支店の銀行に行って換金してもらうんだよ。」
「いくらまでならここで換金できるの?」
「ここの売り場では5万円まで換金できるよ。」
「じゃあ、この3枚。」
と俺は3等以下の当選券をおばちゃんに渡した。
それを確認したおばちゃんはびっくりしてた。
「あんたさっき買った10枚だけで、これだけあてたのかい?すごいね。」
俺はおばちゃんから11,200円を受け取った。
なに?なにがおこってる?
俺は1等と2等の当たりくじをブレザーの内ポケットに直して、家に急いで帰った。
といっても走ってはいない。慎重に歩いてだ。
俺はただいまと声を掛け、自分の部屋に入って鍵を閉めた。
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