-02.検証実験
俺は改めてブレザーの内ポケットから当たりくじを出して、何度も確認した。
しばらく呆けた後、はっとして俺はスマホのメールを見返した。
01.【豪運(ごううん)】
運気が上がる。賭け事で当たりやすくなる。感が冴える。
確かに。
これって今日だけなのかな?それともこれから先、ずっと?
…これってえらいことだよね。
俺はネットを使って宝くじのサイトを開いた。
未成年の換金は…大丈夫そうだ。
えっと、身分証明書と印鑑があればいいのか。
身分証明書って住民票とかかな?生徒手帳では無理だろうな。
さて、俺はこれを親に話すべきなのだろうか。
うん。母さんに話して協力してもらおう。
俺は2階の自分の部屋から出て、キッチンにいるはずのかあさんに声をかけた。
「母さん。ちょっと相談したいことがあるんだけど。」
とそう言うと、
「なになに?紀夫が相談って珍しいわね。」
と嬉しそうに、近寄ってきた。
俺はリビングのソファーに座り、さっき当たったスクラッチカードをテーブルに置いた。
「さっき学校帰りにそこのスーパーのところにある宝くじ売り場で、スクラッチカード買ったんだ。」
「へ~。あんたがそんなギャンブルみたいなのに手を出すって、珍しいわね。」
といいながら、そのスクラッチカードを拾い上げてみた。
「で、いくらか当たったの?」
「310万円」
「え?」
母さんはそろった絵柄と、裏に書いてある当選絵柄と当選金額を何度も何度も見返していた。
「え~~~~~~~~!!」
「母さん。大きな声出さないで。」
俺は俺より驚いてあたふたしている母を見て急に落ち着いてきた。
「で、これを換金して、母さんと美香と俺とで三等分したいんだ。100万ずつね。2等の10万は俺がもらうけどね。それで、換金のために一度ここの銀行に電話して身分証明書がいるらしいんだけど、どんなものがいるか確認してほしいんだ。」
と母さんにお願いした。
時計を見るとまだ時刻は12時を少し前だ。
銀行は15時まで空いているので今から行っても間に合うだろう。
母さんは急いで銀行に電話をかけて、受け取りのための身分証明書や呉竹支店でも換金してくれることを確認して電話を切った。
ちょうどタイミングよく、そこに美香が返ってきた。
「ただいま。母さん、兄ちゃん。どうしたの?」
と俺に聞くので俺は美香に制服を着替えるように言った。
俺も着替えないと。
母さんも化粧を直すようだ。
10分後に玄関に集合。
そう言ってそれぞれ動き出した。
俺は制服を脱いでさっき当たった11,200円の入った財布もジーンズにつっこんで、スマホも後ろポケットに突っ込んだ。
それで玄関に集合した。
俺、美香、母さんの順で玄関に集まった。
母さんに車に乗るように促されて、俺たちは母さんがいつも使っている軽自動車に乗り込んだ。
「ねえ、どこ行くの?何かあったの?」
と美香が聞くので、
「う~ん。とりあえず昼飯かな?」
と答えた。
役所で住民票を取るにも昼の13時までは昼休みで受け付けていないこともあって、3人でファミレスに入った。
俺たちはハンバーグを頼み、デザートにパフェも頼んだ。
出際に俺が会計を払った。
妹の美香がびっくりしている。
「兄ちゃん、そんなにお金持ってたの?」
俺は母さんの車に向かいながら答えた。
「いや、今日スクラッチで当たったんだ。だから3人で分けるためにお昼ご飯は俺のおごりだよ。」
「へー、すごいじゃない。兄ちゃんついてるね。」
と美香ははしゃいだ。
うん。このまま何も知らせないうちに役所寄って銀行に行くぞ。
ちょうど役所についたころに13時を回り、住民票を3通取ることができた。
なんでも銀行に口座作るのに、最近では公的機関が発行した身分証明書が絶対に必要になったんだって。
昔は誰でも作れたんだって母さんが言ってた。
そして宝くじを販売している銀行の呉竹支店に到着。
母さんは受付で当たりくじを見せて、今来ている3人の名義でそれぞれ口座を作りたいと申し出た。
事前に電話して段取りを聞いてくれてたから、やることもスムーズだね。
俺は自分の印鑑を持ってきてたけど、美香のは母さんが持ってきてくれていた。
しばらく待つとそれぞれに通帳を渡してくれた。
支払いまで通常2週間ほどかかるそうだけど、そこまでの高額でもないし、本人が受け取りに来ていたのですぐに対応してくれたようだ。
妹はきょとんとしている。
中学一年生で100万円の通帳。
とりあえずその通帳を母さんが預かって、車に戻って、家に帰った。
そこまで、妹は無言だった。
家のリビングに帰ってきて俺と母さんは笑った。
大笑いした。
妹は訳が分からなくてきょとんとしていたので説明した。
「え?スクラッチで300万?それで母さんと私と兄ちゃんとで3等分してくれたってこと?」
美香はいきなり抱き着いてきて
「お兄ちゃん大好き!」
と言ってくれた。現金なもんだ。100万円分のハグだと思えばいいか。
「よくみんなで分けようって思ったわね。母さんはその気持ちがうれしいよ。このお金は老後まで使わないね。紀夫や美香の子供ができたら、赤ちゃんの服とか買ってあげるんだ。」と母さんも大はしゃぎ。
いやいや、気が早いと思うよ。
俺が結婚なんていつになることやら。
「こういうお金を黙って持ってると、なんか引け目感じちゃうんだよな。だから一瞬で使うか、みんなで分けるかしか思いつかなかったんだよ。」
俺はそう言った。
俺はこの時、あのメールのことも言ってしまうかどうか迷ったが、単なる偶然かもしれないし、二度と起こらないかもしれないから、黙っておいた。
これが何度も続くようなら、又改めて話せばいいか。
俺はひとしきりテンションの上がった美香と母さんと話をしてから、自分の部屋に引きこもった。
俺は気になってたんで、まだツキが残っているのか検証してみようと思っている。
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