0-ルートE 月も見えない空の下で


どんなに生きようが生物は必ず死ぬ、どんなに完璧でも永遠でいられる物は存在できない

どんなものであれ最後には確実な死が待っている

幼い時、恐怖に包まれたまま青年となった俺は、その恐怖から学ぶものが多くあった

その代わり、失う物はあまりにも……


異世界に飛ばされて10周…自分は自分の成すべきと思った事を行い続けた

しかし、事態は何一つとして解決には至らず、むしろ悪化の一途を辿る結果と成り果ててしまった

その事に絶望した俺は、この事態が神様が起こした事と理解した上で全ての生物を地球上から消した

天界の者たちも、人類と同じ末路を辿らせた

炎の中、俺は魂がこの天界にないことに気づき、天界へ続くゲートの術式を《反転》させて、身を投げるように落ちていった

こうして今へ至る。


ゆっくりと堕ちていく感覚の中、俺はどこまで降りれているかもわからないまま落ちていた

「(冥界か、死者か死神しかいないんだろうな……)」

そもそも、生者である自分がこんなところにいていいのだろうかとも思ったが……

現世で辺り一面死体の山にした光景を思い出して考えるのをやめた

「(死を見すぎたか、人生に疲れてきたな……)」

しかし、進んだ時は戻らない

もし戻せた所で、誰も幸せにならない

そもそも幸せ自体個人個人が勝手に決めるものだ、自分が言えたものじゃなかったな

希望みらいはなく、真実ほんとうもなく、ただ現在じかんがあるだけ……」

俺は自らにそう言い聞かせ、瞳を閉ざした


………………


何分……何時間経ったのだろうか、少し眠ったが未だ地面に着いている感触がない

目を開いてみると、空は真っ黒で何も見えなかった

しかし自分の前髪が揺れてないから冥界に着いた事にすぐわかった

ゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡す

地面しか見えないと言うより……

「(地面しかない……?)」

近くの土に触れても質感すら感じない、ここでは従来の常識では通らないみたいだ

「とりあえずどこに何がいるくらいは把握しとかないとな……ん?」

立ち上がった時、人らしき気配が近づいてきた

ん?何故人ではなく気配かって?そりゃあ……

俺は振り返ってみるとボロボロのマントを着た、人とは思えない気配をする少女がいた

あー……死神って奴だな?

俺は何も驚きもせずその死神に近づくと、おどおどした状態でこう言った

「あ、あのっ……こ、ここは冥界ですっ、きっ、規則により生者はたっ、立ち寄りはダメです!!うんっ!!」

勇気を振り絞って言ったのか、言い切った時にリハーサルの確認で自分なりにいい感じな結果が出た時のような、そんな健気な表情だった


……なんだ天使か


そう思ってここが天界かどうか確認するためにポータルを開ける

ポータルの先は先程施設を破壊する為に使ってた炎がまだ残ってたからか、火の海になっていた


……ここ冥界だったわ


そう思って俺はポータルを閉ざした

「言ってろ、俺は勝手に行かせてもらうぞ」

そう言って行こうとしたら、死神は俺の前に立ち塞がって鎌を構える

おーやだやだ……刃と持ち手部分のバランスがぐちゃぐちゃじゃん、こいつ完っ全に新米じゃん、足も相当震えてるし、マジで勇気だけで動かしてやがる

「そんななまくらじゃあ僕を殺すのはちょーっと無理かなぁ……」

頭を掻いて近づく

「で、でも魂くらいなら……」

ゼロ距離にまで近づくと彼女はビクッと固まる

俺は鎌の刃を掴み自分の胸に、魂がある箇所へ突き刺す

「ひぃっ……」

彼女は俺の行動に怯えて後ずさった

刃が突き刺さった所は的確に当たっており、もう少し深く押せば背中から突き抜けれたが……

何もそこまでせんでいいか

……そう思って刃を抜いた

「嬢ちゃん、俺はな……」

次言おうとした時、ある当たり前な事に気がついた

あー……やっべ、名前聞きそびれてた

「……嬢ちゃんって呼んじゃって大丈夫?」

死神も俺が何を言おうとしてるのか何となくで理解したのか自ら名乗り出した

「えっと、ラウ……です」

ラウと名乗った死神は丁寧にお辞儀をした

俺も、少なくとも『礼儀には礼儀を』と少しお辞儀をする

「えっとな…ラウ、俺は死に実感を持っちゃいないんだ」

明確に言えば、死に触れすぎて死んでも動けるだけなんだがな

「じゃあ魂は……」

ラウは俺に心配して鎌を下ろす

「ああその辺りは大丈夫だよ」

俺は手を差しだし「触ってみ?」と言ってラウに触らせた

手を触れた時に何かを感じ取ったのか、それとも天使と同じように触れた対象の魂を感知できるのか、何か察した後に疑問があるような表情を見せた

「俺な、こう見えて割り切りが強くて『心や魂なんてな物だ』って言い切っているんだ」

あくまで自負だが、そう割り切らんといけなかった時も多くあったのは事実だった

俺はラウに分かりやすく、且つ丁寧に語る

「ここに来た理由だって、死神達の上司に当たる者にちょっと聞きたい事があるだけなんだ、問い合わせたりしてもらえると嬉しいものだが」

それを聞いてラウはマントの中でぶら下げていたランタンを取り出し、青い炎を点けて突然話しかけた

「先輩、先輩、聞こえますか?」

どうやらこのランタンが彼らの通話手段のようだ、デザインといい互換性といい……何で神様はこうも高性能ハイスペックな日常道具ばっかしか作らないんだろうな……尚更ヘパイストスの事が可愛そうに思っちまったじゃないか

「人間が……はい……はい……事情があるみたいで……はい……通してもらえないでしょうか?……」

通話中のラウから色々と聞こえてきそうだが、どうやらランタンに触っていないと聞こえないようになっているみたいだ

だから受話器越しに盗み聞きができないからラウの声しか聞こえない

「はい……わかりました……それでは」

ラウがそう言って青い炎を消しこちらへ向く

「来ていいそうです」

珍しい、あっけなく通され……ん?来ていい?

「来ていいって?」

ラウは無言で頷く

「ここ、どの辺りが聞いていいかな?」

そう聞くと、わかってたかのようにラウは丸めた紙を広げて俺に見せる

全体的に見てみれば逆さピラミッドの形をした地形になっていた

成程、俺がいる位置は1番上の端っこなのか

「ははっ……ここから徒歩?」

ラウはそのまま何度も頷く

うわぁ……環境だけはブラック職場じゃねーか

「こっからあそこまで距離幾つあんの?」

「中身は螺旋階段式を採用されてますから、すごく長いですよ」

「道中は?」

「ここにはいませんが、亡霊や囚われた魂がいくつか……」

「他の死神が僕に襲ってくる保しょ……」

「多くの管轄があるのでありません」

「………」

数々の質問から分かる事

1.死神の上司はこっから歩いてこいと言った

2.道中にエネミーが多く蔓延る環境

3.死神は管轄によって異なるから、見つかったら襲われる危険がある

この3つだ

……流石の俺も頭を抱えた

いやそりゃそうだけど!そうだけども!あの上司が言った意味がよーくわかったよ!

『降りてこい』じゃなくて『降りてみろ』かよっ!ふざけんなテメェ!

……いや、ここに来れた時点で向こうとしてはこちらが異常なのか、考えれば考えるほど落ち着いてきた

大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す

「わかった、わかりました」

どうせ向こうから来ずに待ち伏せてるのがよくわかる、「来ていい」って言った以上、来れたら話そうって旨で言ったのだろう

この言い分だと試練を課す側だ、必ず通らなければならない道に刺客を置く思考だ

ならこうしかないよな

「ラウ、お前はついて来るな」

「えっ?」

「ここから先は俺一人でも行けるし、君がついて来る必要もない、地図も大体覚えたしな」

それ以上に、別管轄の死神からこいつを人質にされたら元も子もない、そしてなにより……

「君新人でしょ?俺の予想だと、君を戦闘に巻き込んでいくと多大なダメージが入りかねん、義理を通してまで道案内させる訳にもいかないんだ」

左足のつま先を地面に当て、感覚がはっきりしてるかの確認をする

指を動かしたりする辺りは問題はない、地形に干渉する際の実体がないだけのようだ

そして大きく息を吸う、感覚上での魔素の味を確かめるためだ

普段は「魔素を含んだ空気を吸う」のではなくただ「純粋な空気を吸う」という認識で空気を吸っていたので、あまり魔素とかの味や匂いを感じ取らなかったが、俺が異世界ここに来た時点で「空気が普通じゃないから調子が狂う」って事で、後から空気と魔素を「違う物」として割り切っていた

まぁ要は《スイッチング》って奴、アニメでそれ知って、必要な時があるじゃないかと思って頭に入れてたが、まさかこういう所で使えるとは

「あの、何を……」

「空気の味を確かめてる」

素っ気なく答えるとラウは「えぇ……」と引き気味に言う

魔素は……『死』の属性があるが、ほんの、それもミリ単位の量だ、1年ちょっとはここにいても命に関わらないな

「よし、とりあえず魔素の状態は知った」

次に魔術が効くかの確認、ここでも空を飛べるか確かめる

ここに魔素がある時点で空を飛ぶ事が出来たのは当然の結果だった

うん、普通に飛べたな

ラウは、俺が突然空を飛ぶなり大きく口を開けてあ然としていた

俺はあ然としていたラウを見ては微笑み、螺旋階段の中心に立つ

「そもそも俺近道へ突っ込む派タイムアタック派なんだよ、ラウ」

大きく腕を広げるように横に伸ばし、力を入れる

魔力を貯める動作としてこうしていると自然と魔素がこちらへ集まって来る

集まって来た魔素は体を経由して魔力に変わり、魔術との干渉を促進させる

次第に体が白く輝くようになり、体中から電流が流れてくる

再現魔導 《プラズマシャイン》って名付けとこう

「(そろそろ限界近くかっ……!)」

プラズマを体に纏い、螺旋の中心から真下に突っ込む


そこから先はほぼダイジェストに近いものだった


1層目

少しすると地面が見え、その真ん中に大きな鎌を持った死神がいた

……が

「どけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

俺の叫びに気圧されたのか、それとも魔力の塊のような状態で突っ込まれたのは想定外だと思ったのか、地面へ真っ直ぐ突っ込む俺を見てすぐに避けた

俺は構わず地面へ衝突し、地面を焼くように掘り進める

掘り抜くまでの時間は対してなく、弾丸が体を撃ち抜いたかのように地面を抜ける


2層目

次の死神は前とは違ってマントを着ず、ムキムキの筋肉を見せながら拳を構えていた

「不届き者め!この私を相手に通せると思うな!」

「邪魔すんじゃねぇ!」

1層目と同様に突っ込むと、地面を焼く時の衝撃で昔のゲームみたいに吹っ飛んでいった

「ぎにゃぁぁぁぁぁっ!」

そこから普通に地面を撃ち抜きました


3層目

次は大勢の小さな死神が盾を構え、その中央に杖を持った死神が待ち構えていた

「我が群れ、我が軍勢の守りは絶対だ!」

「実態になァ、完全な絶対を持つことなぞ……」

流石に『絶対』という言葉を聞いて少し琴線に触れ、個人的に許せなくなった

「出来るわきゃねぇだろぉぉぉぉぉぉ!」

さらに速度を上げ、群れに突貫する

小死神は衝突前の衝撃に耐えきれず、ボウリングのピンのように弾き飛ばされ

「ぐほぁっ!」

その後すぐに死神に直撃した、貫通すると思ったが

「ぬぅんっ!」

片側へ重心をずらしながら身を捩り、衝撃を少し和らげながら左に回って避けた

俺は舌打ちをしつつ、地面を撃ち抜く


4層目

「オデが止める!その釜!蓋して!」

次は金棒を持った鬼が周辺の小鬼達へ巨大な釜に蓋をするよう指示していた

更に速度を上げて吶喊とっかんすると

「ヌオォォォォォォッ!」

鬼は素手で俺に纏っているプラズマごと俺の手を掴み、勢いを無理矢理止めようとしていた

しかし、蓋をしようとしていた子鬼を余波で吹き飛ばしてしまい、釜から溢れる尋常じゃない魔力の気配に気づいた俺は片手だけを払って釜へ手を伸ばし、叫んだ

「ゲェェェェェェットシャァァァァァァインッ!」

釜から魔力を吸えるだけ全て吸い出す、今にも体が千切れそうな感覚だが全て魔力放出に使う

鬼も掴んでいた手が増大したプラズマに押されて掴むどころじゃなくなる

「オォッ……ウオォォォォォォッ!」

それでもと言わんばかりに押そうとするが、何故か視線だけ俺より自分の足元を見ていた

鬼の足が大きくずれて上半身が潰れると思いきや、血一滴すら出ずに突然視界から消えた

地面を焼きながら逆さまの視界で見えたのは、鬼の足首にロープが結ばれていた事実だけだった

流石に止まる訳にもいかなかったので、静止画みたいな光景を目に焼き付けながら地面を撃ち抜く

「……なる程な、ズレたのではなくずらしたのか、それで子鬼達が引っ張って……ああなる程ね」

後からずぐに納得した


5層目

次の層はどういう事か、担当って言えるような奴が一人もいなかった

一旦スピードを緩め、現地民に話しかける

「おーい、ここの担当はいないのかい!」

そう言うと、酒盛りしていた鬼の群れから頭に角が生えている男性が立ち上がる

「彼女のことか、あいつなら現世に行ったきりで帰ってきてないんだ!」

「そうかい!じゃあ勝手に通っていいんだな!」

鬼は真下に指差してから腕でバツを作り、左に回るように腕を振る

(直進は駄目……そうか)

俺はその指示に従い左にカーブを描き、地面を撃ち抜いて更に深く進む

あの鬼から見るに担当は、じゃあ真ん中を通さなかったのは……ごめん

俺はそう思って更に奥へ突き進む


6層目

次の層にいたのは、鉄塊に等しい程の大きい大剣を持った死神が待っていた

纏っているプラズマも安定しなくなってきた……

「(放つなら……今!)」

死神に向けて突っ込むと、死神も俺をぶった斬ろうと横薙ぎを行う

「うおぉぉぉぉぉ!」

大剣に当たりかけるタイミングで俺は、纏っていたプラズマから離れる

本来の使い方としてはこうやって放つのが普通だ、長く纏ってた俺が異常なだけであって

プラズマは俺が離れた後も、死神に向けて進み続けた

「《悪魔の腕イビル・アーム》っ!!」

その間に俺は魔術で右腕を《異形化》させ、まるで悪魔の腕のように作り変える

死神もその光景を見て焦りだすも、プラズマを抑えるのに手一杯でピクリとも動かせれなかった

その隙に異形化した腕で死神に殴りつける

殴られた死神は壁にめり込んで気を失う

そして死神が殴られた衝撃で吹っ飛んでいた鉄塊を空中で掴み、その後にプラズマが地面に着弾した

着弾後すぐに大きな衝撃と爆発が起こり、その光と風圧が俺を包む

全身に高熱のレンジで焼かれる感触と、万力で潰されそうな感触が同時に俺へ襲う

本来こんなのを体に受けて何も反応しないはずもないのだが、俺のはちょっと事情が違ってな

「(こんな痛みにも全然反応しなくなってきたな……)」

自分自身『痛みは当然の産物』って思っててな、痛覚があっても「痛い」と言うことが出来ないくらいの精神力になっちまった

爆発が収まり、ボロボロの体を《治癒魔法》で治してから進む事にした


7層目

「フッ…どうした、ひどい身体だぞ?」

次の層では一本の槍を持った、見てわかるレベルで分かりやすい墓守の服を着た死神が扉を背に立っていた

「気にするこたぁないよ、ちょっと強めの風に当たってただけ、上の層まで地面に穴開けて来てる分何一つも苦戦した要素がなかったよ」

死神は「ほぉ?」と俺の右腕を見ていた

「その腕は?」

「ああ、ちょっと作り変えただけだ。直そうと思えば直せるよ?」

俺はそう言いながらゆっくりと近づいていく

消耗がひどいな、とりあえずダメ元で言ってみるか、多分駄目だろうけど

「なあいいだろ?俺はここの上の人から来るなら来いって言われてるんだよ、通してもらえないか?」

そう言うと死神は槍を構えだした

「駄目だ、私は死神といえどハデス様の守人、通すなら全力を以て来るがいい」

デスヨネーしかも典型例の断り方だよこいつ固いなっ!

俺は深く息を吐き、思考を切り替える

「悪いな、俺は今現世で酷く傷ついてすぐなんだぁ……」

目の前の死神から、目の前のへ……

「鬱憤を晴らすなら元凶へ向けたいんだよ、わかる?」

「わからんな、私はここを守る者であって、貴様等罪人を理解する者ではない」

あぁそっかぁ、職業軍人って奴か

「そうかいっ!!」

敵に向けて歩く、死神も矛先を俺に向けたまま立ちはだかる

獲物は槍だけ、さっきの層でそのまま持ってきちゃった鉄塊みてーな大剣が最大限通ずる相手だ

俺は鉄塊を右腕で振るってみると、振った際の衝撃がこの層全体に及んだ

死神はその衝撃に対して何もせず、仁王立ちの構えをして耐え凌ぐ

「すごいねぇ、耐えちゃうんだ」

「守人である以上どんな物にも耐える故、貴殿へ攻める手を使うまでもない」

へぇ、攻めないんだ……ちょっと楽しんでみるかな

「それを驕りっつー物なんだけれどなぁ…良くも悪くもフザけた事言うもんだね」

魔力を全身へ満遍なく通す、そして電流を魔力と共に流れるよう要所要所を組み換える

俺は鉄塊を投げ捨て、左手の指を左手だけで鳴らしながら死神へゆっくり歩く

「ねえ知ってるかい?の話を」

「知らんな、どこの話だ」

「ククク……《硬化》」

少し笑った後、真顔で右腕全体が黒く変色して硬化させる

動作確認すべく指を一本ずつ動かす、そして左腕にも硬化がしっかり適応できてるかの確認をする

左腕も右腕同様に、しっかりと肩から指先までの全てが真っ黒に染まった

「なぁに、ちょっと未来さきの話さ。誰も信じられないもしものお話、ククク……」

死神との距離がなくなり、真っ近くまで顔を睨みつける

死神は睨む俺を見るなり険しい表情見せたが、両手を強く握るだけで何もしてこなかった

「んじゃあ『一発』……」

そう言いながら右腕を振りかざす

殴りかかる瞬間を狙って死神の右足を踏みつけ、左腕で頭部を殴りつける

死神は踏まれた際に視線を下に向けていた為か、俺の拳に反応しきれず何が起こったのかすら分からない様子だった

俺は続けて、死神に左腕だけで何度も殴り続けた

硬化した拳で頭部に直撃、普通の人間なら即死が確定だ。だって脳が弾力のあるプリンみたいに揺れるんだし、痛いどころか意識や視界が大きく揺れるだろう

死神とて例外ではない……と理解できたのは1番最初の、ラウと会う所からだった

しかし、それだけでは他の死神は骨だけで動いてるかもと思う、だからわざわざこんな事をしてまで層をまともに攻略しなかったのはこれが理由だ

だから、あえて避けた。つーか地形ごと無視して突っ込んだ

いやだって、相手は死神だろ?まともにってりゃ魂ごと俺の身体は疲弊する、そして途中で魂を刈る事に特化した死神に遭遇されたら、それこそ即終了ジ・エンド

だが試練の内容はこうだ『俺の所に来い』だけ、来るだけなら戦闘自体そもそもせんでいい訳だ。

だから無視した、まともに戦ったら下手すると取り返しのつかない事態になりかねないからな。

そんな視聴者と読者向けの説明をしている内に、死神は上半身をふらふらと揺らしていた、下半身は俺が踏んづけて固定させてたからピクリとも動かせなかったがな

俺は足をどけてから左腕で死神の胸ぐらを掴み上げ

「次そんな舐めプフザけたことしたらこれ以上の痛みを与えるからな?」

そう言ってからそこら辺に投げ捨てた

投げ捨てられた死神は、体を少しピクつかせるだけで何もしてこなかった

あーあ、こりゃ脳に十分キテるな?つい最近なったばっかりの死体のようにピクピク動いちゃって

「あー…やりすぎたなこりゃ、ごめんなさい」

そう言って彼が守っていた扉を開けて進んだ


8層目(社長室)

扉の先はクッソ狭い螺旋階段が続いていた

俺はその階段を下ると、その先に木製の扉があった

その扉はあまりにも見覚えがあるデザインをしており、しっかり鉄製のドアノブまで付いていた

「…………」

俺はドアを開ける前にノックを行う

ドアの先で「どうぞ」と聞こえた。

やっぱりここも、天界と同様に使われてんのか……

「調子狂うなぁ…」

頭を掻きながらしっかり「失礼します」と言って扉を開ける

部屋の奥で白いシャツを着た者が俺に向けて拍手していた

「流石だな、私が言ったことをしっかり理解した上で本当に来た人は初めてだ」

「ならなんでわざわざそんな遠回りな事をやらせた?」

そう言って右手を鳴らす

「まあ落ち着け、そんな物騒な腕を見せてりゃあ言いたいことも言えないよ」

彼はそう言いながら自らの机の下にしゃがむと、冷蔵庫を開ける音が聞こえた

何かを取り出すとすぐに閉める音が聞こえ、立ち上がると2本の瓶とコップを片手づつ持っていた

瓶の中身はコーラが入っている

「ちょっと話そうぜ?」

そう、彼が冥界ここの社長『ハデス』ゼウスの親友にして、ライバル(多分)だ

俺は奴の言う通りに右腕を元に戻し、ソファに座った

「(正直戻す時の痛みまだ慣れてないんだよな……)」

ハデスも俺の前のソファーに座り、コップを渡してから瓶と栓抜きをテーブルに置いた

「それで、私に要件とは?」

俺はコップを置き、栓抜きと瓶を取る

「ちょっと地上で気になる事が起こってよ、専門家かそれに近い人に意見を聞きたい」

瓶の栓を取り、栓抜きをハデスに渡す

「そう言う事か、その辺りの話をする前に少し世間話……」

ハデスは栓抜きを受け取り、瓶の栓を取る

そして互いのコップにコーラを注ぐ

「そちらの世界の話を聞きたいんだがいいかい?」

ハデスがそう言うと、席を立って近くの棚から箱を取り出した

全部が厚紙で出来た箱、お菓子とかの箱と対して変わらなかった

俺がゆっくりと頷くと、彼は箱を開けて中にあるクッキーを山のように置いた

「と言っても大したものじゃない、平和の名の下に睨み合う、冷たい平和だよ」

クッキーを1つ頬張る、意外とおいしい

「これうまいな、何処の奴だ?」

「ここの一層目に料理を趣味にした担当がいてね、他の層からも評判がいいと聞いて貰ったんだ」

ラウから貰ったなんて意外、ここの社長はやけにアクティブだな

「そうか、こっちの世界もこんな奴がいりゃあ良かったんだがな……」

そう言ってコーラを飲み干し、またコップに注ぐ

「お前だって変わればいいじゃないか、世界だって見方によって変わるんだろ?」

ハデスはクッキーを食いながら言う

……正直、あいつの言う通りだ。俺も変われば、もしかしたらあの世の中を好きになれるかもしれない……だがな

「それはお前が俯瞰的に見てるのが世界だけだから言えることだろ?」

そうだ、あいつは『人間』を見ていない、『人間』と言う地球上で最も恐ろしい存在の事を知らない

「見方を変えて世界が良く見えても、人間はそうはいかない。言ったろ?こっちのは睨み合って成り立つ平和だって、ちょっとでも国家間で喧嘩を売ってしまえば、世界が巻き込まれるんだよ?」

俺は嘲笑気味に語った

ハデスは俺の言った事の意味を解ったのか、真剣に語る

「そうか、お前はそんな世界で生きてきたのか……生きづらかったろ?」

「ああ、中学に入る頃には慣れたがな」

俺はコップのコーラを全て飲み干す

「ハデス、お前は人間がどこまで凶暴な生物かを知らない。あらゆる方法で世の中を平和にしたって、その下に生きる人間はどうでもいいと思ってるだけなんだよ」

俺はソファから立ち上がり、奥の机の前に立って足を上げ、そしてすぐに上げた足を振り下ろす《かかと落とし》を行い、机だけを壊す

「俺はな、そんな平和に苛立って苛立って仕方がなかったんだ」

机の下辺りに冷蔵庫があると思い探してみると、まるで豆腐の形をした冷蔵庫が置かれていた

「その為に、人間を全て殺めたと?」

「うん」

ハデスからの問いかけに答えながら、冷蔵庫の中にあったコーラ瓶を彼に投げ渡す

「だってそうだろ?どんなに永く生きようが生物は必ず死ぬし、どんなに完璧でも永遠でいられる物は存在すらできない。どんなものであれ最後には確実な死が待っている」

もう一本の瓶を持って、ソファーに座り込む

ハデスは栓抜きを渡そうとするがあえて断り、親指だけで栓を抜く

「それが、お前の人生の指標か」

「いんや?」


「―――これが、世の中の真実だよ」


そう、死ぬ時は死ぬ、滅ぶ時は滅ぶ、そういう世の中の摂理を俺は肌で感じ取って理解してしまった

ならどうするか、滅ぶのを分かってるならなぜ生きようとするのか、そりゃ当然「死にたくないから」だろ?死にたくないからだろ?

「俺が見る限りでも皆どうでもよさげな顔で死にたくない死にたくないと喚いているんだ、そりゃ思うに決まってるだろ」

俺は瓶をラッパ飲みで飲み干す

「おい、それは早とちりすぎじゃ……」

「早とちり?早とちりだと?」

ハデスの胸ぐらを掴む

「俺がこの世界に呼ばれたのも、世界が早とちりしたとかでも言うつもりか貴様!!」

「っ!?」

俺はハデスを掴み上げ、地面に叩きつける

「お前は…人の痛みを知らない愚者だ」

俺は《生成》を行い、右手に《リボルバー》を作り出してハンマーを上げる

「だがお前はこう言ってしまった、早とちりと」

彼の右腕を踏んで固定し、銃口を右肩に向けて発砲した

反動で右腕が大きく上がったが、もうそんなことはどうでもいい

「ぐあっ!!」

「なぁハデス、俺こう見えて物事を深く気にしちまうんだよ、でもこうも思ってる『世の中に意味のないものはない』と、『全てに意味があるんだ』と」

そう言いリボルバーのハンマーを上げる

ハデスは、痛みに悶えながら俺に視線を向ける

「だからな、早とちりって言ってしまったのは早計だったな、『俺がこの世界に呼ばれた意味はない』って遠巻きに言ったようなものだし」

「かと言って、俺はお前に対してそう言ったつもりじゃ……」

「へぇ……」

ハデスの左肩に撃ち込む、ハデスは更に痛みに悶えて転がった

「これすごいでしょ?こっちじゃ十分古い方だけど、そっちじゃ十分最新鋭だ」

あ、そうだ、聞きたい事があるんだった、このまま聞かないで拷問してもいいんだが……3発目をホローポイントに変換しかえてから聞くか

「そう言えば聞きそびれてた事が1つ、ちょっと質問いいかい?」

シリンダーを横に出し、中にある弾丸を1個だけ取り出して魔力を込める

「何を聞くつもりだ……」

「何、君達から見れば常識的な質問だよ」

言いながら《変換》し終わった弾丸を込め、シリンダーをフレームに戻す

「なあ、人間って死んだら魂が出るだろ?」

「ああ、そこはこちらでは常識だ」

「じゃあ……」

次に俺が言った言葉で、ハデスは目を見開いた


魂がなくなっているの、どうゆう状態でできる?」


「は……?」

「いやだから、死ぬ前……」

「違う、違うって!」

そして意外な返答が来た


「その事例、初めて聞いたぞ」


………確信した、これは神々ですら対処ができない案件やつだ、そして俺をここへ呼んだのはって事も

「実は、現世でこんな事が起こってな……」

そして俺は、地上で何が起こったのかを余さず話した、ハデスの傷を治さずに

「そうか、地上はそこまで……」

ハデスは事情を聞いて憂いていた

「この状態の事で、君の意見を聞きたい」

その問いに対して、ハデスはこんな状態でもしっかり考え込んだ


………………


時間が経ち、ハデスは考える限りに思考を張り巡らせた

「……私が言えるのは憶測でしかない、鵜呑みにはできないぞ」

「いいさ、多くの可能性の中から手繰り寄せるのは慣れている」

「そうか、ならば結論から……」

ハデスは俺の目を見て話す、ここで嘘をつくのは流石にないだろう

あの手の人間(?)は言い方は自由だが、約束は守る。約束を守った者に対してしっかり答える、絶対に嘘は吐かない

しかも最初の会話で聞いた感じだと周辺への確認をするためにわざわざ自ら様子を見る程の運動会系アクティブだ、前の層で一歩も動かずに守り続けたあいつがいい証拠になる

「しかしいいのか?もしこの憶測が事実だったら、お前は想像を絶する苦しみを負う事になるんだぞ」

……

「もしかしたら大切な物を多く失ってもおかしくないのだぞ?」

…………

「取り返しのつかない事になったら、君とて元の世界に帰ってくる事さえも……」

…………………


答えは1つしかない……これしかないと理解するのが苦しいほどに、もう立ち止まるのも引き下がるのも、何なら――――


ゆっくり息を吐き、哀しい顔でハデスに向ける

「言ってくれ……もう他者の痛みも苦しみも見たくないんだ」

俺の表情に何かを察したのか、彼は少しの間を開けてから、覚悟を決めて話した

「君の言う出来事には、俺達神々が手を出すことさえできない要素がある!!」

知ってる

「特に彼女が死んだタイミング、あれは誰も干渉すらできない、そこは私でも分かる」

ああ、そこも知ってるよ……実際に確かめたからな

「だがおかしいのは……」

「何故『彼女が死ぬ事だけはどんなに変えても変わらないのか』だろ?」

ハデスは、食い気味に言われても尚説明を続けた

「そうだ、特に確定した出来事を変えたのにも関わらず死んだ事がおかしい、お前が話した『彼女が来る前に魔王を倒した』で起こったのなら尚更だ」

そこだよ、なんでそうなったのかがおかしいんだ、何で死ぬ運命を避けた先で今度は抜け殻になったのも

「そこで私の意見だが、今回の出来事に我ら以上の存在の干渉による死だと思ってる」

まぁ……地上での出来事を何度思い返しても、結論がそこについてしまう、ありえないの分かってるのに

「私達神々は人間に対して、運命を操ったり奇跡を起こしたりとできるのだが……今回の場合どんなに奇跡を起こしても、まるで根っこから抜き取られたかの様に効かないと思う」

って事は俺の憶測は正解しているのか……なぁーんでいつも事が回るんだろうな

そして、憶測が……

「まるでループする現在いまが、過去と噛み合っていないから?」

俺が結論を言うと、ハデスは驚いた表情を見せて答える

「何故分かった!?」

「1回メイドレスの家に不法侵入した忍び込んだ時にな、日記を見つけたんだ」

あの家に来た時、何かあるか確かめに探ってみたら何故か二重底にされていた引き出しを見つけた

一見すると何もないただの引き出しだったのだが、机の真ん中に羽ペンが突き刺さっていて違和感を感じた

そして違和感の正体はあっけなく見つかった。

あの家の大家に聞くとこんな事を言っていた


「(あの子、ペンを使う程他の人に手紙とかは送ったりしませんよ?礼があるといつも自分から来て感謝とかしてますし)」


だから板に触れてすぐに理解した(ああ、二重底か)と……

そして羽ペンの仕様に気づき、ようやく日記とご対面って所だ

「その日記、先代勇者『リリィ・メイドレス』が書き記した物だったのだが、あるページの内容で色々考えさせられるとは思わなかったよ」

この日記が記されていた日時はちょうど10年前、先代が魔王討伐へ征ってから3日後の事だった

ハデスは息を飲む

「それで……その内容は?」

「それがこうだったのさ」

そして俺の口から語られる内容に、ハデスは驚きを隠せずにいる事になった

俺は息を整え日記の内容を語った


「『家族が死んだ、私が魔王城へ急いでいる影で、王国に奇襲をかけようと魔物が密かに進めていた際に、私の実家がある村がその侵攻に巻き込まれて……』」


「……は?」

ハデスは驚きを隠せず、仰向けのまま息が苦しむように口を震わせていた

おーおーすっげぇ驚いてる、神様のビックリ顔なんて一切見れねぇんじゃねぇかと思ったが、まさかこんなところでお目にかかれるとは

「おい、どう言う事だ?死んでた?今生きている彼女が過去で……?」

彼はこの事実に混乱したのか、目がすごい速さで泳いでいた

「訂正、明確には『死んでた人が何故か現在にいる』だ」

そう、今の疑問の着眼点はそこだ

『現在生きている少女は、実は過去で死んでいた』のではなく『過去に死んだ少女が、何故か現在で生きている』のだ。

時間の干渉等は天界で確認させたが、結果『該当なし』って当然のように言われた

過去干渉自体何も触れられてないって事は、過去と現在の歯車が変な噛み合わせで回ってしまっているとしか思えなかった、頭をうまく回してもそれしか結果を見つけられなかった

「誰がやったか知らんが、過去干渉を前提とされた現在いまが予めある状態で時間が進んでいたって事になる、神々おまえら時間に耐性は?」

「時間を止められてもある程度は動かせれるが、過去を触れられるとなると耐性以前だぞ」

やっぱそっか……まぁ過去だもんね、過去そこだけいじればノーリスクの記憶改ざんできるし、耐性以前ですよな

「やっぱり?神様でも過去を変えられたらどうしょうもない?」

ハデスはキッパリと「ない!!」と答えた

やっぱり神様じゃ出来ないか、過去改変自体に耐性は無意味と言ってるようなもんだし、どっちにしろ根源はアレだけか……

「そう……」


ならばこれしかないと即座に理解した


俺はハデスの右太ももを撃ち抜く

太ももに弾丸が入る瞬間、内側から押されるように広がる

「ああああああああああああっ!」

そんな状態に対し彼は叫び声を上げ、激痛に悶えた

「ぐぅっ……な、な…ぜ…?」

俺は痛みに悶える彼を見下しながら答える

「お前と話していい意見が貰えたよ、本っ当に憶測通りになるとは思わなかったが、まぁ別に俺の目的が変わるわけではない」

あくまでここに来たのは、自分の憶測がどこまで合ってるのかを聞くだけ。憶測が確信に変わった時点で俺の目的は定まった

「もく……てきだと?」

「そうだ、俺はな……」

後はただその役割を最後まで全うすればいい、例え全世界から完治不可の病巣のように言われようとも

俺は懐から黄色い缶を《生成》しながら言う


「『人類おまえら厄災てき』だよ、バァーカ」


そう言って缶に付いていたピンを抜き、レバーを外してハデスの腹へ投げる

缶は煙のようなものを吹き出し、吹き出す部分がちょうど彼の顔へ当たる

「……っ!?あがぁぁぁぁぁっ!」

彼は煙を吸うと、豹変するようにさらに悶えだした

「《ガスグレネード》……こいつの毒ガスは空気より重いから、君にとって想像以上の激痛の体験が出来るね」

「ぐぁっ………がァァァァっ!」

ハデスは俺の言葉を聞こえているのかわからないくらい痛んでいた

彼の腹を踏んづけて言う

「聞こえてるなら聞くだけでいいぜ?俺ぁ神って奴がどうしても気に入らなかったんだ」

腹を深く踏んでは脇腹を蹴る

「お前のような、死んだ後でも魂を縛る野郎は特に気に入らないんだよ」

しゃがんでハデスの頭を掴んでこちらへ向ける

「だから俺は、やるつもりだったんだ」

彼は俺の顔を見るなり、痛みよりも恐怖を抱いた表情を見せる

「痛みと死魂を司る者よ、一生を以てして苦しめ」

そう言って手を離し、部屋を後にした


入口前

部屋から出た後、あいつに対して念を入れて扉を施錠し、ガスが漏れそうな所をガムテープで塞いだ

「これでよしっと、後は……」


「残った生物をおくってやらなくちゃな……」


俺はこの後、全ての生体物を文字通り一人残さず殲滅し、ループを任意で発動させた

ここから俺の永い……とても永い戦いがやっと始まった


「あんな事さえ……あんな事さえ起こらなければ…」


俺を知るにはこれからもっと知らなければならない。

意味も自由も、全て現世に置いてきた

夢も未来も、ここに来る前に全て置いてきた

今の俺は、ただの人間ひとでなし


Return to rootF

続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る