8-2
お前が信じるものと
直の話を聞いた。
あの時ヒロが何をしていたのかも知った、そして俺はアイツの行動に疑問を抱いていたが、マリーの方へ向くと何故か涙を流していた
「「マリー!?」」
どうやら彼女本人も涙を流しているのに気づいてなかったようだ
「えっ……あれ?」
俺は何か拭くものがないか自身を探ってみる
えっと拭くもの拭くもの……あっ
ちょうどズボンの後ろ辺りの右ポケットにポケットティッシュがあった
ポケットティッシュには何かの紙が入っていたが、今はそれどころではなく、彼女に渡した
……………
マリーは涙を拭い鼻をかんでいると直は立ち上がる
「悪い、俺まだ予定があるから、話はまた後でな」
そう言って後ろに振り返ろうとする時、マリーは何かと気になって直に問いかけた
「あの、直さん」
「直でいい」
マリーの呼びかけに直は止まる
「直は今、何をしているの?」
その質問に直は一瞬だけ、本当にほんの一瞬だけ間を開けてから答えた
「ここでの情報では掴めない、国が隠蔽した情報の真偽を確かめるための斥候……わかりやすく言えば、確認と調査を仕事にしている」
俺は「つまり情報の辻褄合わせか」と言い、直はそれに答えるように左手の人差し指と親指を立ててこちらに指差す
「あぁ、だからトラディスにいたんですね」
直は「ああ」と頷きつつ、懐からメモを取り出して何かを書き出す
「今書いているのは、俺が言える最大限の警告だ」
「……?」
あいつから出るって事は……まさかな
直が俺達へ警告を言うってなると、遠回りに俺達がこの世界で必要だと言ってるものだ
そして警告でやってくる者がなんとなく理解できた
………
「ほいっ」
直が書き終えると私へメモの1ページを渡す
受け取って紙の内容を知ると、遺憾し難い表情を見せる
「?」
マリーは困惑し、メモを俺に見せた
「何々……」
青白の腕に気をつけろ、死神が潜んでいる
「何これ?」
警告の内容……だよな?これ
「警告だっつってんだろ、もう行くよ」
そう言って直はこの部屋を後にした
俺達もこの場にいる意味はないと思い、街へ出ることにした
城下街
国王達との会議が終わり、直から話も聞けた
「あいつ、何処で何をやってるんだか……」
とりあえず、今の俺らの状態がどういったものなのかは分かったが……どこをどう考えても本人に聞かなきゃいけない所で止まってしまう、どっかで偶然会う事が起きればいいんだが
「私達の記憶を消してまで何かをしようとしてるのは何となくわかるんだけどね……」
その辺り俺らが重要人物って所を自覚してないの、まじで草生えそうなんですがねぇ
彼女はそう言い街の店を見た
その時、店の窓の反射から俺達を見ている『何か』がいた
ボロボロのマントに全身を包んでいて全容は見えないが、俺達に向いていると言う事実に何か違和感を感じていた
そしてマントの人が右腕を私達へ差すように伸ばすと、目に映ったのは
青白の腕っ!!やべっ!
「マリー!危ねえっ!」
俺は咄嗟にマリー抱き付きながら近くの店に入ると、ガントレットから爆発のような音と、小さい何かがすごい速さで飛んでくる音が同時に、且つ連続で響いた
「(マキナ、これって!)」
「(しっ!今は黙った方がいい!)」
そんな長く連続した音が鳴り響いている中、マリーは抱きつかれたまま店の中に何かないか見渡していた
「(これなら……っ!)」
彼女は突然這うように向こうの棚へ移動する
「(おいっマリー!)」
彼女を止めようとするも、マリーが向かう先の棚を見て動きを止めた
よく見ると棚の上にあるポーションに『火気厳禁』と書かれた紙が貼られていた
彼女はすかさず目的のポーションに手を取ると、鳴り響いていた音が突然止まった
「……銃声が止まった?」
窓から様子を見てみると、マントであんまし見えないが腰からバレットベルトを取り出していたのは見えた
俺はすかさずマリーに手をこまねく
彼女が俺の所へ来ると窓の外に指差すと、彼女は窓の端から覗いて彼を見た
「マキナ、あれってもしかして……」
「ああ、多分弾として使ってんの魔力じゃない」
更に言えばバレットベルトを使ってまで発砲してるから、恐らく回転式の連射機構にしてるのだろう
表面だけでもいい、装甲さえ歪ませれば……
そこまで考えついた時、彼女の手にあるポーションに目が行った
(爆煙……後は彼女の動き次第か!)
彼女がこのポーションを投げ込んで、その隙に俺との挟み撃ちの形を作る
マリーは、俺でも見える様にポーションを見せてきたので頷く
「(お前は向かい側に行け、俺はドアを囮に使う)」
彼女はそれを聞いてなるべく音を立てずに窓端の向かい側へ移る
お互いの準備が整うと、俺はドアを強く叩いて開ける
マントの人はそれに早く気づいてガントレットを向けて少しだけ発砲する
「(今っ!)」
マリーは窓からマントの人へ向けてポーションを投げつける
マントの人はドアに気づいたのと同じ反応速度で腕だけポーションに向けて発砲する
ポーションは空中で割れ、中身が出てくるのと同時に爆発を起こす
「……っ!」
マントの人は爆煙で見えなくなったのか発砲を止める
彼女はその瞬間を逃さず窓から身を乗り出し、爆煙の中へ走ると……
「こいつっ!」
マントの人の声と共に発砲音がした
「右だとっ!?ちいっ……!」
どうにか後ろを突けれたようだ
煙が晴れると、マントの人が銃口を彼女に向けていた
「おらぁっ!」
俺はお店の扉を引っこ抜き、マントの人へ投げ飛ばした
「何と!?」
マントの人は振り向き様右腕で防ぎ、捌くように逸した
「マリー、大丈夫か!」
マリーはゆっくりと立ち上がる
「うん、でも挟み撃ちにはできたっ!」
マントの人は、右腕で防いだ際に歪んだガントレットを見ている
「お前、何故こんな事をする!」
問いかけても、マントの人は何も言わずガントレットを見せびらかすように出したままにする
答えは出さないのは何となく分かってた……どうせわかっててこんな騒ぎを起こしたんだろうし、全くこいつは……
彼女を見ると背後から羽交い絞めをしようしてるのかゆっくりと近づいていた
「
俺はそう言いながら、彼女の立ち回りに合わせるようにゆっくりと近寄る
マントの人は何も言わずその場で留まっている
何もしないのがあまりにも怪しすぎる……カウンター狙いなら動いたら負けだが、彼女がそろそろ走り出しそうになってる。こいつぁ……まずいな?
そして、予想通り彼女は走り出した
俺は走り出したのを見て同じ様に走る
恐らく彼女はあいつだとまだ理解できてない、だからこんな勇敢な行動に走れる。だが駄目なんだ、
最も、こっちも現状の彼に勝てる要素はミリも感じちゃいない、恐らく向こうから来たのは戯れに近い行動だろう
この戯れを終わらせるには、俺達が行動できない状態になる事
……そうと解かりゃあなぁ!!
マントの人は歪んだガントレットを俺に向けると、突然装甲が爆発した
やっぱりパージして俺に放つよな!
歪んでいた装甲がこちら目掛けて飛んでいく
「チィッ!」
俺は咄嗟に右腕で払い、拳を腰にまで下げる
「(足首を動かさずホバー移動のように、且つ一瞬で間合いに!)」
そう思い、彼の脇腹を狙って急速に近づこうとしたら……
「……っ!」
突然目の前に脇腹を抱えて倒れていく自分の姿が見えた
俺は咄嗟に急停止をして足で反動を止める
彼女の方を見ると、彼を捕まえられる一歩手前で飛び込むも、マントだけしか掴めなかった。そりゃそうよ
彼女から見りゃ突然マントだけになって頭ハテナしてるだろう
多分ミスディレクションの用途でやったんだろうが、掴まれるほんの一瞬に身をかがみ、服の内側のポケットからナイフを取り出してるのが見えた
その結果、右手にナイフを逆手で持って首を差し向けており
……左手には先端にナイフを付けたライフルをこちらの腹部に向けていた
風で大きくなびいていたマントが地面に落ちきると顔が見えてきた
やっぱり、お前しかいないよな
マントが取れて顔がはっきりと見え、その顔に彼女は驚きを隠せずにいた
『御崎・啓』………何故お前が
「何で……?」
マリーは、あまりに衝撃的な事実に頭があ然としていた。
「ねぇ啓……何がどうなってるの?」
今言った事ほぼ無意識に近いな、ここの事情に長らく関わっていたな?
まぁ、それで啓の過去を聞けるかどうかと言えば絶対ノーと言えるが
「教えてよ、何があったの……?」
それを聞いて啓は、何も言わずナイフを下ろした
しかしライフルは下ろさずそのままにしてあるから、何か言うだけか
そう思ってると、予想通り啓は言い出した
「お前に言うことはない」
ああやっぱり殺意を持って……
「と、言いたい所だったがな」
「?」
持って……?
「いやぁ、あんな事になるもんだからちょっと様子を見に来たら……」
啓はそう言いながら構えを解き、マリーを指差す
「君を見かけちゃってよぉ……」
「あ?へ?ちょっ……えっ?」
彼女は啓の突然の行動と言動に反応できずにポカンとしていた、そりゃそうだ、俺も同じ気持ちだ
「そんでちょーっとちょっかいかけようとしたらこれだ、お前ら魔術禁止縛りしてんじゃないんだからもっと使えよ使えよ!!5本の指先から炎を同時に放ったりとかさ!」
ちょっ……まっ……えっ?
啓からあまりにも軽すぎる空気を感じて感覚がおかしくなってた所で、直の声が聞こえてきた
「おーい!大丈夫かーっ!」
その声を聞いてやっと我に返り、マリーは振り返って問いただす
「あの、直さん?これは一体……」
俺も事情を聞こうとしたが、啓が突然動き出したからそっちに意識が向いていた
店の看板近くに落ちてた、俺が凹ました装甲を拾い上げ悔しそうに見ていた
「あちゃー綺麗に歪んじゃってら」
「そこまで大事だったかい?」
問いかけると啓は装甲をこちらへ投げてきた
キャッチすると、装甲のずっしりとした重みを感じる
「大事じゃないけどさ、整備……それ以上に修理が大変でさ」
ああなるほど、要は鉄を打ち直すのが面倒と
「なら他ん所に任せるとかは…」
「これ見て修理とかできる人とかいると思う?」
そう言って啓はガントレットを見せる
外の装甲が外れた(と言うか外した)ので、中身が丸見えになっている
中を見てみると、外から弾丸を入れる為のスペースや薬莢を排出する為の機構といった、この世界から見たらあまりにも近代的過ぎた
一言に纏めるならガントレットに収めるくらい小さくした《ガトリングガン》だ
ガントレットにこれ詰め込むって、これ相当変態の発想だぜ
「よかった……」
啓の言葉で納得してると、力が抜けたのかマリーが膝をついて安心していた
そんな彼女に啓は近づき手の平を差し出す
「ひさっ……んんっ」
何か言い間違えそうだったのか、咳き込んでから言い直す
「はじめましてだなマリー・メイドレス」
彼女はゆっくり手を差し伸べると啓から握り締める
「それ、何度目だと思ってます?」
「何、そんなのすら忘れたのかよ」
そう言われてキョトンとしていると、微笑みながら答えた
「途中から数えてないから、俺も忘れちまった」
何で忘れてんだよ、ここの当事者だろ
これを聞いたマリーは微笑んで答える
「このやり取り、まだ続きます?」
啓は苦笑するだけで何も答えなかった
こうして俺達は、啓と共に今の状態を見て回る事になるのだが……その前に、俺の内の記憶が掘り当てられた
これから再生しようと思う、俺の記憶じゃないと確信できる、俺が記憶してる以上に苦しいからな
これからを知る君達なら見せていいと思う
俺は今、啓を警戒している。危険人物としてではない、俺個人としてでだ。
この話は人類に……いや、生物として生きた者たちですら畏怖する事であろう……
再生するぞ
始まりが起こしたこの地獄を……
back to the rootE
続く
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