7-1
4日目 玉座の間
マリーとの握手をした時に流れてきた記憶を見て俺は、とても複雑に感じていた
「(何だか、長い道のりが見えた気がする)」
……ただそう思うしかなかった
それは向こうも同じ様に感じているはず
「とっとと戻って来てほしいんだが、いいか?」
突然後ろから国王の声が聞こえて驚いてしまった
マリーも同じく驚いていて、急いで席に座った
俺も立ちっぱにせず、席に座ることにした
「会議を続けるぞ」
そして国王のその言葉で、話し合いは始まった
「まずは、啓の居場所の特定からだ」
そう言ってテーブルにデカイ地図を出した
皆は地図を見てどう行くのか、どうしているのか話し合っていた
そんな中俺は、地図の下敷きになっていた設計書を取って見ていた
成る程、魔力核を四肢ではなく胴体に、首は1回転防止用にホムンクルスの部品で抑えるくらい作り込まれている、まるでロボットの設計図を見てるみたいだ
それ以上に、制作者が異世界人で人間だ、
少なくとも天使側に一人この手の技術を持ってる……
そう関心していると突然マリーの声が聞こえた
「マキナ、危ない!」
「ん?何が……」
マリーの方へ向くと同時に、頭に何かが当たった
当たった箇所に触ってみると白い粉が付いた
粉っぽい固形物……何だチョークか
そう思って当たった箇所から弾道を逆算して向いてみたら、どうやら国王が投げたらしい
国王は設計図を見ていた俺に対して怒りを露にしていた
「お前も設計図見てないで、あいつのいる位置を探さんか!」
俺が「えぇ……」と反応しているとリリィは
「えぇって言わない!こちらは彼に大きい恩と迷惑があるんだから!」
デケェ恩とデケェ迷惑って、あいつ一体彼女らに何やったんだ……とりあえず見てやるか
そう思って地図を見てみた
全体を見てみて《
成る程、東西南北それぞれの地域に大きな国があって、南に雪国の『アンティ』西に砂漠地帯の『イス』東には小さな国々あってその中で大きい国は『トムライ』か、北には島国の『ドラディス』、そして中央に俺らがいる『フロム』、それらの近くに村があってそこらを陸路と海路で経由して物が回ってるって事か
……あれ?何で俺はワールドマップを見ただけでここまで理解してんだ?
ここで今の自分に1つの疑問が浮かんだ
それは『自分はどこまでこの世界を理解しているのか』と言う単純なものだ
地図を見ただけであそこまで把握できてるのは、あの設計図を見て何となく察した
ははぁ……さては啓だな?
そう思わざるを得なかった
「……おいマキナ、何ぼーっとしてる、お前も何か言ったらどうだ」
そう思っていたら国王の言葉で現世に戻された、まだ議論の提唱しかやってないのに
とりあえず何か言っといた方がいいな、また国王がキレて俺に何するかわからんし
「俺的にはようわからん……わからんが」
そう言いながら地図を見ると、何故か海なのに島国の判定が出ている所があった
「この辺り…怪しそうじゃないか?」
判定が出ている所に人差し指を置くと、国王は首を傾げた後、何か思い当たる物があったのか、驚きに変わっていった
「お前……何故そこだと思った」
……本当に何かあるってのか?もしそうなら隠れるのには絶好の場所だぞ、何故か国判定になってる
「いや、何故って言われても……この地図を見た途端国や村が見えてな……」
「《
ああ……この言葉で確信した、どうやらあの時見た俺のステータス、ガチの偽装だと理解した
っすぅ……フーリてめぇ!後で覚えてろ!
俺はどの段階でそう思ったか、それはフーリにステータス確認させてもらった時の違和感と、意識を失う前にフーリからもらった手帳だ
前者はあんな大量の魔物とはいえここまでレベルは上がらないからだ、あっても6~7くらいが精々だろう
後者は、奇襲をかけた後直ぐに見つかったからだ、あくまで手帳に記されていたのは『勇者に追われる事象』であって兵士に追われる事ではない、こいつは
フーリめ……次に実体化した時が最後だ、後でみのむしのように吊るしてくれる
「王様、この辺りには何があるんだ?」
そして国王からヤバい答えが返ってきた
「
何そのロマンみ溢れる名前の……とは言えんな、軍事国だし、拷問じゃ済まないことしてそうだ
「海底の国か、魔法があるくらいだし、普通と思っちまうな」
「そう言いたい所だが……」
と国王が困った表情で答えた
「あそこは、お前が見えてる全ての国ですら認識しずらい、霧のような国なんだ」
マ?海底くらい、余裕で潜れそうなんだが……
「潜ろうとすれば、海底生物に食われるわ、海中では魔術は使えないのに、向こうは遠慮なく連射してくるわで、近寄ることもできん」
国王の言葉で何となく該当しそうな物を考えてみたら、ありそうなのが1つ浮かんだ
《迎撃システム》かぁ……
「軍事国だからな、仕方ない」
なるべく内心を悟られんよう余裕の表情で答えると、国王から想定外の返答がきた
「あいつの兄がいた所なのに、よくあそこからここに来れたよな」
そうかそうか、あいつの兄が……あいつの兄ぃ!?
「なぁ、そいつの名前聞いていいかな?」
国王に聞いてみたら、困惑した表情で答えた
「『御崎・直』10年前に来たもう一人の異世界人だ」
御崎・直だと!バカな……《召喚》で喚ばれるのは1体だけだろ!?何で!
国王は焦った俺を見て今にも「やっぱり」と言いそうな顔で答える
「困惑するのも訳ないだろう、何せあいつは天界で無双したのが原因で、抑止の為に喚ぶことにしたらしいんだ」
うっわうっわぁ……あいつマジで何してんだよ、こんな厄介な問題を残しやがって!
「天界に殴り込みて……ホントあいつは……」
「ああ、本当に……」
「「あの面倒な奴は……っ!!」」
そう国王と二人で言って、マリー達は置いてけぼりをくらっていた
その中でマリーからの質問が出てきた
「ねぇ、その直って人は今どこに?」
質問を言い終わる前に扉が開く音が聞こえた
「遠征終わったぞー」
その声と共にここへ入ってくる人が3人、最初に入ってきた人は長身で、ショートの黒髪をした男性だった
すごいな、180くらいいってるか?
「完了しました」
もう一人は水髪のロングの女性で、入ってきて早々敬礼しだした、しかし……
こいつ、両腕が機械でできているのか……よく見ると両足も同じみたいだ
「たっだいまーっ!」
最後に来た人は、二人を見ると比較的背が小さい、帽子で深々と被っていて性別がわからない……それ以上に持ってる本がおかしい
どう思えばいいんだろうか……厄災っぽいっつーか、
そう考えていると国王から口を開いた
「直か、どうだった?」
国王がそう聞くと黒髪の男性が答える
「あの
そう言って直はテーブルに設計書らしき紙束を敷いた
見た限り鎧の設計書のようで、魔力で人体を強化し、重量による速度低下を減らすようだが……
啓め、こんなのをこちらに渡して何が……
そう考えていると直は国王へ1枚の紙を出す
「何だそれは?」
「意識を失う前にあいつから言伝てを頼まれた。ソング、お前宛だ」
そう言って紙を置き、国王がその紙に触れると、光と共に啓が映像として現れた
「ハロー、この紙がソングん所に渡ったって事は、設計図も無事に届けられたみたいだな」
「啓っ!?」
啓、お前が……
マリーは驚き、その周りは映像を見て睨んでいた
「このメッセージでちょっと挨拶くらいはしようと思ったが、今トラディスは内戦中でな」
よく聞いてみると小さい爆発音、いやこれは発砲音か、そんな中でメッセージを作っていた事がわかる
「この設計図は、ここの若者が血反吐吐いてまで作った代物で、作れれば俺に勝てる見込みが出てくるんじゃないかな?って旨を伝えようとしたんだが……」
困惑した顔で頬をかいて言う
「ちょっとした不備が見つかったんで、アトランティスに行って再設計をする時間をくれ、その間だけはお前らに干渉しないと約束する、本品は渡しとくからその間だけでも……な?」
そう言って映像は切れた
これ、試作とはいえ最新の装備なんだな
「なぁ王様」
「ソングでいい、何だ?」
設計図を持ってソングに伝える
「これ、作る?」
俺の言葉で会議は中断して、皆で開発室に行くことになった
王城 開発室
この城には開発室という武器の開発や技術の発展等の作業をする部屋があり、昔はいっぱい技士さんがいたらしいんだが、10年前の戦いが終わった後にやめた人が多く、今は4~5人が残った
入ってみたら油や鉄臭い臭いはなく、むしろ綺麗に掃除されていて、武器の開発をするような部屋とは思えなかった
「これを?今作んの?」
俺がここに来たときには、国王が開発室の技士に設計図を渡して頼んでいた
「仮組みでもいい、作ってくれないか?」
その言葉に技術士は苦い顔をして設計図を見ると、何かを見つけたのか目を見開いてから国王を見た
「……仮組みでいいんだな?」
「ああ、頼む」
国王の言葉で技士は設計図を持って隣の部屋に入り、少しの暇ができた
その間、俺達は装備の仮組みが完成するまでのんびり
時間が経ち、隣の部屋から技士が出てきた
「できたぞ、入れ」
そう言われて俺達は部屋へ入った
作業室
部屋に入ってすぐに防具立てに目が入った
この作り……従来の防具とは
「この出来、あいつが俺らに渡すのも頷けるな」
全体的に角々しいが、見てわかる要素として、胴体が従来の防具とは形状が違う。プレートアーマーのような流線形とは異なってひし形の箱のような形状になっている
右肩に『ショルダーシールド』を着けて防御を高めている。しかも接続箇所は腕ではなく肩に着いているから、振り向き様に盾で防げれる様工夫を施されている
両足は、魔力を注げば多少は浮けるのだろうか、足先にいくにつれて装甲がスカートのような広がり方をしている
両腕はよく動かす箇所だから、関節部で相当苦労したような痕が見えそうな作り込みだ
……とまぁ、自分なりに仮組みの全体を見てよく分かった事が1つ
これ、どっからどう見ても宇宙で争ってそうなデザインだよな……完全にモビル的なスーツだよこれ、シールドにクローとか仕込めそうだ……直が1番に考えそうだけど
「なぁ技士さん、この盾にクロー仕込められないか?」
やっぱりな、考えていたら開口一番言い出しやがったよ!
「出来なくはない、だが作る理由が浮かばん」
それを聞いて直は「そうか」と言って萎えていた
「仮組とはいえ、作り込みがすごいな」
「ああ、もしこれが実用化されて量産されれば作り様によっては世界が大きく変わるぞ」
俺は「マジか」と思わず言うが、技士さんを見ると一筋の汗が流れたのが見えた
恐らく技士の言うことは事実なのだろう、俺もこんなのを作れたらどうなるものか……
「(そう言えばフーリから貰った加護って確か武具に……試してみるか)」
そう思って仮組みの装備に触れ、《心象武具生成》を使ってみた
――――《心象武具生成》…………起動
接触武具確認……『魔導鎧』
仮組みとはいえやっぱ出来るか、流石加護だ
一旦装備から手を離し、自身の両手を見てから試みる
「《装備複製》開始」
そう言うと魔力が首以外の全身に包み込む
「ちょっ……おい君、何してる!」
後ろで技士さんが叫んでいるが、別にいいや
「(体を包んでいる魔力を練るように形作り、鉄のイメージと鉄を溶かすイメージを同時に行って、そして自前の魔力で従来の鉄よりも凝固に!)」
そう思いながら魔力を操っていくと、包んでいた魔力の形が変わっていく
「嘘っ、この形は!」
「鎧と同じ形になってる!?」
クーとノープもこの光景に驚いていたのも見えた
そうして魔力を定着していった結果、仮組みの鎧と同じ装備が、俺の体に纏っていた
「精製完了っと……おおっ、何故か体が軽い!動きは……」
そう言って全身をしっかり動かし、動作確認をした
「うん、問題ない。後は啓が言ってた不備が何処なのかだな……」
そう言いながら装備を確認していると、胴体と腕を繋ぐ箇所に変な突っかかりがあった、恐らく不備の部分はそこだろう
「ここか、あいつジョイントの強度問題を言ってたのか……」
ジョイント部分、そこに不備があったまま全力で戦ってたら、間違いなく戦闘中に外れていた
ソングに振り向き、不備の箇所に指差して伝える
「ソング、どうやら不備の部分はここみたい」
国王は俺の行動に驚きもせずに装備の不備を確認し、設計図を見た
「成る程、啓はそこの設計を改めにあの島へ……」
「ふむ、仮組みの意味が分かってよかった」
技士さんも何かに納得してソングと同じ様に設計図を見る
「国王、これを預けてもらっても?」
国王が設計図を渡しながら「出来るのか?」と言うと
「問題箇所が分かれば後は工夫の問題になる、やってみせますよ」
そう言って大きな紙を持ってきては設計図を見ながら紙に模写をしだした
「少し時間が掛かります」
それを聞いてソングは俺に
「おい、そろそろ装備を外したらどうだ?」
と言って俺の肩を掴む
そう言えば外し方どうやるんだろ……
「魔力で出来てるんなら霧散させて外せるくらい出来るだろ?」
「いやこれ複製……」
俺がそう答えると国王は少し固まり「あっ、あぁー……」と何となく納得したような顔をしていた
玉座の間
俺達は玉座の間で会議を再開した
……一応描写的な所がないから言っとくが、あの後装備を外す事は出来たよ
関節部の構成をプラモみてーな着脱可能の部品に変えて着ぐるみのように脱いだよ
「でだ、啓は今アトランティスにいるのは分かったが、あの魔術とは違う海底の島にどうやって侵入するつもりだ?」
そう言いながら国王は会議を続ける前に取ってきたアトランティス内部の見取り図を机に置いて考えていた
「水中だと魔力使えないんだろ?でもあいつの事だ、どうにかする手段くらいはあるんだろう」
見取り図を見ていると国王の言葉にクーが答えた
そりゃそうか、あいつある意味では世界に喧嘩売りに来てるような感じだからなあ
「海中くらい、エラ呼吸とか、吸い込んだ水を空気に変換させる魔術とか使いそうだもんな」
「おいおい、それじゃまるで啓が化け物になってるような言い分だな」
俺がそう言うと時が止まったかの様に部屋の空気が突然冷めた
「……もしかして
その質問にノープが答えた
「ごめんなさい、
答えているものの気まずい表情だった
とりあえず国王に向けて質問してみた
「啓って確か人間で……あってる?」
国王は目を逸らして答えた
「ああ、人間の形
ああくそ……
「啓が人間じゃないなら一体何になってるんだよ」
問いかけると直から答えが返ってきた
「『人外』だそうだ」
「人外……?」
そう言うと直は話を続ける
「人の枠を外れた者、あいつ本人が言ってたんだ。人を超えていないから超人ではなく、人間のままだから怪物でもなく……な」
その後直から聞いた話によると、今の啓は文字通り人間をやめていて、その状態で使えるスキルに《吸血》《変化》《潜行》と、人間ではまともに使えない代物ばかりで笑ったよ
近くで聞いていたマリーもこれには苦笑いだった
「直、啓が人をやめてから何日経った?」
俺は直にそう聞くと直は少し考えてから答えた
「えっと、人間をやめていたのを発覚してからかれこれ2周だな」
……って事はもう4週間も経っているのか、でも2周前で判明したってことは色々進展あったんだな
「こほん、会議……終わらせた方がいいか?」
そう思っているとソングが咳き込む
「まぁあいつがこの設計図を直し終わるまでは手は出せないし、終わらせていいと思う」
俺のこの言葉で会議は再開後即で終わった
……………………
国王達が玉座の間から去り、ここに残ったのは俺と直、そして何故か居続けたマリーがいた
「……残った人から見て何となく言うことはわかるが、とりあえず言ってみろ」
直に言われて俺は聞くことにした
「「直は何を経緯でここに?」」
……偶然マリーと質問が被ったみたいだ
直は「やっぱり」と言って1枚の写真を取り出す
全面フルカラーで、写真にはある一人の女性が軍服を着ていた
「話してやる、今のお前らの状態から見ても知らなければならない物も多い、だから一の所から話してやる」
―――そう……これは終わりの始まりの話、彼の
「こんな始まりになってしまったから俺は、あいつを殺す力を得てしまった、あの軍人に会って、
続く
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