7-2

玉座の間


マキナとの握手をした時に流れてきた記憶を見て私は、とても複雑に感じていた

「(何だか長い道のりが見えた気がする)」

私はただそう思うしかなかった


それは向こうも同じく感じているはず


「…とっとと戻って来てほしいんだが、いいか?」

突然後ろから国王の声が聞こえて驚いてしまった

私は急いで席に座り、会議を聞くことにした

マキナも同じく、席に座ることにしたみたい


「会議を続けるぞ」

そして国王のその言葉で、話し合いは始まった

「まずは、啓の居場所の特定からだ」

そう言ってテーブルに大きな地図を敷く

第一声を放ったのはクーからでした

「あいつ前にトラディス行くとか言ってなかった?」

「でもトラディスに行く前準備の情報集めで内戦起こってるの知ったから別の所へって言った気が……」

次にノープが言うと、お姉ちゃんは言い返す

「あの子って一応『進化は激しい所にある』とか言って争いに突っ込んで心配させてたし、トラディスであってない?」

そこへ私は言った

「啓って優しい人だからね、争いを止めに行ってるとかは?」

「「「「合ってるけどそれはない」」」」

この場にいる人全員に言われた

「(……あれ?1人分の声が足りないような……)」

そう思ってマキナの方へ向くと、マキナは会議を後にして設計図を見ていた

国王もマキナに気づいては、テーブルの下に手を突っ込んで探し、何かに手が届いたのか明るい顔をしてから取り出した

それはチョークだった、国王はダーツを投げるようにマキナに狙いを定めていた

「マキナ、危ない!」

私が声をかけたが遅かった、声をかけた時点でチョークを投げていて……

「ん?何が……」

マキナが私へ向くと同時に、頭に当たった

マキナは当たった箇所に触り、確認の後国王へ向いた

国王は設計図を見ていた彼に対して怒りを露にしていた

「お前も設計図見てないで、あいつのいる位置を探さんか!」

彼が「えぇ……」と反応しているとお姉ちゃんは

「えぇって言わない!こちらは彼に大きい恩と迷惑があるんだから!」

そう言われてマキナは地図を見ることにしたみたい


少し時間が経ち

「……おいマキナ、何ぼーっとしてる、お前も何か言ったらどうだ」

国王の言葉にマキナは

「俺的にはわからん……わからんが」

そう言いつつゆっくりと手を伸ばして

「この辺り怪しそうじゃないか?」

何もない海域に人差し指を置いた、国王は首を傾げた後、何か思い当たる物があったのか、驚きに変わっていった

「お前……何故そこだと思った」

「いや、何故って言われても……この地図を見た途端国や村が見えてな……」

「《フルマップ》か!」

またよく分からないスキルが出てきてる……

「王様、この辺りには何があるんだ?」

マキナがそう言うと国王の口からとんでもない答えが返ってきた

からの情報でやっとわかったが、海底機動軍事国『アトランティス』が……」

アトランティス?聞いたことがない国が出てきた

「海底の国か、魔法があるくらいだし、普通と思っちまうな」

マキナは何となく察したような感覚で言うと

「そう言いたい所だが……」

と国王が困った表情で答えた

「あそこは、お前が見えてる全ての国ですら認識しずらい、霧のような国なんだ。潜ろうとすれば、海底生物に食われるわ、海中では魔術は使えないのに、向こうは遠慮なく連射してくるわで、近寄ることもできん」

そんな無茶苦茶なの相手に生きていた人って何者なんですか!?

そうツッコミをいれようと思ったが言ったら言ったで話が拗れそうになりそうだったので、内にしまっておくことにしました

「軍事国だからな、仕方ない」

マキナが余裕の表情で答えると、国王から想定外の返答がきた

「あいつの兄がいた所なのに、よくあそこからここに来れたよな」

兄……?お兄さんって確か啓の記憶で出てきたけど……もしかして

マキナも同様の考えに至っていたのか、真剣な表情で国王に聞いた

「なぁ、そいつの名前聞いていいかな?」

マキナが国王に問いかけると、困惑した表情で答えた

「『御崎・直』10年前に来たもう一人の異世界人だ」

『御崎・直』……確かに国王の口からその名前が出てきた

10年前にいた啓のお兄さんが何で……?

国王は若干焦っているマキナを見て今にも「やっぱり」と言いそうな顔で答える

「困惑するのも訳ないだろう、何せあいつは啓が天界で無双したのが原因で、抑止の為に喚ぶことにしたらしいんだ」

え?……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?なんで!なんで天使に!?神様大丈夫!?

私は驚きを隠せず、啓がやった事の心配で頭が一杯になっていました

「天界に殴り込みて……ホントあいつは……」

「ああ、本当に……」


「「あの面倒な奴は……っ!!」」


そうマキナと国王は二人で言って、私達は置いてけぼりになっていた

その中で私は1つ質問をしてみた

「ねぇ、その直って人は今どこに?」

質問を言い切る前に扉が開く音が聞こえた

「遠征終わったぞー」

その声と共にここへ入ってくる人が3人、最初に入ってきた人は長身で、ショートの黒髪の男性

大きい……何だかいるだけで守られてるみたいに感じる

「完了しました」

もう一人は水髪のロングの女性で、入ってきて早々敬礼をした

……?両腕が鉄で出来てる、義腕って物なのかな?

「たっだいまーっ!」

最後に来た人は、二人を見ると比較的背が小さく、帽子で深々と被ってはいるから男性か女性かわからず、声も何だか……男のような、女のような……何だか両方に等しい子供がいた

唯一、そんな明るそうな性格なのに、持ってる本から変な感覚に見舞われる

何だろう、少なくともあっちゃいけないと直感が警告を出している……っ

そう考えていると国王から口を開いた

「直か、どうだった?」

そう問いかけると黒髪の男性が答えた

「あのバカはまた姿を眩ましやがった、だが行った先で死にかけた所に助けられて、傍らにこんなの残していきやがった」

そう言って直はテーブルに設計書らしき紙束を敷いた

見る限り鎧の設計書のようで、魔力で人体を強化し、重量による速度低下を減らす内容でした

その後、直は国王へ1枚の紙を出す

「何だそれは?」

「意識を失う前にあいつから言伝てを頼まれた。ソング、お前宛だ」

そう言って紙を置き、国王がその紙に触れると、光と共に啓が映像として現れた

「ハロー、この紙がソングん所に渡ったって事は、設計図も無事に届けられたみたいだな」

「啓っ!?」

私は突然の映像に驚き、その周りは映像を見て睨んでいた

「このメッセージでちょっと挨拶くらいはしようと思ったが、今トラディスは内戦中でな」

よく聞いてみると発砲音が聞こえてくる、そんな中でメッセージを作っていた事がわかる

「この設計図は、ここの若者が血反吐吐いてまで作った代物で、作れれば俺に勝てる見込みが出てくるんじゃないかな?って旨を伝えようとしたんだが……」

そう困惑した顔で頬をかいて言う

「ちょっとした不備が見つかったんで、アトランティスに行って再設計をする時間をくれ、その間だけはお前らに干渉しないと約束する、本品は渡しとくからその間だけでも……な?」

そう言って映像は切れた

「……なぁ王様」

「ソングでいい、何だ?」

マキナは、設計図を持ってソングに伝える

「これ、作る?」


彼の言葉で会議は中断して、皆で開発室に行くことになった


王城 開発室


この城には開発室という武器の開発や技術の発展等の作業をする部屋があり、昔はいっぱい技士さんがいたらしいんだが、10年前の戦いが終わった後にやめた人が多く、今は4~5人が残った

入ってみると油や鉄臭い臭いはなく、むしろ綺麗に掃除されていて、武器の開発をするような部屋とは思えなかった

「おーい、いるかー」

国王が叫ぶと隣の部屋から1人出てきた

服から見て装備を作る職人さんだった

「うい、何だ?」

「これを作ってくれないだろうか」

そう言って国王は職人さんに設計図を渡す

その後やっと追い付いたのか、背後の扉からマキナが入ってきた

「これを?今作んの?」

「仮組みでもいい、作ってくれないか?」

その言葉に職人さんは苦い顔をして設計図を見ると、何かを見つけたのか目を見開いてから国王を見た

「……仮組みでいいんだな?」

「ああ、頼む」

国王の言葉で職人さんは設計図を持って隣の部屋に入って作業を始めた

その間、私達は装備の仮組みが完成するまでのんびり休憩しました


時間が経ち、隣の部屋から職人さんが出てきた

「できたぞ、入れ」

そう言われて私達は部屋へ入った


作業室


部屋に入ってすぐに防具立てに目が入った

マキナが何かに惹かれているのか、ゆっくりと近づく

「この出来、あいつが俺らに渡すのも頷けるな」

確かに出来は良さそうだけど、これでまだ仮組みなんでしょ?実際に作られていたらどうなってたんだろ

そう考えていると直は、技士さんに仮組みの装備に指差して話していた

「なぁ技士さん、この盾にクロー仕込められないか?」

その質問に技士さんは

「出来なくはない、だが作る理由が浮かばん」

と言って首を横に振った

それを聞いて直は「そうか」と言って萎えていた

私はと言うと、装備の設計図を直さんに渡した啓が何でこんなのを持っていってたのか考えていた

そもそもこんな発想はどこから出てきたのか分からなかったのも疑問に思った

そう考えているのも束の間、装備の方へ向くとマキナが装備に触れていた

「《装備複製》開始」

彼がそう言うと魔力がマキナの首以外の全身に包み込む

「ちょっ……おい君、何してる!」

後ろで技士さんが叫ぶ

あれ?この魔術何処かで見たことある気がする、何処だっけ……?

そう考えていると、彼を包んでいた魔力の形が変わっていく

「嘘っ、この形は!」

「鎧と同じ形になってる!?」

クーとノープもこの光景に驚いていたのも見えた

そうして魔力を定着していった結果、仮組みの鎧と同じ装備が、彼の体に纏っていた

「精製完了っと……おおっ、何故か体が軽い!動きは……」

そう言いながら全身を動かし、動作確認をする

「うん、問題ない。後は啓が言ってた不備が何処なのかだな……」

そう言いながら装備を確認していると、胴体と腕を繋ぐ箇所に突っかかる音がした、恐らく不備の部分はそこだろう

「ここか、あいつジョイントの強度問題を言ってたのか……」

ジョイント?また分からない言葉が……

考えているとマキナは国王に近づく

「ソング、どうやら不備の部分はここみたい」

国王はマキナの行動に驚きもせずに装備の不備を確認し、設計図を見た

「成る程、啓はそこの設計を改めにあの島へ……」

「ふむ、仮組みの意味が分かってよかった」

技士さんも何かに納得して王様と同じ様に設計図を見る

「国王、これを預けてもらっても?」

国王が設計図を渡しながら「出来るのか?」と言うと

「問題箇所が分かれば後は工夫の問題になる、やってみせますよ」

そう言って大きな紙を持ってきては設計図を見ながら紙に模写をしだした

「少し時間が掛かります」

それを聞いて王様はマキナに

「おい、そろそろ装備を外したらどうだ?」

そう言って彼の肩を掴む

「魔力で出来てるんなら霧散させて外せるくらい出来るだろ?」

「いやこれ複製……」

彼はそう返されると少し固まり「あっ、あぁー……」と何となく納得したような顔をしていた


玉座の間

私達は玉座の間で会議を再開した


「でだ、啓は今アトランティスにいるのは分かったが、あの魔術とは違う海底の島にどうやって侵入するつもりだ?」

そう言いながら国王は会議を続ける前に取ってきたアトランティス内部の見取り図を机に置いて考えていた

「水中だと魔力使えないんだろ?でもあいつの事だ、どうにかする手段くらいはあるんだろう」

見取り図を見ていると国王の言葉にクーが答えた

「海中くらい、エラ呼吸とか、吸い込んだ水を空気に変換させる魔術とか使いそうだもんな」

クーがそう言うとマキナは茶化すように言う

「おいおい、それじゃまるで啓が化け物になってるような言い分だな」


彼がそう言うと部屋の空気が突然冷えた


マキナはその空気に顔を歪ませ、問いかける

「……もしかして本当マジ?」

その質問にノープが答えた

「ごめんなさい、本当マジです」

答えているものの気まずい表情だった

聞いていた私もこの事に変な汗が出てきていた

その後マキナは国王に向けて質問した

「啓って確か人間で……あってる?」

国王は目を逸らして答える

「ああ、人間の形している」

それって人の皮被ってるだけじゃないですか!と言うのはよしときましょう、多分開き直って返してくると思うし

「啓が人間じゃないなら一体何になってるんだよ」

彼はそう問いかけると直から答えが返ってきた

「『人外』だそうだ」

「人外……?」

そう言うと直は話を続ける

「人の枠を外れた者、あいつ本人が言ってたんだ。人を超えていないから超人ではなく、人間のままだから怪物でもなく……な」

その後直から聞いた話によると、今の啓は文字通り人間をやめていて、その状態で使えるスキルに《吸血》《変化》《潜行》と、人間ではまともに使えない代物ばかりでマキナは笑っていた

流石の私も苦笑いするしかなかった

「直、啓が人をやめてから何日経った?」

マキナが直にそう聞くと、直は少し考えてから答えた

「えっと、人間をやめていたのを発覚してからかれこれ2周だな」

……4週間、その間に彼は何の為にこんな事を……後何で人間をやめているんでしょう……

「こほん、会議……終わらせた方がいいか?」

そう思っていると国王が咳き込む

国王の言葉にマキナが答える

「まぁあいつがこの設計図を直し終わるまでは手は出せないし、終わらせていいと思う」

彼のこの言葉で会議は再開後すぐに終わった


……………………


国王達が玉座の間から去り、ここに残ったのは私と直、そしてマキナがいた

「……残った人から見て何となく言うことはわかるが、とりあえず言ってみろ」

直に言われて私は聞くことにした

「「直は何を経緯でここに?」」

……偶然マキナと質問が被ったみたい

直は「やっぱり」と言って1枚の写真を取り出す

全ての色がついてて、写真にはある一人の女性が軍服を着ていた

「話してやる、今のお前らの状態から見ても知らなければならない物も多い、だから一の所から話してやる」


―――そう……これは終わりの始まりの話、彼の意義いま意思みらい意味かこも、その全てを否定お話


「こんな始まりになってしまったから俺は、あいつを殺す力を得てしまった、あの軍人に会って、海底機動軍事国あんなところの実状を知ったからあいつは……」



続く

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