6-1

国王の話を聞いて夢で見た人が何なのか何となくわかった気がする……でも夢で見たあの表情は、まるで死んでいるようにも見えて……


「死……んだ?」

私にとって国王の一言は衝撃的だった

ヒロが……死んだ?何度も誰かから聞いても死にそうにない人が?

「マリー、涙が……」

「えっ?」

国王に言われて頬辺りを触れると、1滴の涙が指に乗った

どうやら私は、自分が無意識に泣いているみたいだ

「あれ?何でだろう、知らないのに……何で……」

国王は少しの無言の後に「これで涙を拭け」とハンカチを渡す

私はハンカチで涙を拭き、国王に返しながら1つ気になる言葉が脳裏を過る

そう言えば国王ってさっき、ヒロの居場所を探しているみたいな事を……

「あれ?じゃあヒロは……」

「明確には、『人でなくなった』が正しい」

人でなくなった?死んだ訳じゃなくて?

「あいつはマキナを作ってから冥界に殴り込んでいた、しかもループを使ってこの世界にいる生物を何度も殲滅してからな」

「……へっ?」

待って、ヒロが何したって?殲滅?全生物を、何で?

「あのー……何でヒロは生物全てを殺してから冥界に行ったのですか?なるべく優しめに言って貰っても……」

聞いてみたら国王はピタリと止まり、宙に見たことある四角い魔方陣が出てくる

「私も聞いたさ……で、奴はこう言ったよ『有在る物無在りき、地踏む者空を見、理に善悪はなく、星は唯在り続けるのみ』だってさ」

変な言葉……まるで誰かに何かを伝えてるようにも聞こえるけど

「え?そんな言葉、私聞いてないぞ!」

国王の話を聞いていると後ろからクーの声が聞こえた

後ろを振り返ると、机の上にトランプでできた大きな塔が絶妙なバランスで保たれていて、クーは机の上に立って頂上の仕上げに取りかかっていた

横ではお姉ちゃんとノープが静かにクーを応援していた

「そりゃそうだろうな、彼は君から真っ先に殺してたんだからなぁ」

クーが「ぐぬぬ……」と悔しそうな顔をしながらトランプタワーの仕上げを慎重に行っている

「彼女等の暇潰しには気にするな、こちらも向こうもデメリットしかない」

私はタワーを作ってた姉達に引いていたため「は、はい……」と答えるしかありませんでした

「彼は冥界を征服した後に天界に宣戦布告したらしい」

「らしい?もしかしてこの時点で王様は……」

そう聞くと王様は「ああ、死んださ」と答え、魔方陣から1枚の写真を見せた

あの日に見たあの人だ、何故か違うと確信するのが不思議に思えるくらいに

「この人が……」

「ああ、『ミサキ・ヒロ』だ」

彼が……私が記憶を失う前に関わっていた、ミサキ・ヒロその人

何て言うか……写真を見てると安心と憤りが何故か込み上げてくる

「そう言えばリリィ、あいつ今どうしてる?」

王様はそう言って魔方陣を消しながらお姉ちゃんに問いかけた

振り返って見たらトランプタワーが完成していて、クーとノープが激戦を潜り抜けたような顔でいた

「マキナの事?飛ばしてこようか?」

そう言って手から魔方陣を見せる

「どうしてるか聞いてるだけだっつの、飛ばす必要ねーよっ!」

王様そう言いながら机を両手で叩いた。叩いた衝撃で三人の作ったトランプタワーが崩れ、タワーが崩れるのを見た二人が絶望しきった顔をしていたのは、この先の未来でもよく覚えている

「昨日の追撃で重傷負わせておいて、その言葉はないよね?」

そう言ってお姉ちゃんが机を叩きながら立ち上がる

「お?やるか?」

王様が椅子から立ち上がり、魔王に近づく

「一喧嘩やる?私は構わないが」

魔王も王様に近づいて互いに睨み合った

「ちょっ……待って!」

私はすかさず二人の間に割って入る

「お姉ちゃん、そのマキナって人は直ぐここに持ってこれるの?」

言うとお姉ちゃんは少し驚きながら

「まぁ、《転送》でここに来させるから間違ってないかも」

それを聞いて私はすかさず王様に向いて

「王様、この問題はもしかしたらマキナがいないと難しい所があるかもしれません!来させる許可!」

王様はそれを聞いて「えっ!?あ、ちょっ……いいけど……」と焦りつつも答えた

「お姉ちゃん、やって!」

「あ、うん……」

お姉ちゃんは私の指示に従って席から離れ、《転送》を行う

そんなお姉ちゃんの隣に王様も来ると「位置の把握は私がやろう、魔力の出力に集中してくれ」と言ってお姉ちゃんの背中に触れて、触れた箇所から魔力を注ぐ

「(なぁリリィ、彼女は一体どうしたんだ、まるで昔の……)」

「(そうね、昔の頃と全く変わらない、多分誰かに記憶を消されたか、あるいは……)」

「(なら、マキナをここに飛ばすのはきっと正解になるな……後々大きく関わる事になる訳だしな)」

「じゃあ……飛ばすよーーっ!」

そう言って魔力を正面に出すと、透明な球状の何かが現れる、球状の周りには電撃が走っては球状の中から何かが浮かんでくる


「……へっ?」


ヒロと名乗っていたマキナが寝転んだ姿勢で何かを読んでいた

《転送》が終わると、マキナは姿勢をそのままにして地面に落ちた

「あっ!……っ!」

マキナは背中から地面に落ちて痛がりつつ、ゆっくりと立ち上がった

「えっとリリィさん?俺一応重傷負ってるんですが、何ならまだ背中の傷完治しきってないのですが!」

「あっごめーん、私伝えるの後回しにしちゃった☆じゃあ……だめ?」

お姉ちゃんが手を合わせてねだるように言う

それを聞いたマキナは、笑顔で指の一本一本を鳴らしてながら答える

「あははは……駄目に決まってんだろうがあああああああ!」

マキナは魔王目掛けて走り出した

「やめて!今会議中なんだから!」

ノープがそう言ってマキナを正面から抑える

お姉ちゃんは「はわわわ……」と説教を覚悟したような怯え方をして震えていた

「邪魔すんじゃねぇ!」

そう言いながらマキナは頭を大きく上に向いて……

「ぬぅん!」

強烈な頭突きをノープにお見舞いした

頭を強く打ったノープは額から蒸気を出しながらへなへなと倒れていく

「ノープっ!テメエっ!」

ノープが倒れるのを見てたクーは怒りだし、今にも机を飛び越えて殴り込みそうになったその時……

ぁ!」

「っ!」

王様の一声でマキナがピタリと止まった

「この城の中では私だけ絶対権を使えるのをお忘れか、マキナ」

ヒロは止まった状態でも無理矢理動かそうと力を入れるが、力が入る所が少し震えるだけで少しも動かせずにいた

「マキナ、落ち着きたまえ、確かにこの朴念鈍感女に非があるのはわかるが落ち着け」

端で聞いていたお姉ちゃんが不服そうな表情を見せるが、王様は気にせず話す

「君をここに来させたのは彼女の指示だ、文句なら彼女に言ってくれ」

そう言って王様は私に指を指す

マキナは指された方向を向いて私を見ると驚き、足掻くのをやめた

こっちは会議中だから、終わったら席についてくれ」

王様の言葉で体を動かせれるようになったのをマキナは確認してから私に近づく

「お前か、傷を負ってる俺をここに飛ばしたのは」

「貴方こそ、あの日にあんな事をしていては、何をやっていたんですか?」

マキナはため息を吐いてから答える

「質問を質問で返すなぁっ!答えてやるけどさ!」

こうしてマキナから事情を聞きました、私と同じで記憶がない事、自らの戦い方を確かめるためにこの街に潜んでいた魔物を狩り尽くしていた事、そして終わったタイミングで私に見られた事

その全てを聞いて私は、あの日の態度に謝るとマキナは「気にするな、ありゃ初見でもこうなるさ」と答えた

私は質問を返してくれた礼で、向こうの質問に答えた

「貴女をここに呼んだのは私です、こんな重傷だとは知らなかったもので……」

マキナは「気にしないさ」と返してくれた

そして私が知り得る限りの事を全てを話しました

私の話をマキナは何の疑いもなく聞いていました

「そうか、俺はヒロではないかぁ……向こうの日記を読んでてなーんか変に感じてたけど……やっぱそうだったか」

どうやら彼も自分がヒロではないのに薄々感ずいていたみたい

「それでいて本当の名はマキナと……ってなると俺は人間ではないと?」

「うん、そうみたい」

そう言うとマキナは何かを考え込み始めた

「って事は魔術干渉が人間よりも広範囲にいけて……」

「まぁ……これからもよろしくって言った方がいいのかな?」

私はそう言いながら手を差し出す

マキナはそれを見て少しの間が空き

「ああ、そうだな……よろしk……っ!」

そう言って向こうが握手した瞬間、電流がのような感覚が手から流れた

流れた電流から見たことのない記憶や記録が混ざっては、何の雑念もなく頭に入ってくる

マキナもこの電流が伝わって頭に入ってきているのが何となく伝わる

この記憶……もしかしてこれって!



続く

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