5-2
クーの話を聞いたあの日から、私の内で謎の違和感があった、会話の中で悲しみや苦しみを感じていたのに、何か……何かが引っ掛かるの
昼 王城
「えっと……」
昨日の訓練を見てから寮で1日を終えて朝、起きて早々先生に「王があんたを呼んでる」と言われ王城に着いて今へ至る
正直、私は何かしたのかと思って周りを見ていると、見覚えのある二人が奥の休憩所で話していた
「でさー……はははっ」
「ふふふっ……何それー」
何か笑える話をしているのか二人とも笑い合っていた
私はどうゆう事かあの二人を見ていると、自然と心が安らぐような感じがした
「(どうしてだろう、不安になるはずなのにどうして安心なんて……)」
自分でもこの安らぎの理由がわからずに悩んでいると、向こうの二人が私に気づいてその場で声をかけた
「おーい!あいつが起きるまでここで待とうぜ」
「こっちにはお菓子があるからー早い者勝ちですよー」
お菓子の存在で先程の悩みは霧のように消え
「待って、私の分も残しててーっ!」
私は二人のいる休憩所目掛けて走った
向こうの休憩所にはソファーとテーブルがあり、テーブルの上にはお菓子と3人分のカップに紅茶が入っていた
私が着いた時にはお菓子が食べ尽くされたが、直ぐに兵士がお菓子を持って来てテーブルに置いた
「二人とも食べるの早いよ、この子の食べる分なくなっちゃったらどうすんの」
兵士がお菓子を置きながら言うと
クーは「だって美味しいんだもん、なぁ?ノープ」と言ってカップと皿を礼儀正しく持って飲み干し
それを聞いてノープは「私に振らないでよ、美味しいのは否定しないけど」とクッキーを食べながら答えた
「あれ、二人とも見た目とは何か……」
そう言おうとしてノープが掌を見せて止める
「外見とは違う在り方って案外いいものね、お父さんにはやめろって言われているけど」
「こっちは礼儀正しくするのにどれだけ時間かけたと思ってんだ、自由に振る舞えばって言ったの私だけどさ……」
クーがそう言って頬杖をしながら言うとノープは笑ってごまかす
私は思わずにっこりと笑ってこの暖かい空気に当たっていた
わぁ二人が楽しそーでよかったー
……って暖かい目で見てる場合じゃなかった、要件あった!
「そう言えば二人はここに何の用で来たの?」
そう二人に聞いてみたら、私から見たら意外な答えが返ってきた
「えっ、いつものだろ?」
「ええ、いつものですね」
いつもの、そんな言葉が出てきた
毎度ここに来ている……って事でいいのかな?
「いや、いつものだけじゃわからないって……」
私が言うとクーが「そういえば」と今更思い出したかのように言い出し、ノープに耳を貸すように合図を出す
ノープはクーの合図に何の疑いもなく耳を貸し、クーの話を聞いて「あっ!そうだった」と驚いたような表情を見せた
少しの間が空き、ノープは咳き込んでから真剣な顔つきで答えた
「国王との情報共有、まぁ解りやすく言うと作戦会議かな?」
「作戦会議?何の?」
そう聞くとクーが答えた
「そりゃあ、ヒロを倒すための作戦会議さ」
「えっ?」
私はそれを聞いて驚きを隠せずに唖然としていた
クー達は作戦会議の目的を言っては、何故か気まずそうな表情を見せる
それもそうだね、私達がこうしているのはヒロが関わっていたからこそ、その人を倒すのは躊躇するよね
「二人とも……ヒロに関わってたからやっぱり……」
「国王がお呼びです、こちらへ」
私が言い切ろうとする前に兵士がやって来て、後ろの扉に手を向ける
「あっちの準備が終わったみたいだな、行くぞ」
クーがそう言って扉へ入っていく、ノープは私の耳元まで近づいては
「ヒロの目的が問題なの、この会議で聞いてみるとわかるわ」
そう小声で囁いてからクーの後を追うように入っていった
ヒロの目的……?何が理由で……やっぱり聞かないとわからないよね
考えても始まらないと思い扉へ手をかけ、部屋に入った
昼 玉座の間
部屋に入ると先の休憩所よりも広い所へ出た
奥を見ると、王が座りそうな高価そうな物だけで出来た椅子が置かれていて、その手前に伸びるように長いテーブルと側面に大量の椅子が置かれていた
「こっちだ、なるべく近くに座ってくれ」
クーは高価そうな椅子の手前の椅子に座っていた
ノープはそれに対になる位置で座っている
私はクーの席の隣に座って待つと足音が聞こえてきた
「こんな時間にわざわざ来てくれてすまない、流石の私も君達の学習の時間を割きたくないんだが……事情が事情だ、許してくれや」
そう言いながら白黒のチェック柄のスーツを着た高身長の男性が高級そうな椅子に座る
あれが国王……何かちょっとイメージとは違うような、そうでないような……
「別にいいよ、学べる事全部学んちゃったし、何ならやる事のぜーんぶ終わらせたよ」
クーが呆れた声で答えると国王は紙に何かを書き出してから答える
「暇な時間を作ってしまったか、相当な量だったのに?」
「言ったろ?私はやろうと思えば学歴トップを連続で取れるって、トップ取らねぇのは居心地が悪いからって!!」
国王は「ああそうだった」と再認識してからクーに紙を渡す
クーって結構賢かったんだ、ちょっと意外
「『稀代の天才』なんて呼ばれていた者がこれ程とは思えなくてな、認識を改めよう」
クーに渡った紙を横で見てみると、内側の全てが塗りつぶされている5角形があった
「クー、なにそれ?」
「成績表、あんたから見れば初めてかもしれないが、私から見れば嫌と言うほど見てきたよ」
そう言いつつ成績表を私に見せてくれた、どうやら塗り潰されている所が当人の成績らしく、それに気づいた時には私は驚いていた
「全教科満点!?クーってすっごい賢かったの!?」
「当たり前だ!私の馬鹿とでも思ってたのか!?」
私は素直に「うん」と答えると
「どいつもこいつも……!」
クーは手に力を入れながら怒りかけていた
「まぁまぁ、マリーに怒りだすのはこの会議の目的を聞いてから、ねっ?」
ノープが怒りだそうとしているクーを抑えるように言う
あっ、怒るのはいいんだ……
「お父さん、この会議の目的を」
そうノープが言うと国王は「うむ」と答えてから一呼吸する
うん?
「この『国王会議』は、人類の殲滅を目的にした異世界人、『ミサキ・ヒロ』を倒す為の対策を考える会議だ」
「えっ……えっ……?ちょっと待って!今頭が追い付いてない!ストップ!ストップ!」
えーっと、ノープは国王に対してお父さんって呼んでて……この会議の目的はヒロを倒すため……でそのヒロは人類を滅ぼそうとしてる?
「嘘でしょ?私達が生きているのって、確か彼がいるからで……」
私が状況の整理をしようとしたその時……
「その問題は私がお教えしよう!」
玉座の間の扉から大きな声と扉を弾き飛ばす音が聞こえた
声をした方へ向くとそこにはピンクと白の横縞のパジャマを着た……
__行方不明だった私の姉がそこにいた
「お姉……ちゃん?」
「そっ!私こと、リリィお姉ちゃんですぞ!」
突然いなくなって10年の間何処に……ってか
「(こんな時にパジャマ姿って……)」
昔と何も変わってない……10年前そのままのお姉ちゃんだ
そのお姉ちゃんがどうゆう事か私達の前に現れて、そして……
「おお、やっと来ましたか魔王さん」
この世界を揺るがす魔王となってここに来ちゃっていました
「え……お姉……」
「マリィーーー!」
私はお姉ちゃんに聞こうとする前にお姉ちゃんが私に抱きついてきた
「どう?何処もおかしくない?久々の訓練を見て怖くなっちゃった?ほーら、お姉ちゃんがいーこいーこしてあげるから……」
と言いながら抱き締めながら私の頭を撫でる
……何か昔よりも私に甘えてない?
「お姉ちゃんこそどうしたの、子供の頃に突然いなくなっては今になって……どうして?」
そう言うと撫でるのをやめて私の顔を見る
「あれ?前に1度言わなかったっけ?魔王が私の体を貸して貰う事になったから当面帰ってこれないって」
嘘でしょ?子供の頃言った冗談……あれ本当だったの!?
「だからって私を置いて直ぐどこかに行っちゃうって……私は……どれだけ心配して……」
この時の私は、お姉ちゃんが生きていてよかったと安心したと同時に、10年間1人でいた苦しみを思い出して泣いていた
それもそうで、姉がいなくなってから今に至るまでにどれだけの苦労があったか……
「ばか……何でどこかに……」
「ごめんね……私の説明不足で、余計貴女を苦しませちゃって……」
そう言って優しく抱き締め直して頭を撫でる
お姉ちゃんに抱き締められるのは久しぶり……な、感じがしない?
何でだろう?つい最近に同じ事をされた訳でも……訳、でも……?
「(ああ……失っている記憶だ。私が失っていた所でも、お姉ちゃんにこうして抱き締められたんだ……)」
私がお姉ちゃんからの安心感に委ねようとした時、突然国王が咳き込みをする
私達は直ぐに離れて、私は直ぐに謝って席につき、お姉ちゃんは腕を伸ばしてから席についた
「魔王、君が来たって事は……」
「ええ、彼が家に来たわ」
彼?もしかして……ヒr……
「マキナか……本当ヒロの馬鹿は何処に行ったんだ……」
ヒロじゃない……?マキナって一体
「あの……マキナって一体誰のことを?」
私が国王に聞いてみると、国王はテーブルに5~6枚の大きな紙を私の前に出す
紙を見てみると、人の形をした何かに機械や捻れた形をした変な糸のような物で出来ていた
胴体には5つの魔力核が、まるで砂時計のような魔力回路を沿うように置かれてるのが書かれている
「これって?」
「これは憶測なのだが、君が最近会ったヒロって人は……ヒロじゃない」
「えっ……?」
国王の言葉から想像もつかない答えが現れた
私がこれまで会った人は、ヒロではない……?
国王は私が考えている上で話を続ける
「明確には、ヒロと言う名前ではない。あいつは……いや、
ヒロじゃない上に、人じゃない?
「どうして、彼を人ではないと言えるんですか?」
国王に聞いてみたら彼は右腕を見せた
「そりゃそうだ、私とてあれと同じ類いの者だからな」
そう言って見せている右腕が突然ノイズが入るように視界からぼやけていた
「心配するな私は魔物ではない、ただのデータだ」
そう言ってぼやけを治してから右腕を戻した
「だが、あれは
脇から兵士がコーヒーを入れたカップを国王の前に置くと、国王はカップを持った
「じゃあ……これって?」
そう言って国王から出された紙を見せると、国王はコーヒーを飲みながら答えた
そしてそれは、私からすれば大きな衝撃でもあった
「君が会ったとされるヒロと名乗った人物……
「嘘でしょ……」
じゃあこの紙が、私があの日会った人なの?信じられない……
「あれを分類するなら……えぇーっと……でく……です……でる……何だっけ……?」
「『デウス・エクス・マキナ』」
国王が名前で悩んでいると、私の後ろにいたお姉ちゃんが答えた
振り向いてみると、お姉ちゃんはクーとノープの二人と一緒にトランプを横向きにしたままでトランプタワーを協力して作っていた
「そうそれ、そう分類する物だ」
私は話を聞いていて所々からどう言っていいものかよく分からず、内容の整理をしていた
……だがそれ以上に、彼の存在が頭から離れない
「デウス・エクス・マキナ……」
「
「いや、そんな事言われても……」
「まぁ聞け、そいつは元々人間が作る筈の物だったが……この辺りを見てほしい」
そう言って胴体部分を指差す
細かく言えば、胴体に空いている穴の部分を指差していた
「この部分がどうしたの?」
「この穴に何か入れられる窪みがあった、その窪みに何が入るのかこちらで色々試した所……」
そう言いながら1つの本を取り出す
「魔力核……しかも相当高位の物が窪みに填まった」
本を開き、ものすごい速度でページを捲っては閉ざした
「そんな魔力を持つ魔物なぞ、全ての魔物が載ってあるこの図鑑にはなかった」
「えっと……つまり?」
私が問うと国王は気まずそうな顔で答えた
「我々人間よりも、それどころか
私はそれを聞いて驚いていました、ヒロと名乗った人が別人だったり、その正体が神様の作り物だったりと、その上彼の構造の中にある物の
「『神』や『天使』少なくとも天界にいる種族しかいない事がわかった」
神……天使?何で、どうして?
そんな疑問が頭の中ぐるぐる回った、ですがヒロが何をしようとしているのかより知らなければならないと思い私は……
「王様、今ヒロはどこに……どこにいるんですか」
私は国王に聞いてみた
「…………」
国王は沈黙した後、答える
「
「死……んだ?」
その言葉に私は意図せずに泣いていた
続く
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