4-1

私はいつも一人だった、何をしても自分で出来るように努力し続けて何とかしてきた、でもなんでだろう……何時だか変な胸騒ぎをするようになったのは


夜 マリーの部屋

クーの話を聞いて何時間掛かったろうか……少し目を休めながら話を聞いていたら

「よし、今日はこのくらいにしよう」

クーが突然言い出した

「えっ……まだ続きそうなのに?」

「1日では話しきれないって言ってたろ?一旦止め」

そう言って立ち上がり体を伸ばす

私も数時間もかかる過去話を聞いて眠くなってきた

「ヒロさんって……意外と変わった人だったんですね」

「まっ、人生を変えた理由でもあるしな」

クーは時計を見ては欠伸をして部屋を出ようとする

「それじゃあこの辺でな、早めに寝ろよ」

「……あのっ!」

私が問いかけるとクーがピタリと止める

「ヒロの事……ありがとうございます」

これを聞いてクーは微笑んで答えた

「まだ途中だよ、この話はお前の為でもあるから待っててくれよ」

私は頷くとクーは自分の部屋に戻った

「とりあえず、話の整理をすると……」

1つは現状ヒロ一人で何らかの危険を対処しようと奮闘していること

もう1つは勇者が一人ではないこと

前者は今の目的に私が関わってることだけ

後者はクーとノープがいるからよくわかる

だけどまだ彼に何か成し遂げないといけない目的がある……そう考えた方がいいよね

「……とりあえず、眠ろうかな」

現状まだわからないのは話がまだ途中だし、今は眠ることにした

ベッドに寝転がり明かりを消す

…………

「(……話の続きが気になって眠れない)」

まだあの話が気になる……

そう考えつつ眠ろうとしてたら、突然扉からノックが聞こえた

明かりを付けずにそっと扉に近寄る

扉の向こうに誰かいると思い扉に耳を澄ませると……

「お前を潰しに来た」

その声と一緒に扉の真ん中から光り出した

私は声を聞いてすぐに部屋を素早く見回し、爆発と共にベッドの下に飛び込んだ

飛び込んだ直後、部屋に物凄い爆発音が響いた

寮のベッドはちょうど人一人入るスペースがあり、爆風も利用して辛うじて滑り込むことができた

爆発が治まると足音がして、部屋に入るのか足音は次第に大きくなっていく

「ちっ……部屋にいなかったか、このタイミングなら確実に勝てたと思ったんだがな……」

ベッドの下で覗いてその人を見て驚いた

あまりにも無頓着な薄衣と長ズボン……入学したあの日にぶつかった人だった

驚いても声を上げずに口を塞ぎ、呼吸もなるべく抑える、この様子でそんな発言だとあの人の目的は私で、話ができない状態だとすぐに理解した

そう考えてると彼はポケットから見たことない小さな板を取り出し、その板に耳を近づける

「ああフーリ?奇襲掛けようとしたら部屋に誰もいなかった……え?もう騎士達が囲ってる?そんなの俺が知るかよ」

あの人は突然何か話しだしてる……

「ああもうわかったから!撤退、撤退ーっ!」

小さな板に向けて話しながら机に何か置いて窓から逃げていった

「何だったの……今の」

私はベッドの下から顔を出して安全を確認しつつ、さっき逃げていった人が置いていった物を確認する

1枚の手紙が私の机に置かれていた

開けてみると見たことがない魔方陣が書かれているだけの小さな紙が入っていた

「(魔方陣だけ……?)」

そもそも魔方陣は、書けば後は魔力を注ぐだけのある意味詠唱を短縮できる道具である

でもなんで魔法書スクロールじゃなくて魔方陣のみを……

「……魔力を注いで確かめるしかないよね」

何入っているかわからないけど、確かめない内は始まらない、私は魔方陣に魔力を注いでみることにした

魔力を注ぐと魔方陣は輝き、黒板のような四角い画面が出てきた

画面は真っ白で何も見えないが誰かの声が聞こえてきた


「あーあー、これしっかりついてる?……ならいいか」

さっきの人の声が聞こえる……

「これ聞いてるってことはしっかり生きてるってことだな、死んでもこっちは知らんから生きてるってことで!!」

声は何かに座る音を出してから話を始める

「これから話すことは極めて極秘のものだ、しっかり聞いていけよ」

「(極秘……何かの目的で彼がいるってことなのかな?)」

「俺達はループする世界で勇者達を生かすと言う使命がある、それまでに絶対に死ねないと保証ができる」

「(最低でもって……)」

「……と言いたい所だったけど1つ問題が生じた、全てを終わらせ、それでもループが続くといった不具合だ」

「(あれ?じゃあそれって……)」

「この不具合の対処はあるんだが……あー……言ったら言ったで何かあれだなぁ……」

「(何だろう……変に胸騒ぎがする)」

「対処法は(ザー…)の状態で(ザー…)であることを(ザー…)」

対処法を言っている途中からノイズが入り聞こえずらくなっていく

「えっ、これ以上は限界?もう……?まぁこのくらいか、健闘をいのっ……ザー……」

そしてノイズが酷くなり、声が聞こえなくなってから画面は消える

「何だったのだろう、この映像」

私は魔方陣を手紙に入れて机の引き出しにしまった

「これは話さない方がいいよね、これ……」

はぁ……とため息をついていると町の方から大きな音がした

驚きつつ急ぎ街に走ると次第に衛兵達の声が聞こえてきた、この様子だと魔物の襲撃が起こったくらいしかわからなさそうだった

私はこの非常事態に急ぎ、一時家に寄って武器一式を取り出して直ぐに駆け出し、やっと街にたどり着いた


夜 城下街

私がやってきた時には街は争いの場になっていて、衛兵と魔物が入り乱れ悲鳴と怒号の連続が続いていた

「もう戦ってる!」

私はこの惨状を止めるべく武器を取り出して戦火の中へ

辺りを見回すと兵士達が立ち向かっては撤退を繰り返していたが、良くみると向こうも同じように進んでは退いていた

「……あの、兵士さん」

この状況がなにかおかしいと思って後退している兵士に問いかける

「はい、なんでしょう」

「ここで一体何が起こってるの?」

兵士はそれを聞いて何かに気づいたのか笑顔で答えた

「訓練ですよ、実戦訓練」

「……はい?争いに等しい状態なのに訓練?なんで?」

こんな唐突に騒がしい音がしておいて訓練?と混乱していると兵士はこう答えた

「ある人が国王と魔王を会わせて和平を組ませてからずっとこれですよ」

火があると思ったら良く見ると強めの明かりが所々に置かれていて火なんてどこにもなかった

あくまで実戦に近い模擬戦、ただの模擬戦用の武器で争いのように戦ってただけだった

「はぁ……びっくりしました、てっきり何かの奇襲かと思いました」

「びっくりするのも納得ですよ、だって開始と終了の合図が……」

兵士が言おうとしてる時に屋根にいる一体の魔物が手と手を力強く合わせてバンッ!と大きな音が響いた

「……これですから」

私も咄嗟に耳を塞いでいたが手を離した後も耳に振動がまだ残ってる

「これにて、実戦訓練を終了する!総員撤退!」

その声を聞き魔物も兵士も皆下がっていく

「兵士さんあの魔物は?」

「ああ、彼女は魔王軍幹部の一人で、確か鬼人オーガのレリナだっけな、この訓練を取り締まってもらってる」

兵士さんは兜を外しながら答える

レリナと呼ばれる鬼人オーガは屋根から降りて、全ての兵が下がっていったのを確認してから私の方へ向かって歩いてきた

「やっぱり!まーちんではないか!今日は何か用か?」

ま、まーちん……?もしかして私の事言ってるのかな?

「あっ……いや、ちょっと見にきただけ……」

私がそう言うとレリナは腕を組んで何か不思議そうな表情をして

「そうか……気をつけていけよ」

私の頭を撫でて去っていった

兵士さんもレリナと話しているうちに帰っちゃったし……

「とりあえず、寮に戻りますか」

寮に戻って、運良く被害が少なかったベッドで寝ました


魔王城

「レリナ、此度の訓練はどうだ」

「はっ、今回はこちらの優勢で終わりましたが、回り込む兵がいて次は拮抗が続くようになるかと……」

「そうか……ならばよい」

「魔王様、少し気になる事が」

「……申してみろ」

「今回の訓練後に会った勇者マリーですが、どうも彼女の様子がおかしいのです」

「ふむ、言ってみろ」

「訓練中に魔王様のかつての装備を持って来たのです、訓練とは知らぬ様子でした、話しかけると呼び方にも抵抗があったようにも見えます」

「うむ、そうか……ご苦労であった、下がってよい」

「はっ!」

「マリーの様子が……か、暇があれば赴いてみるとしようか……」


続く

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