0-ルートA 誰のための青空 上

これは、私から見た話だからなるべく鵜呑みにしないでくれよ

アイツは今も生きているし、これからも存在してる

だがあいつは私が記憶を保持してから相当変わったよ、あいつの背中を見ても何も感じなくなったあの日からな……



1日目昼 城下町

「ふぃー授業を聞くのも酷なもんだ」

それは入学式を終えてはいつも見た通り道を歩いていた日に起こった

「よっ!クーの嬢ちゃん!」

毎日元気そうにしてる道具屋のおっちゃんが話してくる

「おっす!元気してるかー?」

「元気も元気!今日も超元気だよ!」

「それでも体に気を付けなよー」

私はある意味では街の人気者だ、私が歩く先には知り合いが多い、だがそれと同時に変な噂も聞くときも多かった

今日も噂が聞こえてくる

「ねぇ……入学式の後から入る人がいるらしいよ……」

「えぇ……でも……それって」

学院に入学する人の噂、もちろんこんなのが実際に起こるものかと考えたさ、でも翌日実際に起こった以上噂ではないとわかったよ

それは翌日に起こった事だった


2日目朝 教室

授業開始まであと2~30分、教室で待っていると先生がやってきた

まだ授業が始まる時間じゃな……

「えーっと……今日からこの教室に新入生が来た、よろしくやってくれ」

そう先生が言うと扉から1人の青年が入って来た

その人は全体を見ると一般人と変わらない見た目で、穏やかな表情で見渡してた

歳は……身長と一緒にこっちと同じか、でもわざわざ入学式の後から来るのは……

そして青年が教卓に立つと自己紹介を始めた

「ども、ミサキ・ヒロです」

よろしくお願いしますと言ってから自分の席を確認して、こっちに近づいてきた

「あの先生……こちらであってますか?」

「ああ、クーの隣だ」

「わかりました」

よいしょ……と言いつつ席に座り、私に向けてよろしくお願いしますと言い一礼をした

「お……おう」

これが最初の出会いだった

授業は聞いていて暇になるが隣の席、ヒロは真面目にノートに書いていた

だが彼はいつも異質な行動を取る、今日はノートを記しながら左手でメモを書いている

しかもメモの内容を私にも見せないように教材でうまく隠している、流石の私も声をかけずらかった


2日目昼 教室

やっと授業が終わって休み時間、皆にはあまり好かれなかったのか窓際で1人窓を眺めていた

ここくらいしか声をかける機会はないと思い、私は彼に話しかけてみた

「ヒロって言ったか、何見てんだ?」

彼は話しかけられるなり少しビクッと反応してからこちらに振り向いた

「ああ、ちょっと空を見てた」

「空?」

そう言われて窓から空を見上げると雲もあって太陽が輝いている青空が広がっている

ただ一つ、昼間なのに星が出ていた事だけは記憶に残っている

「あの空に星は見えるかい?」

「えっ……あ、ああ……見えるよ」

突然話されたので素っ気なく答えたが、もしかしたら私の正体を見破ったかのような感じに笑った

「君、何か特別な力を持ってるね?」

えっ……と言いすぐにハッと思ってヒロを見る

「なんで……わかったんだ?」

そう言うと彼は直ぐに

「普通の人、この星空は見えないからさ」

なんか変な奴だなとは思ったがこれほどとは

そしたら彼は右手の人差し指だけを伸ばして腕を上げる

「……?」

「僕は星空ゆめに憧れ、そしてあらゆる道を導く男……」

そして右腕を星空に指すように向けて

「ヒロ……ミサキだ」

これ自己紹介だったんだ……変な奴だな

「クー・サキジマ、せめてまともな自己紹介をしてもらえると嬉しかったんだがな……」

「おっと失礼、訳あってここの土地や常識を知らないのでな」

へぇ、そういう人もいるもんだな、本屋でたまに見かけた異世界転生って感じの奴か?

「魔術は使えるか?」

「いや、自分でも分からん」

魔術が使えるかどうかまで知らないときたか、じゃあどこかで試してみるしかないな

「どうする?今すぐでも適正検査を受けるか?」

「いや、授業が全て終わったら受けるよう、先生に言われたので大丈夫です」

「そうか、なにかあるといいが」

こうしてから彼と関わるようになった


2日目放課後 保健室前

全ての授業が終わり、ヒロは検査を受けている

どうしてか変に嫌な予感がする、なんというか……彼そのものから異様な感触を覚える

私の勘はよく当たるが……

「当たってくれないように祈るしかないよな……」

「何を祈ろうとしてんの?」

「うわぁっ!」

突然横から話されたので驚いてしまった

「脅かしてくんなよ……それで検査は?」

「こめんごめん、水晶が物理的に圧縮して割れたよ」

……え?

「それで予備の水晶でもう一度やってみたら、今度は検査官の方に強めの風が吹いた」

「えぇ……それじゃあ検査は」

「明日に延期、もしかしたらかもしれないって先生に言われたよ、もしかしてって何だろうな」

それって極めて稀に見る全適正ってことじゃ……言わないでおこう、絶対なんか起きる

「あぁー……お前の魔力が強すぎたんじゃね?水晶が耐えきれない訳だしさ」

「成る程……嘘は言ってなさそうだし、そうしとこう」

よかった……信じてくれた

「でも魔術がどこまでいっているのか確かめたくなったかな」

あっ……ダメな奴だ

「おいおい、どこまでって言われてもなぁ……」

そう話していると床が縦に揺れた

「ん……なんだなんだ?」

地震かな?でもこんな風が強く通る地震なんてな……いやこれ、地震じゃない……爆発か!?

「まさかっ!」

外に出ると街の一部に黒い煙が上がっていた

「魔物の襲撃っ!?なんで!」

どうしよう……爆発が起きてからの進行が早い!

今にもこちらにまで来そうな勢いで進んでくる、家族の無事は確定だけど他の市民がっ!

そう考えてると先生が避難誘導をしているのが見えた

「皆!こちらに走……うわぁぁぁ!」

だが鎧を着た骸骨に斬られ動かなくなった

あまりにも酷い光景、これ以上は……

「ねぇ……何をすればいい?」

ハッ思い彼に向く

「な、何をって……」

「こいつら倒さないと無事に生きられない?」

「何言ってんだ……こんな敵の数に1人じゃ……」

「ダメだよ……生きるのを諦めるのは」

「えっ……」

彼の言葉に何かを伝えようとしているのはわかった、だがこんな状況じゃ……

「僕は戦うよ……どんなことになっても、救われない人がいるのは……嫌だよ」

そう言うと彼は炎に包まれた街に走って行った

「待っ……」

その後、置いてかれた私は避難所まで急いだ


避難所

避難所でヒロの無事を祈って待っていたら……

「ごめん……待たせたかな?」

あっさり帰って来た、死んでもおかしくない状況に無傷で

「えっ……は?」

約数分しか経っていなかった筈だが……何故無傷で帰れたのか聞いてみると

「知ってた?僕は死なないって……って初見の人に言っても無理か」

そう言われた

「そう言われてもなぁ……お前はあそこで何をしたんだ」

「何と言われてもね……僕は出来ることを確かめた、そしてそれを知ったからやったくらいだよ?」

「にしてはこんなにやれる?」

「やれるのさ、

「お前さっきから何を言って……」

彼は両腕を広げてこう言った

「僕はな…クー、君達を助けに来たんだ」

……何言ってるんだこいつはと一時期は思ったが彼の言っている事は何も間違っちゃいないし、そもそも私の勘が反応しないから嘘言っている訳でもないみたいだ

「そろそろ鎮火するだろうし、町見て回りながら事情を話すよ」

そこから彼の事情を聞くためについていった


2日目夕 城下町

事情は彼から知った、世界がループしてること、魔王軍が今にもこっちに攻めてくること、勇者が死んでしまう事

「その勇者って一体なんだ?話にも聞いたことがない」

そう、話題で唯一初耳なのはこの世界に勇者がいることだった

1度も聞いた事がないと言うか存在すら伝説上の存在と言われる人だ、知る由もない

「でもいるって言われてるからいるんだよ、周り見てごらん?」

そう言われて歩みを止めて周りを見渡すと建物は黒焦げになったり、ボロボロに壊されていた

「ひでぇ……」

「これ誰が救うんだよって話になる、誰も救われないなんて僕でも嫌だし」

そう言うと彼はまた歩きだした

「そしてなクー、僕は君達を助けに来たと言ったが、明確には『君達を勇者のように強くしないと魔王に勝てないので、鍛えさせる為に来た』」

「……はい?」

「鍛えさせるために来たって言っているんだよ、わかる?」

おいおいそりゃ冗談キツいぜ……ただでさえ魔王に勝てる人なんていないんだから、やめろって

「あっ、今勝てる訳ないだろって考えたろ」

げっ……バレてる

「まぁ無理にとは言わない、別に勇者は君みたいな人がなるには難しそうだし」

……なんか苛つくなぁ、しかも嘘を一言も言ってないのが尚更煽ってるのが分かった

「わかったよ、やりゃいいんだろ?」

「ほいきた」

「で、早速何をすればいいんだ?」

そう言うと彼は不敵の笑みで1つの課題を出した


3日目朝 教室

彼が出した課題、それは『一番長い授業を寝ずに過ごせ』だった

ちょうど魔術学の授業があるから起き続けることにして、問題は彼が何者なのか……

「なぁ……あんたは何者……」

「ぐぅ……ぐぅ……」

……寝てる、顔を埋めて寝ていやがる

一応教科書を巻いておくか

「おい起きろ、お前が出した課題だろうが」

彼を起こす為に揺らすとゆっくりと顔を上げる

「……んっ、何だ?聞きたいことがあるなら寝る前に教えろよ……」

何か言うだろうと思って教科書巻いてたが、正解だった

「授業開始前から顔埋めて寝に入ってるお前が言うな」

そう言って巻いた教科書でヒロの頭を叩く

叩かれた彼は「いたっ」と言い頭を擦りながら言い返す

「授業の内容は全部覚えてるから、聞く必要がなかっただけだよ」

そう言ってまた寝ようとしていたから聞いてみる

「なぁ、あんたは何者なんだ?」

顔を埋めようとしてピタッと止まる

「……」

少しの間が空き

「勇者に憧れた人間、そういうことにしといてくれ」

そう言って顔を埋めた

「あ、ちょっ……」

また寝やがった……とりあえず最後まで授業は聞いてやるか……


3日目昼 教室

終わる寸前先生が廊下に出ては直ぐに戻って来て、でかいフラスコを持ってこっちに来て

「クー、これは内緒だがスキルポイントをやろう、《敵情確認》が入っている」

フラスコの中に虹色の液体が入っている

「……これ飲めんの?」

「飲んで効果があるのは実証済みらしい」

「……ええいっ」

そう言って虹色の液体をイッキ飲みした、ちょっと変な感触を覚える

「こりゃ……慣れるのはムズいな……」

頭を揺らされるような感じでちょっと気分が悪いが、少ししたら治った

「平気かい?」

ヒロが聞いてくる

「この体験が1度限りならな……」

「さぁて、《敵情確認》を得たんだろ、確認はしとけよ?」

そうだ、確かそんなスキルの名前を言っていたな、確認してみよう


『クー・サキジマ』 レベル10


攻撃:70


魔法:0


速さ:50


賢さ:60


技量:40


スキル スキルポイント:20

《敵情確認》


まぁこんなもんか、次に彼を見ると……


『ヒロ・ミサキ』 レベル60


攻撃:4000


魔法:700


速さ:580


賢さ:700


技量:400


スキル スキルポイント:70

《自然回復》《魔力解放》《具現化》《剣の極致》《身体強化+》《環境適応》《潜伏》《武装製作》《瞬間強化+》


……なにこれ?こんな強かったの?

彼を見ると向こうからあぁ……って納得したような表情で返した

「納得したような顔で見るな」

「でも見ちゃったんでしょ?」

うぐっ……ぐぅの音も出ない

「神様がくれた特典って奴、ループ起こっちゃったから緊急でこんな強くなっちった」

……う~ん違和感、少なくとも嘘は言ってないっぽいが

「じゃあ、お前だけの力ってことか?」

「そうなるみたい」

みたいって……他人事みたいに

さっきからあいつは自分の事だけは他人事のように言ってる……隠してるとは違う、むしろ後ろ向きに見てる

「なぁお前……さっきから他人事のように言ってるけどなぁ……」

苛立ってきた、嘘を言わないでいるが本当も言いそうにないこいつはどうしても許せない

「お前世界の危機なんだぞ!なんでそう言い切れるんだよ!」

ヒロの胸ぐらを掴み、壁に叩きつける

「僕はな、クー……自分に許されてないみたいなんだよ」

「……はぁ?」

何を言っているんだこいつは、自分に許されてないだって?

ヒロは掴まれながら暗い声で更に言う

「他人事なんだよ……このループを知ったのも2周目からで、その2周でなんとか状況を読めたんだよ、言わせるな」

どうやら言ったら言ったで事情が深刻だったみたいだ、親父に頼んで何か対策を練るしかないな

「あの……」

「ん?」

そう考えてたらヒロから何か言いたそうな顔をしてた

「そろそろ手を……離してもらえませんか?」

あ、そうだった……頭に血が上って胸ぐらを掴んでたが、彼の事情を聞いてて冷えちまった

「おっとすまん」

手を離すとヒロはしっかりと立ち、胸ぐら辺りを気にしていた

「これは……伸びたな」

「お前が事情をしっかり話さないからこうなる、いいか!私に嘘でも本当でもない事を言うんじゃねぇ!」

「んな無茶な……」

私がそう言うとヒロは苦い顔をしていた

その苦い顔に追い討ちをかけるように私は問いかけた

「とりあえず聞くが、その要件……こっちの身内に話せる内容か?」

「身内って、君の家族がどういうのか分からないのに……」

「いいから!話せれる内容か?」

攻めるように顔を近づけて言うと、ヒロはここまで近づけられるのが慣れないのか顔をそらす

「あ……あぁ、話せれる内容だよ、基本は信じないと思うけど」

嘘は言ってないし違和感も感じない……なら!

「いいさ、別に期待はしちゃいねぇ……」

『基本信じられない情報』なら『』に言えばいい

正真正銘

胸を張ってヒロの前で仁王立ちして言う

「だがな、私を信じてくれなきゃあ……始まらないんじゃないか?」

ヒロそれを聞いてはまるで救世主でも見たかのように唖然としていた

でもとりあえずは情報整理

「えーっと、この学院全寮制だから自宅帰りは先生の許可が必要、でも許可を取れる先生は今職員室に行ったばっかりで……あっ」

そういえば父さんに聞いた事があるのがあった、『遠隔で情報伝達ができる魔術』

確かその時の私は幼かった頃で……


過去 サキジマ家

「ねぇ、おとうさん」

「ん?なんだ?」

「おとうさんっておしごとでなにもいってないのに、とおくのおにいさんにつたえてたけどあれってなに?」

「ああ……それはなクー、お父さんは向こうの人にテレパシーで伝えたんだよ」

「テレパシー?」

「頭の中に直接言葉を伝えるんだよ(ほら!こうやってね)」

「わぁ!すごい!いわれてないのにつたわってくる!」

「お父さんのお仕事にはとても便利でな……クーも使えるといいね」

「うん!わたしもおとうさんみたいにつよくなるから!」

「ははっ、クーはかっこいいなぁ」


現在

父さんに頭を撫でられたあの時か……あの時の父さん勇者やめたばっかりとか言ってたっけ……

とにかく、今魔術学の教科書があるし、確認をしてみるか

魔術学の教科書を開きペラペラとページを捲りながら一つ一つ必要そうな情報を頭に入れながら確認していく

ヒロは突然の行動に思考が追い付いてないな

そして教科書を閉じるまでの間およそ3秒で読み終えた

「どうしたんだクー、突然教科書を開けて」

「なかった……」

ヒロが「え?」と言う

「遠隔で情報を伝える魔術がないか見てみたんだよ、前に聞いた時はこれは魔術だなって踏んで教科書を直ぐに開けてあるかどうか見てた」

「それで、どうだった?」

「だめだった……あるのかどうかすらわからん」

まぁこんなものか、後は手紙なり何なりで親父に聞いてみるしかないな

「ヒロ、後でメモとかでこの事情を封筒に入れて家に送ってみる、多分家の親父がなにか知ってると思う」

「わかった、でもこの事情を全て話すからメモじゃ足りないから……」

そう言うとヒロは懐から手帳を取り出す

「それは?」

「ただの手帳だよ、これに今回の事情を全て書き記す」

彼の表情を見てすぐにこれが何なのかがわかった

なぜかって?そりゃあいつ目ぇそらしてたんだぜ、ただの手帳でな

そして、空に星が見えた原因だ

「よせ、この手帳が特殊なのは見てすぐにわかった、大事なものなんだろ?」

「クー……」

「手帳とお前の間に星みたいなのが見えた、繋がってるようにも見える」

そう言って手帳を持ってヒロの懐に戻す

「その繋がってた星みたいなのは多分、お前の魔力なんだと思う、そしてその手帳が魔力核かそれに近い代物だろう」

「……これは端末、放課後に見せるよ」

あー、そういえば今まで話してて何分経ったっけ?

そう考えて時計を見ると時計はあと3分程で授業が始まりそうだった、今までしっかり時間を測る時はあるがほんの1~2分しか経ってないのはおかしいと思ったら、違和感の正体がわかった。

時計の秒針が5秒で1秒進んでいた

「ごめんね、僕が時間を緩めていたんだ」

……っ!?

ヒロから別の気配だと!?彼はそんな素振りを一切しなかったのに!

少しずつ落ち着きながら彼に向く

「……誰だよ」

「えっと……浩だよ、御崎浩」

ヒロとは違う?嘘は何一つ言ってないし本当っぽい

「まぁこの人と名前被るからMr.Mって呼んでください」

彼は自分に指差しながら言った

私は『敵情確認』を準備をしつつ話す

「それで?Mさん、私に何か用でも?」

「別に大した用じゃないよ、ただ手帳ぼくを君の家に送らせて欲しいだけ」

……あいつ今何言った?

でも待てよ、さっきヒロに手帳これは端末だって言われた後だ、こいつが手帳の端末だってわかってもなんか突っかかる

「わかってる、でもそうしたらヒロに何が起こるか……」

「平気平気!むしろこっちが自由に行動できて一石二鳥だよ!今回の場合ではね…………」

Mがまだ何か言ってるけどその前に『敵情確認』の結果が出た、何々……

『御崎 浩』 レベル


攻撃:7000


魔法:8700


速さ:600


賢さ:800


技量:1000


スキル スキルポイント:

精神接続メンタルコネクト》《可能性模索》《世界の真実るーるぶっく》《情報完全処理》《領域展開》《記憶焼却メモリーブースター》……他46個のスキルを所持しています


うわぁ……なんだこのトンデモ人間は、もうこの人が魔王でいいんじゃねーのか?これ

「…………ってゆーかそもそも僕が君達を鍛えさせるのにもしっかりとした理由があ……って聞いてます?」

「あ……すまん、少し聞き逃した」

「まったく……ここから重要な話があるから聞き逃さないでくれよ、これ維持するのキツいんですよ」

あっそうなんだ、てっきりほぼ無制限に話せれると思ったけどなぁ……

「いいか、手帳これを君の父親に渡してくれ」

「それはさっき聞いた」

「この手帳は文字通り世界と繋がる端末になっている、事情を知ったら……きっと救われる人が出てくると思うんだ、だから次にその人らと一緒に僕の特訓に付き合ってもらう」

……ん?

彼の言葉に違和感を感じる、嘘は言ってないのは知ってるが、何だろう……

「特訓の件は2日後に平原で行う、手帳はただ見るだけじゃ分からないが……」

Mの左ポケットから1枚の手紙を出す

「何だそれ」

「これは僕からの手紙さ、中身は聞くなよー、僕こうゆうネタバラシは嫌だから」

そう言いながら手紙を私に渡す

「わかって……っ!?」

手紙を手帳に挟もうと手帳を開けた途端、目の前が眩み耳鳴りやひどい頭痛が襲う

「あっ……ぐっ!……ああっ……」

相当の量の情報が頭に直接入ってくる

痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!

頭に叩きつけられるような痛みが何度も襲いかかる、自分の体は手帳を開けた衝撃なのかピクリとも動かすことすらできない

誰か……誰かこの痛みを止めてっ!

「はいっ!そこまで」

Mが私の手を掴み、手帳を閉ざすように私の指を動かす

ぱたりと手帳が閉まってすぐに私にきた頭痛や耳鳴りが治まった

「全く……開けるなら開けるで僕に一言言ってほしいなぁ」

Mが肩をすくめてため息混じりの息を吐き出す

「……はぁっ……はぁ……はぁ……」

なんだったんだ今の……人間の情報量じゃない、まだ少し頭痛い、こんなのを使っていたのかよ、こいつ

「これなんだろうって思ってるでしょ?君に教えておくよ」

Mは手帳を取り、今度は彼の方から手帳を開く

開いた手帳は大量の魔方陣を出しては四角い魔方陣らしき物体が横長で6つ程出てくる

「これの正式名称覚えずらいんだよなぁ、えっと……こほん、『記録式手帳型演算装置』……だったかな?」

Mが手帳の名前を言った後に自信のない声で言う

「そのままは覚えずらいから『ソロモン』って呼んでる」

Mは、ソロモンと呼ばれる手帳を見て言う

そして魔方陣に触ると水面が揺らぐように魔方陣が高速で動き出す

「えっ……何、何するつもりだ!」

彼はそう聞くや否か、宙に浮かびながら椅子に座るかのように腰を落ち着ける

「これはね、神様が僕に耐性を付けたときに出来てたみたいでね、神様達も扱い方に困ってたので貰った」

そう言いながらMは魔方陣を人指しと中指で動かし、何かを探していた

「そして、これは記録をする為だけではないみたいで……」

そして指を止めてあるスキルに触れる

伝達テレパシー》私が探してた物だった

「これでいいかい?」

「えっ……」

まるで見抜かれているように行動が早い、早すぎてこっちの状況が飲み込めない

「探し物だよ、探してるのこれでしょ?」

「そりゃあ、そうだけど……」

「じゃ!今から出すね!」

「あっちょっ!待っ……」

「《精製》を使用『対象:スキル《伝達テレパシー》』対象の精製術式展開、精製完了まで残り10秒……」

私が言う束の間にMが行動しだす、しかも何かよく分からん音でてる

そう考えてる内に彼の手元に巻物のような物が作られていく

「精製……完了」

彼の手元からポンッと巻物が出来上がった

「えっと……何やった?」

そう言うと彼は

「《領域展開》による《精製魔術》の行使だけど?」

「だけど?じゃねーよ!なんでそんな事までやるんだって聞いてるんだよ!」

「まぁまぁ、よければどうぞ!」

そう言って巻物を差し出す

確かに私が求めてた物だが……こんなんでいいのか?もっとこう、一回くらい冒険をするとかさぁ……こんなあっさりでいいのか?

「……ただし!」

戸惑っているとMは突然声を上げた

「僕の頼みをやったらでいいかい?」

「頼み?」

「そう、タダで取っちゃったら何か味気ないでしょ?だから頼みを聞いて欲しいんだ」

「わ、わかった……それで、どんな頼みだ?」

「それはね……」



3日目放課後 サキジマ家

全ての授業を終え、担任に帰宅許可を得てきた

まさか入学してから3日程で自宅に帰るとは思わなんだ、親父達も驚くだろう

「まっ、どうせ驚かないよな!勇者なんだし!」

そう言いながら家の玄関を開けて

「たっだいまー!」

元気よく声を出した

私の家族構成は父・母・妹二人に私、という構成

父さんは元勇者でかつて魔王と戦った人の内の一人、普段は大工で裏では情報屋をやってる、情報に関しては知らない事の方が少なく、たまに国王に情報の報告による報酬を貰ってる

母はおっとりとしてるけど、この家族を纏めるまとめ役、計画の大半が母が考えたといっても過言ではない

二人の妹はまだ育ち盛りだけど、どうゆう経緯なのか二人係でドラゴン1頭討伐している

なぜか可愛いものよりもクマのぬいぐるみを優先して突っ込んで抱きつく

そんな当たり前がわからなさそうな家族だ

その時家にいるのは……妹と父さんだったな、あの時は少し笑っちゃったよ、父さんの顔ぽかんとしてたもん

先に反応したのは末妹だった

「あれ?おねぇちゃんがっこうは?」

黒髪のこの子は『クラウ・サキジマ』三姉妹の末っ子で直感が強く、魔物の察知まで出来ていた、まだ学院に来る前はこの子にしょっちゅう助けられて、散々ぬいぐるみを買わされた

「お姉ちゃん学校はどうしたの?」

茶髪のこの子は『レイ・サキジマ』三姉妹の次女で魔力が強く、赤ん坊の頃は文字通り口から火を吹いてた、今はあまり魔法を使うような素振りはないが寝につく時一人で魔法の練習をするくらい人一倍責任感が強い、今は魔法使いでも覚えるのが大変な《浮遊》を2年前に覚えてる

「ク、クー?何故家に」

そして今口開けっぱにしてるこのオッサンが我が家の情報網『ソラ・サキジマ』だ

母は……まぁ後の機会でいいか

「学院に許可貰って帰って来たんだ、それでだ…………親父」

そしてこの家では家族で異なるスイッチの切り替えで通常と仕事を分けている、私の場合は『口調を変える事』

「っ、どうやら何か事情があるみたいだな……クラウ!レイ!部屋に戻ってなさい」

「「はーいっ!」」

父さんが二人が自室に戻るのを見て、こちらに向きテーブルに指差す

私は無言で頷き、椅子に座る

「母さんは?」

「国公認の騎竜ドラゴンライダー大会に出たよ、まだ2時間くらいは帰ってこないさ」

「そうか……それはよかった」

「それでだ……クー、何か話があるのだろう?学院から帰って来た事だし」

「友達に頼まれたんだ、これを」

そう言って手帳と手紙を取り出しテーブルに置く

父さんは頷いては手帳と手紙を取り、手紙を開ける

「……っ!」

父さんが手紙を見ると、時が止まったように固まった

「父さん……内容は?」

そう聞かれて父さんは手紙を渡す

手紙の内容はこの通りだった


~サキジマさんへ~

この手紙が読まれてるってことはしっかり手帳が届いたって確認していいでしょう

私は名を明かせませんが世界の危機を知る者です、情報に関してよく知っている貴方だけに頼みたいことがあります

まずは南側のある街の下水道に騎士達を向かわせてください、あそこの隠し部屋に転送の魔方陣があるはずです

そして、国王にもこの手紙が届いているのかの確認をしてください

あ、これ順番逆か

とりあえず、この2つを行って下さい。

そうしないと…………


そしてこの手紙一番下で何故か赤くなっている文章が一言だけあった

そして、これが私を助ける理由だとわかってしまった


貴方の大切な長女が襲撃に逢い、二度と帰ってこなくなってしまいます


「……は?」

この文章を見て時間が止まったように思えた

そして、この一言の意味を私と父さんは理解してしまった

「クー……この人からの話をどこまで理解している」

父さんは落ち着こうと深呼吸しながら問いかける

私も息を整え、答える

「少なくとも……現状何をすべきかだけ……」

父さんはそれを聞くなり口元を手で覆い考える

「そうか……クー」

そして情報の真偽をよく知っている父さんが、まず言わない質問をされた

「っ!父さんそれって……」

これまで生きてて情報に関しては一度も父さんが他の人に判断を任せる事はなかった、その理由は勇者になった時の経験とスキルで嘘か真かをしっかり解っていたからだ、嘘か真かわからない手紙の内容で時点で父さんも相当衝撃的だったのだろう

「この手紙は……信じられないが嘘ではない……娘が失われる事を……そんなのを信じるしかないのだがどうしても

「父さん……」

「クー、この手紙は確かに渡されたぞ」

父さんが手紙を懐にしまい、席から立つ

「お前は先に部屋で休んでろ、後はこっちの仕事だ」

「どこに?」

玄関の扉を開けて出ようとする前に聞くと父さんは振り向いて答えた

「国王んとこ行ってくる」


3日目夜 自室

あの後父さんに言われた通りに自室のベッドで休むことにした

まだあの時見た文章が脳によぎる

(貴方の大切な長女が襲撃に逢い、二度と帰ってこなくなってしまいます)

あんな内容の手紙渡されたらそりゃあ開けるな言うよな……

「にしてもなぁ……内容くらいせめて言ってくれよ」

「確かにね、あたしもそう思うよ」

「そうそう、そりゃあ……」

自室の窓を見るとレイが窓の外にうつ伏せの姿勢で浮いていた

「うわっ!レイ!何聞いてんだよ!」

「お姉ちゃんさっきからお父さんと話してから暗いよ」

よいしょっと……とレイが部屋に入っては机に座る

「しかも暗すぎたあまりに《読心リーディング》で内心見え見えだし」

ぐっ……これまでの事まで聞こえてたのかよ

「聞こえるも何もね、クラウが落ち着かなかったから聞いてみただけ、別に詮索はしないから」

「……ごめんなレイ、情けないお姉ちゃんで」

「べっつに?私達が関わらないように動けばいいだけだし、気にしないで」

ありがとう……でもこの件は私が関わってるみたいだから巻き込みたくないんだが

「……でもさ、関わらないなら関わらないなりに助言はできると思うんだ」

「えっ?」

突然の提案に戸惑ってたがそういえば妹達は少なくとも大人顔負けの賢さがあったのを思い出した

「だーかーらー助言はしてやれると言ってるの!」

こんな大変な事態に関わらないで関わる方法を思い付くのは容易いだろう

「それで、事態がどうあれ私達がわかる範囲は理解してます」

「なら私の心情も察して……」

「だからこそ!本人は動くべきなんです!」

おいおい……妹に無茶言われるのは慣れてたけど、実質死にに行け言ってるもんじゃないか

「手紙の内容もほら!《読心リーディング》の対策を怠るから全部丸聞こえだよ」

そう言い、ポケットの中からメモを取り出した

メモには手紙の内容の全てと、文章の一部一部にレイなりに考察している青い文書が書いてあった


~レイの考察メモ~

この手紙が読まれてるってことはしっかり手帳が届いたって確認していいでしょう『手紙が届く事を事前にしってた?』

私は名を明かせませんが世界の危機を知る者です『一度結末を見てる?』、情報に関してよく知っている貴方だけに頼みたいことがあります『まだ秘密がありそう』

まずは南側のある街の下水道に騎士達を向かわせてください、あそこの隠し部屋に転送の魔方陣があるはずです『そこが奇襲の発生源かな?』

そして、国王にもこの手紙が届いているのかの確認をしてください『王様もこの事情を知らない?』

あ、これ順番逆か

とりあえず、この2つを行って下さい。

そうしないと…………『選択を強制してる感じがする』


貴方の大切な長女が襲撃に逢い、二度と帰ってこなくなってしまいます『これから起こる出来事と予測』


「……」

いつ見てもこの文章は目に悪いが、レイの考察で少し紛らわせれた、これなら最後まで読めれる

「次のページに考察の総まとめがあるから考えるのは読んだ後で」

もうまとめてる……早いなぁー

次のページをめくった時、こんな事実が妹にわかってたのかと思いしった


~総まとめ~

噛み砕いて言うならこの手紙を書いた人は

根拠はいくつかあるけど、まとめるなら3つ

1つは『遠回しに死ぬと言って警告してる事』

多分これは運命とかので避けられないと手紙を書いた人は知ってると思う

次に『国王もこの事情を知らない事』

手紙の内容に国王にも手紙が届いてるかの文書が書かれているから、王様も知らない事だと予想される

そして3つ目『これから起こる出来事で死ぬ人は一人じゃない事』

文章をよく見ると国王に全く同じ物が届いていると言っても過言じゃない、と予測される

事態は恐らく最悪な方向に向かってるが、それを避けるように導こうとしてるのが手紙を出した人だと思う


世界が滅んだのを経験しているだって?

妹がそんな結果を出すのはあまり見ないよな、これが内容で全部まとめた結果で書いてるんだよな

「レイ……なんかすごい結果報告が出たな」

「私も言えたものじゃないけど、巻き込まれたお姉ちゃんが危機に瀕してたら居ても立ってもいられなくて……ん?」

レイが言っている途中から机の手帳に手をかける

「お姉ちゃん、これって?」

「開けんなよ、えらく酷い目にあうから」

そう言うとレイは躊躇いなく手帳を開けた

「っておいバカ何やって……!」

……あれ?レイが苦しむ素振りがない?

そうするとレイの目の前に1つだけ魔方陣が出てきた

魔方陣の画面には何かよく分からない表示とか現れた、後程Mに聞いたらこの画面はデスクトップと言う物らしい

デスクトップではMが待ちくたびれた様子でこちらの画面を見ていた

「お!出てきた、もしもーし!聞こえてますかー」

画面内からMが手を振る

「変な魔力を昼間から感じ取ってたから何だろなと思ったら……これが原因ですか」

レイが呆れた顔で手帳を指差す

「まぁ……そうだな、レイも大概だけど」

「私はしっかり努りょ……こほんっ!魔力の扱い方で消費を抑える方法とか探してましたし!」

だからそこん所だって……

「でも演算術式ができてるし、この子はマジの天才って呼べるよ」

よしよし……とMが画面から右手だけ出してレイの頭を撫でるとレイは最小の動きで指の一本を折ってから戻した

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

画面内でMが右手を抱えて痛がる

「やめてください、撫でていいのはお母さんとお姉ちゃんだけです」

私は左手でレイの頭を撫でながら

「ごめんな、ネコみたいに繊細な性格なんだ」

「それを先に言ってくれよ……あとな」

「ほれっ」と画面内からこちらに向けて巻物を投げると画面から巻物が出てきた

それをすぐにキャッチして開けてみる

「約束はしっかり守ったからね、報酬を渡しとく」

開いた巻物から魔力が伝わる……

スキル《伝達テレパシー》を入手しました

「お姉ちゃん、それ何入ってたの?」

「父さんが使ってるって言ってた《伝達テレパシー》、いざと言うときに使えそうだ思ったらこいつが勝手に作りやがった」

「ふーん……」

「(さて……試運転で誰に伝えるか)」

「(お姉ちゃん、聞こえますか?)」

「(おう、聞こえて……)」

そういえばレイって一回父さんの仕事を手伝ったらしいけど、この《伝達テレパシー》でやっと辻褄があった

あの手帳を開けることができる時点で演算術式がある言ってるし……

「(レイ……まさかこれで父さんの手伝いを?)」

「(そうだけど?)」

どうやら予想が当たったようだ

「(一回は遊び半分で使ってたけど、お父さんの声が聞こえて、家の図面を部屋に忘れたらしいから《浮遊》で届けました)」

だから『空飛ぶ少女』なんて言う変な噂がたったのか……

そう考えてると部屋の扉からばっと開き

「ないしょばなしのけはい!」

隣で寝てる筈のクラウが飛び出した

本当に勘が鋭いな

「クラウ、あなたは寝てくださいっ!」

「あぁー」

レイが直ぐにクラウの腕を掴み、隣の部屋に持っていこうとした

その時だった

「まど!まどをみて!」

クラウが突然そう言い出した

「窓?」

言われる通りに窓を見てみると向こうからほのかに光が出ている

一瞬夜明けと思ってたが、よく見てみると何か上がっている、上がっている物の正体を知った時にはつい最近見たものだとわかった

「まさか!」

上がっている物だけ光を遮ってるから直ぐに理解した、それ以上にあの位置がどこなのか予想がついて不安がよぎった

「手紙で書いてあった位置っ……!」

気づいた時には私は家から直ぐに飛び出して火事が起こってる場所に向かってて、この時点での私は自分の心配よりも、父さんの心配をしていた



続く

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