3-1

俺は自分の意思で生きるのはとても素晴らしいものだと思ってる、誰が何を言おうが……僕は自分に従って戦う


2日目朝 城下町

街に戻ると店が開く所が増え、店主達が腕を伸ばしたりして準備体操していた

そこから今更思い出したけど

「なぁ、フーリ……」

まだこの世界の常識とかを全て知った訳ではないからまたフーリに聞くしかない

「なんでしょうか?」

「この街にギルドみたいなのはない?」

そう聞くと何処から持ってきたのか、地図を取り出して『酒場:メビウス』を指差した

「酒場ならありますよ」

「よしそこだ、そろそろ資金を調達してかないと今後が厳しくなる」

そう言って地図に沿って酒場についた


酒場 メビウス

店に入ってみると店内は広々としてて壁にかけてある掲示板には依頼書のような紙が貼ってあった

「あ、いらっしゃい!注文があるなら椅子に座っててー!」

店員も若者が明るい声で対応している

「フーリ、椅子に座って待っててくれ」

「はーい」

フーリが座ってる間にカウンターへ歩く

カウンターの方では緑のペレー帽をかぶった女性が暇そうな顔で機械の前で座ってた

機械は上から順に水晶、複数のレンズ、そして一枚の紙が台座に置かれている

「……あ、何かご用ですか?」

あ、でも冒険者はわかっても、もしかしたらライセンス関連のとかがないのか?

「あのー、その機械は……」

僕は機械に指差して聞いてみた

「ああ、これ?これは冒険者ライセンス製作用の機械だよ、これ聞いてくるってことは冒険者登録を?」

「自分のステータス確認がてらね」

「では、こちらの水晶に手を……」

成る程、水晶でステータス確認してそれを複数のレンズが鮮明に写し出す、そうして紙に自動的に書き込まれるって構造ね

そうして水晶に手を差し出すと、予想通りに動いて、予想通りに紙に書き込まれていった

「攻撃がやけに高いですね、何か特訓でもしてました?」

「いいえ、した覚えすらないです」

「では、この紙を取った時点であなたは冒険者として認められますので紙を取り、依頼をお受けください」

紙を取ってフーリの所に戻るとフーリが冒険者達に囲まれて酒を勧められてたのかジョッキに入ってる酒をガブガブ飲んでいた

何やってるんだよフーリ

「わだじだっでぇ……若者みたいに青春じだいよー!」

しかも何か下らない事で泣いてるし

「嬢ちゃん青いねぇー、俺達ももう少し若かったら嬢ちゃんに告ってたのになぁ……」

「やだぁ!こんな汗臭そうなおっさんに告られても嬉しくない!」

「フラれてやんの」「うるせぇ!!」

冒険者達に囲まれてる光景をそのまま見ておこうかなと思ったが、これから依頼を受けるつもりだし、そろそろ……

「フーリさん、何酒飲んでいるんですか!」

店員に水を頼み、フーリに差し出す

「お!彼氏さんかい?」

「違う違う、信者の方」

「なぁーんだ、ファンの一人か」

「そうそう、ほらフーリ!依頼受けますよ!」

「やーだぁー!」

引っ張ろうとすると彼女は突然駄々をこね始めた

ここまで酔いが酷いとこんなに変わるのか……

「……なぁ、おっさん」

飲み終えたジョッキを見てから冒険者のおっさんに聞く

「ん?」

「この子、何杯飲んだんだ?」

「えーっと……あんたが離れてから飲んでいたから、ざっと7杯程」

何飲みまくってんだこの神様バカっ!

「はぁ……この子を宿屋に運ぶ、誰かツケ払える人いますか?」


2日目昼 酒場

時間が経って酔いが落ち着いたのかフーリは眠っていた

酒代は冒険者に払ってもらう事にして、彼女を持ち上げて宿屋に運びました

「おう!兄ちゃん、嬢ちゃんの具合はどうだ?」

「飲み過ぎたのか、明日になるまでは酔いは覚めないみたい」

「嬢ちゃんも凄いもんだよ、樽一個分の酒を飲んだんだからな」

「誰ですか、彼女に酒勧めた人は……」

そう聞くなりわははははっ!と冒険者達が誤魔化すように笑っていた

なぁーるほど、皆してか

そう考え、掲示板の前に立つ

依頼の種類には複数あって

運搬から要人護衛、討伐から陣地制圧まで揃っていた

「さて、丁度いい報酬がある依頼は……」

あった、『山賊の撃退依頼』近くの山道で行商人を狙う山賊を撃退、よければ頭領を確保の依頼

その依頼書を取り、地図を取り出して目的地の場所の確認と山賊が狙ってきそうな箇所の予測

これに最も効率のいい山賊の退治の方法は……

ある依頼書の一枚を見て少し笑う

「丁度いいや」


2日目昼 山道

「えーっと、あなたが護衛の冒険者……でいいんですよね?」

「あってます、ちょっと別の依頼も兼ねてやろうとしてましてこんな感じになりました」

何かひ弱な商人と馬車の前で挨拶をする

「何、あなたは単純に馬車を走らせて商売をする、僕はその護衛をしてあなたの商売に異常を起こさないように見守る……これ以上にいい護衛はいないんじゃない?」

「で、ではお願いします」

『商人の護衛』その依頼を見て『山道を途中で入る』という文字に気付き、これは山賊退治に使えると睨み今ここにいる

僕は馬車の荷台に入り、護衛を始めた

最初は弱い魔物が来るだけで襲われなかった草原だったが山道に入りはじめてから、何かの気配を感じるようになった

「(近いな……黒鉄クロガネを出しておくか)商人さん、気をつけてくださいね!」

「は、はい!」

自身の背に掛けてた黒鉄クロガネをゆっくり取り出し、敵の奇襲に備える

上り坂に入ってから走り続けていると、近くの茂みから音がして

「ヒャッハーー!」

テンプレのようなはしゃぎかたをした山賊が4~5人馬車に向けて飛び出した

「ひぃ……」

商人が驚いて馬車を止めると同時にもう3~4人に後ろを塞がれる

「へへっ!金目の物をだしな!」

「……商人、荷台に隠れてろ」

そう言われて商人は荷台に飛び込むように隠れ、入れ違うように荷台から出る

「なんだぁ、こんな弱っちい奴が護衛かぁ?」

ヒャハハハハ!!と笑われても僕は動じずに

「試すなら……どうぞ?」

余裕の表情で両腕を広げる、山賊達の一部がナイフを取り出すと

「気に入らねぇ……やっちまえ!」

他の仲間に指示を出して僕に襲いかかった


5分後…………


「ううっ……なんだこいつデタラメに強えぇ……」

傷一つもない圧倒、不意に商人に向けてナイフを投げようとしてた奴がいたが、頭を叩いて現在気絶している

まだ意識があった山賊の胸ぐらを掴み笑顔で問う

「誰が、弱っちいって?」

「ひぃっ!ち、違うんだ!俺らは家族を人質にされてて仕方なく……!」

へぇ……『仕方なく』、ねぇ……

「頭領の仕業かぁ……後で締めてみるか」

やべっ……建前と本音を入れ違えた

まぁ、ちょっとした誤差だしいいか

「他の仲間はここで縛って放置するから、君は仲間を呼ぶなり頭領ボス呼んで助けてもらうなりしろ、そのくらいはできる筈だろう?」

「……助けてもらえないのか?」

「あくまで僕は依頼を受けているだけ、その依頼を達成させる為だけでここにいるんだ」

そう、あくまで受けた依頼は『山賊の撃退』

ボーナスが入るのが『頭領の確保』なだけで、からだ

「だから僕は君達を殺さないし、君達は僕を追うのも、僕から逃げるのも勝手にすればいい」

ほら、行きましょうと商人に言って荷台に入る

あれ以降は何もなく、別の町に着いて、普通の商売をした後にまた山道に入った

「あの……本当に見逃してよかったのですか?」

山道に入ってから商人に言われる

わかってるんだ、人質がいる事が嘘とは聞こえなかっただけで疑わなかったと言えば嘘になる

「心配ないよ、そもそ……っとと、どうした?」

話の途中で突然、馬車が止まった

「いや……さっきあなたが見逃した山賊が……」

荷台から覗いてみたら、馬車の前にさっきの山賊が座っていた

「あの、待ってたんですか?」

「そうです」

覚悟を決めたような表情、この様子じゃあ……

「あなたに頭領ボスを倒してもらいたいのです!」

知ってた……ボーナスがあるからやるけど

「商人さん、ここで待ってもらっても?」

商人に問いかける

「え、ええ……いいですよ、少なくとも日が落ちる頃までは……」

地図を取り出して山賊に見せる

頭領ボスのいる所……わかるか?」


山の奥深く、今にも壊れそうなボロボロの廃墟

「……」

その廃墟の中にボスはいた

あの山賊から聞いた通りだと、彼の名は『サーティ・エイトス』掲示板の隣に置いてあった指名手配リストに書いてあった人の一人

さらに追加ボーナスがあるとは思わなかったが……かなりの手練れだ、ナイフの名手と言われたらしい

状況整理をしている内に近くの壁にナイフが刺さる

「奇襲などしても無駄だ、出てこい」

言われる通りに入り口からゆっくりと入る

「やっぱりばれた?」

「知らぬ気配だったのでな……俺を捕まえに来た者だな?」

当てるねぇ……戦い慣れもしてると見た

「そうだと言ったら?」

「私にはまだ成し遂げなければならん大義がある、まだ捕まるわけにはいかん」

大義かぁ……悪者がそれを重んじてるのも不思議なものだな

「でも、こっちもそう暇じゃないんだ……さっさと決めさせろよ!」

黒鉄クロガネを取り出してサーティに切りかかるとナイフに、しかも逆手持ちで止められる

「くっ……こんな所で負けるか!」

鍔迫り合いになった状態、押しきろうと考えた瞬間、視界が少しぼやける

(ああ、久しぶりに来たのか……直感)

俺の直感は特殊で、感覚的とはいえ少し先の未来が見えてしまう

今回は危機察知に近い状態らしく周りの時間がゆっくりになっていた

そして見えたのは、サーティは隠し持っていたであろうもう一本を投げて、自分の頭に刺さる光景が見えた

「っ!?」

僕はとっさに下がり、間合いから離れる

離れると、視界に1本のナイフが頭の上に向けて飛び出す

前髪が数本切れた、少し下がるのを遅れたら頭に刺さる軌道だった

「慣れてるなぁ……でもっ!」

刃先をサーティに向ける

「《刀身変更ウェポン・チェンジ》……」

サーティも何かをすると気づいて構える

「《大太刀ハイ・ロング》っ!」

黒鉄クロガネの刀身が5メートル位まで伸び、サーティの首元を掠め廃墟の壁面に刺さった

サーティもこの状況には驚いて少し固まったが

「この間にもう一発っ!」

僕の一言でやっと状況を飲み込めたらしく、また何かをする前にとナイフをさらにもう一本だして近づいてくる

「《取消キャンセル》、そして《刀身射出ウェポン・ファイア》!」

一旦刀身が元の長さに戻る時には後一歩で彼の間合いに入る寸前だった、だが刀身と持ち手の間が爆発し、刀身が弾丸のように放たれ彼の腹に当たり、サーティは膝をつく

鳩尾に命中、しかもこの距離だと立つことすら難しい、膝をつけているサーティに一言

「残念でしたね」

そう言って射出されて持ち手がない刀身で殴って気絶させた


2日目夕 城下町

「凄いです……まさか山賊の頭領を捕まえるなんて!」

「言うな、称賛に値すらしない」

「あ……すみません」

山賊の頭領を縛って馬車の荷台に突っ込ませた後、衛兵に差し出した

勿論、懸賞金と盗賊を撃退した報酬も貰って、後は商人の護衛の報酬だけである

「でも凄いです、これ受け取ってください」

「ん、これって?」

商人から受け取ったのは1枚の紙が巻いてあり、1本の糸で結んでいた

「これですか?結構希少な魔術で、《魔力糸まりょくし》って呼ばれてます、見えない糸で結んだり物を止めたり……なんか色々できます!」

なんかとても雑な説明で言われたが

「一言で纏めると?」

「とても便利です!」

よし貰おう

「えっと、懸賞金で金貨4枚、盗賊撃退の報酬で銀貨25枚、そしてボーナスで銀貨40枚追加かー」

この世界の通貨は1枚につき金貨は10万円、銀貨は1000円、銅貨は10円で換算される

そうなると僕が貰った袋には約46万5000円が詰まっているって事になるのか

「(一気に大金が入ったな……後で盗られないか不安だ)」


2日目夕 宿屋

部屋に戻ってみても何も異常はなく、フーリが幸せそうな顔をして眠っていた

「よく眠れたもんだなあ……」

そう言う僕も《魔力糸》の使い方を知ってから寝るつもりなのだが

「えぇーっと、紙から魔術を覚える方法はルールブックに書いてある通りなら……」

まず糸をほどいて紙を広げる、そうしてから紙に手をかざすだけ

そうすると紙自体の魔力から覚える事ができる

「よしっ、覚えた」

早速使うか、どうやって出せばいいんだかわからないけど

「とりあえずイメージしてみるか」

まず手から糸が出てくる簡単なのから

そうしてみたら手首から複数の糸が出てきて壁に張り付いた

「おおっ!出してみるもんだな……」

糸は虹色に輝いており触れてみると粘着性もある

戻し方は糸を切るイメージをしたらすぐに外れて、くっついた糸もフッと消えた

「次に入ろう、時間がない」

次は指先から1本だけを出すように……

「出たっ……」

すごく見えずらい程細く、そして頑丈な糸が出てきた

ここまでやれる事が多い魔術を見て一つの考えが思い付いた

「これ、もしかしてね……」

この細い糸を武器に付けて別の魔術が使えるかを試す為、黒鉄クロガネの柄に糸を巻き付けて実験、ついでに武器から刀身を外した後の事で試してみたい事があったし

「《刀身変更ウェポン・チェンジ》、《短刀ナイフ》、《刀身分離ウェポン・パージ》」

まずは魔力糸を使った遠隔での魔術の実験は成功、次は……

落ちた持ち手を持つ

「火を点けるようにやってみれば……」

と言ってたらボッと刀身を入れてた所から炎が出た

僕が試したかったのはこれだ『刀身を外した後でも魔術を出せるか』の実験

実験は成功だ、黒鉄クロガネの刀身を戻して一眠りとしますか……

そうしようとすると扉からコンコンと叩く音がした

なんだよ、僕に用がある人なんて……

「王都騎士団の者だが、冒険者ヒロはいるか」

「っ!」

騎士団の人だと、何かやらかした訳ではないよな……

考えながらゆっくりと扉を開け、顔を出すと

白い鎧を着た青年が立っている

「知り合いが寝てるんで……どこか別の所で話せませんか?」

「行きつけの店があるがそこまで来れるか?ひとつ話がある」

僕は騎士について行った


2日目夜 カフェ

裏路地のある所にポツリとある看板店からほんのりと灯りがついており、貶してる訳ではないが店内はあまり客が来るような感じがしない

「私のオススメだ、入るといい」

僕は騎士が入ったのを見てから店に入った

予想通り店内には人の気配はない、いるとしても白いスーツを着た青年がいて、いい香りがするスープを作っているだけ

「おお、いらっしゃい」

「マスター、席を使うぞ」

「いいぞ」

騎士が席に座るとメニューを取り

「いつもので」

「はいよ……で、そっちの注文は?」

そう言ってマスターはこちらに視線を向ける

「あ、ああ……とりあえずこの『取りたて魔草のカレー』を」

聞いたマスターがうい……と言ってカウンターの奥に行った

「とりあえず話を聞くけど、こんな時間に呼んだんだ……飯を奢る仲でもないし」

「そうだったな、先程あなたが捕まえた者の件でな」

「あのナイフ使いの事か、それがどうかした?」

「それが……その……」

騎士が目をそらす、ははぁ……さては

「敵討ちならお門違いだ、こっちの依頼で捕まえただけだよ」

「えっ…いや違います!逆に感謝を伝えに来たのです!」

「へぇ、感謝を」

「はい、私の名は『エイティ・エイトス』、兄サーティの弟です、兄を捕まえた者に兄からの伝言を伝えに来ました」

「伝言?」

「はい、まずはこれを」

そう言ってエイティは袋を取り出し、1本のナイフをテーブルに出した

触れてみると持ち手部分だけ変に軽く、むしろ刃の重さに引っ張られるような感触がする

「これは?」

「兄のナイフです、持ち手の中身が空洞になっており魔力を注ぐと刃を包んで切れ味をあげる構造になっています」

「そうか……それで本題は?これ見せるだけじゃないだろう?」

そう言っているとカウンターからマスターの声が

「そろそろ出来上がるから、テーブルから武器をしまえよ」

「わかりましたー」

エイティが答えるとナイフをしまって話を続けた

「ヒロさん、あなたにこのナイフをお譲りしようとここに来ました」

変な話だな、敵討ちをしろって頼む訳でもなく自らの弟にナイフを譲らせるとは

「そう言われても、こちらも自前のはありますし……」

「兄は言いました、『このナイフはあなたじゃないと使いこなせない』と」

「……っ!」

加護を知っている……のか?もし仮に知っていたとしても1つの疑問が残る

「兄は実力主義者で、誰かに託す事は決してしませんでした……ですがらこのナイフを渡すように頼まれた時はそれはそれは驚きました」

「って事はあいつは勇者だったと?」

これだ……僕が聞きたかったのは

「……かつてはそうでした、神に選ばれた勇者の1人でした」

「でしたって事は途中から……」

「おっと、話は一旦終いにしな、料理ができたぞ」

途中から勇者じゃなくなったのか?

そう言おうとしてマスターに遮られた、料理を付け合わせのパンと一緒にテーブルに置いてカウンターに戻った

エイティの頼んだのは山盛りの肉、見た目が完全に牛肉なのだが、気にしないでおこう

「きたきた、いただきます!」

こちらの頼んだのは見た目通りのカレー、草の姿が一ミリもないのはのり状にしてルーに溶け込ませたからかな?

とりあえずいただこう

「いただきます」

エイティは肉の山をガツガツと食べ進んでいて、もう半分を切ろうとしている

こっちも負けてられないなと思い、カレーを口に入れる

「っ!?辛っ!?なにこれ!」

今まで感じたことのない、舌が燃えるような辛さだ、しかしそれと同時に食欲が込み上げてくる

「これは……素晴らしく美味しい!」

「な!ここの店は味がいいのですよ!」

互いにガツガツ料理を食べ、気づけばなにものってない皿だけが残った

「「ごちそうさま!!」」

「あいよ」

二人が同時に言ってマスターがこくりと頷いて、皿を取り下げてく

「……話を続けよう」

僕が言い出すとエイティは水を飲み干して、真剣な表情で向いた

「君のお兄さんが途中から勇者じゃなくなっていたのか」

「そうです、魔王と1度戦ってから兄は国王にも顔を出さなくなりました」

そういえばサーティに《敵情確認》するのを怠っていたな……

「魔王……ねぇ、そろそろ僕はこれで、この飯のツケはいつか返すよ」

席を立つとエイティは驚きつつナイフを出して立つ

「えっ、あのっ!このナイフは!」

「君のお兄さんの物なんだろ?なら親族に持たせなきゃダメじゃないか、僕は君達の事情に無関係……つまりそう言うことさ」

僕は店を出た後から欠伸が出たので宿屋に戻った


2日目夜 宿屋

部屋に帰ってみると机にナイフと1枚の紙が置いてあった、ナイフは先程エイティが出した物と同じで紙には「では、ここに置いておきますので使ってください、もし会えた時を楽しみにしてます」と書かれていた

「はぁ……兄が兄なら弟も弟か」

そう言ってベッドに寝転がり眠りについた

続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る