2-1
ある日、争いがあった……城に向かおうとしていた魔物の軍勢の経路に村が巻き込まれた、その日に私の家族は………
辺りに酷い臭いがする……まるで1つの悪夢を見てるような錯覚を覚える
「な…何をしているんですか!」
どんな状況でも、それよりも今彼が何をしているかを、私が知りたかった
「えっと……魔物の掃除です」
「ふざけないで!こんなところに魔物なんてでないのに……」
しかも当の本人は無傷で済んでいる怪しさがより深まっていく、だが何とかしようとも手持ちがない、やれるとしても素手しか……
「待ってくれ、何か誤解してるみたいでこっちも対処に困っちゃうから、ほら、魔王とかとは無関係だし」
二本も持っていた剣を投げ捨て両腕を上げる
「そんな事……誰が信じるんですか!!」
誰がと言っても私と彼だけしかいないのに私は何を言っているのだろう
「わかった!わかった!名前と目的を言えばいいんだな!!俺は御崎 浩、神名乗る人にこの世界救うと頼まれてここに飛ばされた一般人!」
私が勝手に困惑しているうちに御崎と名乗る人は自己紹介を始めた向こうが名乗っているのにこちらも名乗らないなんて道理はないし……
「えっと、マリー・メイドレス……です」
どういうことか調子が狂う、理由がわからないが
とりあえず帰ることが出来る保証があるどうか……
「帰すって保証もない状態で自分は無関係、何て言われても……」
言っている最中彼は懐から何かを取り出していた、ほんの小さなナイフだが何故か刃の方を持って地面に捨てる
「何をす……」
「
その瞬間ナイフから弾けるように光り一面閃光に包まれた
視界がやっと安定した頃には彼の姿はなく効力が切れたのか1本のナイフが転がっていた
「何なの……あの人……」
私はナイフを拾ってポケットの中に入れてるハンカチで刃の部分を包んでポッケに入れて寮に戻った。
朝 教室
「んー、ノープ~今日の授業教えて~」
「今日は1時限目から最後まで魔術訓練だって…」
「えぇ~」
私が教室に戻って来たときには、いつもの机の前でノープとクーが話していた
今日の授業は魔術訓練、しかし魔術訓練であるがただ的に当てるとかの訓練とは違い……
朝 森林
「ただいまよりぃ!魔術訓練をはじめる!
皆、対魔力ジャケットは着たな!では旗を取りにぃ……走れぇぇぇぇい!」
『爆炎の雨の中全力で走り、小さな旗を取りに行く』と言うもの、それも森林で
防衛手段は一応認められてるみたいだけど、入学1日目でそれが使えるのは、魔術の天才か防衛本能に駆られて術式を出す勇者くらいだけ
そうじゃない人は走るしか道がなくこれが地獄と言わずして何と呼んだ方がいいのだろうか、少なくとも全生徒は対魔力ジャケットを着けるよう義務づけられてる、ジャケットの効力は少なくとも爆炎に包まれても火傷がないように作られている、痛みだけは強めにお見舞いされるけど……
「イィィィィヤッフゥゥゥゥ!」
クーは楽しそうに走っており途中からジャケットを脱ぎだし、まるで子供のような笑顔で両腕を伸ばして爆炎の雨を駆けてく
「ちょっと、クー!はしゃぎすぎだって!」
ノープもクーが捨てたジャケットで頭を守るように覆いながら追いかける
「すごい度胸……、参考にして大丈夫かなぁ……」
このような時間があと3時間分あるんだよね……
もちろん、こんな訓練をして終わりがない訳ではない、時間が経つか、旗さえ取れば直ぐに終わる、旗自体は動くわけではない
何故か言うと、先生が持っているから……旗を
しかも近寄れば雨の密度が高まりジャケットが燃え尽きる程の量になっていくと言う『普通なら無理』な状態になっている
そんな中を私達三人だけ密度が高いエリアを走っている
「ねぇーノープ!!」
「何ー!」
目の前の状況を見て今更疑問に思った事がある
「なんでクーがジャケットなしでここを走れるのーっ!」
そう、クーである、絶賛正面突破中の彼女がなぜ傷一つもついていないのか
「それはねー!あの子が生まれつき炎に耐性があるのー!だからこうやって走れてるの!」
体質的に火に耐性があるのも珍しいかも、なら得意な魔術もそうなのかも知れないけど……
「じゃあ火なら何だって効かないって事?」
互いに密度が高い弾幕の中、大きな岩に身を伏せて進み、大声で話していると向こう側から二人分の声が聞こえてきた
片側は苦戦しているような声
もう一方は焦っているのか一生懸命に回避に専念してる
「クーが先生の所に着いたみたい、今は取るのに必死のようね……」
「なら助けに行かなきゃ……」
「ダメっ!」
クーを助けに行こうと立ち上がろうとしたらノープに肩を掴まれて身を下げられた
「なんで!」
「さっき立ち上がろうとした所を見てよ!」
言われる通りに見てみるとさっきまでなかった魔術で穿たれたような穴があり、岩の一部が溶け始めていた
「ジャケットはもうボロボロで、クーは先生とやりあってる……弾幕の密度が高く一歩も動けない、そんな状況でここから先に進むつもり!?正気ですか、あなたは!」
「うん、正気だよ……でもなにもしないのと友達を助けるは別だけどっ!」
「ちょっと……マリー!」
身を乗り出し、精一杯の力で走る、走っているだけでも熱いのに空気から熱風が入り込む
ここまで出せる全力は後持って3~4分……その間にこの雨を避けつつ先生にたどり着いて旗を取るしかない
弾幕が来る……でもよく見ると一定の順番で落ちてるようにも見える……見えるなら当たりかけスレスレに避ければ十分
後は疲れ始めたクーと先生の戦いの最中に、どうやって旗を取るか
隙を見て取ろうにも相手は大人、反応に差があると見ていいかも、なら……
「はぁ……はぁ……ちょっと先生、流石にここまで全力で避けなくていいんじゃない?」
「ここまでしなければ、私が国王に推薦した意味がないじゃないか、なるべく長く……後20分程は続けてもらわないと……威信に欠けるんでね!」
「大人げないっ!」
「言われて結構!」
クーがさっきから旗に手を伸ばすが先生が手で捌いたりして避けている、しかし先生も疲れていたのか一歩も動こうともしない
「(なら、狙うのは一点だけ……)」
先生の背を狙うしかない、背後から捕まえて旗を取る作戦
私は気配を隠すように回り込み、背中が視界に入り次第飛び出し『頭を使ってでも』先生の背中に突撃をかける
「わぷっ!」
流石の先生も背後からの一撃が効いたらしく、バランスを崩しかける
「クー、今だよ!」
それを見たクーも何かを察し気合いを入れ直して、旗に手を伸ばす……
昼 教室
「あぁ~……まだやってたかったなー……」
「そんな事言わないでよ……こっちだって本気で死にかけたんだから」
皆が机に突っ伏している、それもそうだろう……つい先ほどまで悪夢のような訓練から解放されて一時間しか経っておらず、皆プスプスと煙を出しながらも暇を持て余していた
黒板には『想定外の自習!!』と書いており、行事上早すぎる段階で終わってしまったのだ
「でもすごいねクーとマリーちゃん、あの中を走り抜けるんだから」
ノープが自らのノートに教科書の要所要所を書き入れつつ聞いてくる
「いやだって……私、火に強いし。」
クーは素っ気なく答え
「何か……行けそうでしたし……。」
私は曖昧だけど、少なくともそう思った事を答えた
「参考にならない情報ありがとう……、でも次からはやめてよね。」
「もうしないよ……」
「うぃー」
そう聞いてノープはため息をつき、書き終えたノートを閉じこちらを向いた
「そう言えば、貴方達も魔力検査受けたんだよね、二人ともどうだった?」
ノープは興味津々に聞いてくる
流石にここは正直に答えたら驚かれそうだs……
「私の方は検査官が驚きの余り椅子から雪崩れるように倒れちゃって……」
そう考えてるうちにノープの方から言ってきた
え?ノープの魔力を見て?じゃあもしかして……
「こっちは検査用の水晶が破裂したよ、そのせいで次の人の時間がかかってしまったよ……」
クーも!?どういう魔力を持ったらそうなるの!?
どう考えても私の方がましに聞こえるんだけど
「私は、水晶が割れずに何故か光の柱が出来ました……」
そう答えると二人は「おおー」と驚き
「じゃあ、私達は魔力までおそろいなんだね」
ノープが言い始めた、確かにそうですね何か……
「言われると見栄えがすごいね……」
「じゃあ!じゃあ!私達三人だけの物を今から作らない?」
「今からって……何を作るの?」
そう問いかけるとノープは机の横に吊るしているバッグを開け、3つの袋を取り出して私とクーに渡す
袋を開けると1本のリボンが入っている
他の二人も同じようにリボンが入っているのがわかる
「……なにこれ?」
「『誰でも作れる!専用アクセサリー』だけど?」
「……あぁー」
そう言えば聞いたことがある、ある店の棚にそんなコーナーが書いてあったのを見た覚えがある、なんでも十分な魔力をアクセサリーに注ぎこむと対象の魔力に応じて何か変化するっていう……一個銀貨1枚で売ってあると言う代物、胡散臭そうだから買ってなかったけど、丁度いい機会ですし
「そうだね……作ってみる!」
「そうこなくっちゃ!クーもやるでしょ?」
「友達からのプレゼントを貰ってる以上、やるよ」
皆の意見が合い早速始める、リボンを手に持ち目をつぶってイメージをしてみる……あの検査で起こった事そのものをリボンに詰め込む……
そろそろ何か変化してもおかしくないと思い、目を開けてみると
「……っ!?」
リボンが変わってる……さっきまで白色だったのにもっと良い素材で縫ったような輝きを出している
他の二人の方を見るとノープはリボンが風が来るような透き通るような水色に、クーはその逆で今にも燃えそうな橙色にと、それぞれの個性に合わせるように変わっていった
「すごい、本当変わったんだ……」
「……すげぇ」
二人もリボンが変化したのを見ては驚きを隠せず声が漏れていた
「自習終わったら、鑑定屋に行きます?」
私が二人に言うと二人とも同じタイミングで首を縦に振った
放課後 鑑定屋
やっと自習が終わり、三人でスキル鑑定を頼んでみた
入ってみると道具屋と大差変わらない内装で、一つ違うのは青年が店主で今は床を掃除していた事
「あのー、鑑定を頼みに来ましたー」
「あっ、ちょっと待っててー!」
店主が掃除を終わらせ数秒後、作業服なのか全身を着替えた後から店を開ける、店台の横には『1人銀貨三枚』と書いてある看板が置かれている
「いらっしゃい、何を見るんだい?」
「この3つのリボンの鑑定をお願いします」
そう言い、3つのリボンを出す
「はいよ、銀貨1枚ね」
「あれ?看板だと1人……」
「お嬢ちゃん方学生だろう?なら一人前になるまで割ってやるからさっ」
そう言いながら水でできた玉を置き、そこにリボンを入れてく
鑑定内容は独特で鑑定物を水晶玉サイズの水に入れ、特殊なレンズを使って見ていくというもの、無論このリボンも例外ではなくしっかり中身が見れるようになる
「それで……どうなんですか?」
レンズで確認中の店主に問いかけると、待ってと言わんばかりに右手を出した、余程真剣に作業している
「…………君達、あの学院に来て何年経った?」
「入学から1日しか経ってませんけど……」
「え?」
「え?」
店主、私の順番で固まり……店主が顔を上げた
「これ……大事に持っといた方がいいよ、君達の為にもなる」
そう言いながらリボンを返し、紙にリボンの内容を書き始めた
「これ作った人は
そう小声で話しながら紙を差し出す
「……?」
なんででしょう……と思って紙を見た所……
《マリーのリボン》
[詳細]マリーの魔力がこもった、輝きが失うことがないリボン
《スキル:魔力解放(魔力量に応じて速さと攻撃に最大1000の補正)》《スキル:聖剣生成(特定の条件下で持ち主の武器に「聖剣」のカテゴリに追加後、変質する)》の効果を持つ
《クーのリボン》
[詳細]クーの魔力がこもった、今にも焼けるように熱い橙色のリボン
《スキル:鉄火の誓い(鉄属性が炎属性と同じ適性になる、《スキル:武具生成》が魔力のみで作れるようになる)》《炎属性吸収》の効果を持つ
《ノープのリボン》
[詳細]ノープの魔力がこもった、青空のようなリボン
《全属性耐性》《スキル:ピンポイント・アナライズ(対象のステータスを確認することができる、《
「……っ!」
息を飲んだ、こんな効果になるなんて流石に思わないけど……
私は恐る恐る紙を返し、リボンを受け取った
「決して口外はするんじゃないぞ、これは危険すぎる……」
「……わかりました、友達に返してきます」
「後な、嬢ちゃん……」
私の去り際に店主が聞いてくる
「その白色リボンは今からでも着けといてくれ、製作者も持ち主も嬢ちゃんなら、着けても誰も文句はないだろうし、そもそもこんな事を友達が知った所で危険な時に着けるよう言っておけば、友達も無事に帰ってくるもんだ」
「……ご忠告、ありがとうございます」
そう言い、店を出てきた店の外には二人が待っていて
「マリー!リボンどうだった?」
ノープが興味本位で聞いてきたので「危険な時に着ければ損はないみたい」と誤魔化しておいた
「さて、そろそろ寮に帰ろっ」
「そうね、もう日が暮れてきてるし…」
その後、三人で寮に戻った……戻ろうと言った途端クーが何か隠したのを気づいたのか視線が私の方に寄っている
「(クーちゃん……もしかして気づいてないよね?そう考えたくないけど……)」
そう考えたらノープが寮の部屋に入った後、私も部屋に入ろうとするとクーが近づき小声で
「ちょっと外で話を……」
と言われた、やばい……クーやばい
言われる通りに外に行くと、クーが不服そうな顔で待っていた
「あのー……何?」
「何?じゃないよ、何か隠してるだろ?私は勘でわかるんだ」
あなたのような勘の良い友達は嫌いじゃないけど……
「リボンの鑑定が終わったら顔色が変わってたんだ……何かおかしいと思って、友達として問いかけてるんだ、なぁ……何があった?」
突きつけるように話してくる
流石にこれ以上は隠しきれないよね……ごめんなさい店主さん、早速約束を破ります
私は事情を話した……リボンの効果が異常な事、そしてこれは口外禁止であることを
「ははぁ……そうゆうことね」
クーは一切驚かず頷くように聞いてくれた
「言わないって約束できる?」
「なに言ってんだ、私を誰だと思ってる?私はクー・サキジマ、逃げも隠れもできるけど誓って約束は守る女だぜ?」
あまりにも説得力の塊のような自己紹介をされて思わず驚いたけど約束は守ってくれるみたい
「よかった……でも、自分の身の危険が迫ったら着けてね、私もそうしてるから」
と左手首に固結びで結んである
「そうだねぇ……こんな感じか?」
とクーも左手首に蝶結びで着ける
「そうそう、着けるだけで効果がすごいから本当に身の危険が迫った時だけね」
「あははっ……わーかってるって!こっからもよろしくな、マーちゃん!」
クーに背中を叩かれ、先に部屋に戻ろうとゆっくり進んでた
「マーちゃんって……それ私の事?」
そう言ったら後ろを振り返り
「そうだよ、友達よりも近い感じするだろ?」
「まぁ、悪くはない……かな?」
何かクーの方から距離を一瞬で縮めてきたような気がする
そう考え、部屋に戻りベッドに寝っ転がり、眠りについた
その先の事を不安がるよりかは……遥かにましだと思いながら
続く
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