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あの日……あの人とぶつかった時から、運命は変わったと思う

勇者がいて 魔王がいて そして魔法もある………

そんな夢のような世界と

おとぎ話にも似たような事がありそうな出会い方をした……あの時から。


朝 王都フロム 城下街


「いってきまーす!」

家から出てきたのは年頃の女子、茶髪で灰色の目をしたごく普通の人間、学生服を着ており、胸元の紋章には「フロム・高等魔術学院」と書かれている

「なんで時計止まって……なんて言ってる場合じゃないよね!遅刻遅刻!」

途中途中から近道や裏道といった所に走り、ただひたすらに最短で行けるルートを走っていく

「お!、マリーの嬢ちゃんしゃないか、初日から遅刻かい?」

学院へ走っている最中に道具屋のおっちゃんが話しかける

「すみません!今、話してる時間もないのー!」

しかし、話をする余裕すらない彼女には未だ走る足を止めず、謝りつつ走り去っていった……

魔術学院まで後少し……

「この道を曲がれば…」

そう……その時だった

「…っ!?」

「きゃっ!」

曲がり角を通る所で人にぶつかった

彼は彼女と同じような年だが学生服を着ておらずぶつかった少女を見ていた

なんで?ここは誰も歩かない秘密の近道なのに?

考えている内に遅刻している事とぶつかった時のケガがあるかどうかの事が浮かんだ

「ごめんなさい、ぶつかっちゃって…ケガとかは…」

「……!」

彼は突然何かに気づいたのかすぐに立ち上がって裏道の方へ走っていった

「何なの……一体……あっ」

時間がない間に合うかな?

内心そう思いながら学院へ


フロム・高等魔術学院

それはこの王都では最高のそして剣士や魔術師なら必ずと言っていいほどに通る門のような学院である、基本は全寮制で家に帰るのは許可を貰えた時だけである


少しのアクシデントはあったがギリギリ「初日に遅刻をする事」は免れたのだが、相当長く走った疲れからか途中から入学式の内容はよく覚えてない

でも、明日からこの学院で学んで……

と意気込みを入れつつクラス確認で自分の名前を探す

(B-1 マリー・メイドレス)

「(B-1ね、ここから少し進んで……)」

後はその教室に行くだけ、そう思いたどり着いた教室で待っていたのは丁度出ようとしていたこの教師らしき人物

白衣が特徴的な大人の女性、その女性が煙草を吸いながら

「ん?どうした、まさか迷ったなんて……あるか」

自問自答をしてから教師は煙草を消し

「入学式の話を聞いたか?クラス分けをしたら次は魔力検査、そこの廊下の突き当たりを真っ直ぐに進むとある保健室で行うって」

「え?」

それは聞いてない、というか少し寝てたから聞きそびれたとは、口が割けても言えない

「あ、ありがとうございます、きょ、教室を見てみたくてつい……で、では!」

少々焦りつつも言われた通りに進んでいく

「ならいいけど、次は迷うなよー」

保健室に着いたときには自分で最後だったようで検査の人も少し退屈そうにしていた

「すみません、遅れました」

検査の人は私が来るなり姿勢を直し準備を始める

「では、手を水晶に」

この世界の魔術は個人個人の魔力に応じて依存する

その分得手不得手も生じており中には

『出力が弱く、効力が高い』『射程が長く、威力が低い』といった長所短所がしっかりと対象の個性に応じた魔力が出てきてしまう

ただし……勇者という例外がいるが

私の場合はそうでした、水晶にヒビが入るほど強く、より長く、そして輝いていた


「はぁ~ぁ……疲れた~」

検査中に検査の人揺らされたり才能があるとか言われたりとやや5分、教室での自己紹介が終わりやっとたどり着いた自由時間

私は腕を伸ばし自分の机に突っ伏していた

窓際の席で日も良く眠たくなりそうなこの時間に割り入るように見知らぬ二人が来た

「なぁ、お前も寝てないで学院内見てみよーぜ!」

あまりに男勝りな声の方は銀髪で黄色の瞳

「眠っているのに……ごめんなさいね」

それとは真逆の落ち着いた声の人は水色の髪で茶の瞳をしていた

「いーじゃん!先に見に行った方がいいときもあるし、教室も覚えれるし、便利だろ?」

「それはまぁ……そうだけど」

互いの意見が出てくる、余りに仲良さそうだったので「クスッ」と少し笑ってしまった

「いいよ、まだわからない所もあるし、少し回っていきましょ?」

机から立ち上がり私はこうも答えた

「それと、自己紹介だね」

「おう、俺はクー・サキジマ」

「私はノープ・アキサメ」

二人は自らの名前を言い私も名乗る

「私はマリー、マリー・メイドレス、よろしくね」

握手を求めたらクーの方から握ってきた、ミシミシ音がしてすごくいたい

この反応にクーは気づくなり早くに離した

「おっとごめん、こう見えて家のとかで力仕事してたからつい……」

「いや、平気平気(正直すっごくいたい……)

そろそろ時間になりそうだし、どこから回ります?」

「ん?もうそんな時間なのね、この様子だと近くしか回れないよ、どうするの?」

「どうするって言われてもな……」

二人ともノープラン、正直近ければいいんじゃないかな?程度で話に乗ったけどこれはひどい

近くて何かありそうな所……所……あっ

「図書室はどうでしょう」

「えー図書室ぅ?」

「いいじゃないですか、何もない教室を選ぶだけましじゃない」

「って言われても……良さそうな本を見るだけ行こう」

こうして私達3人で図書室に行きました

……ノープが興味津々に本を読んでて、クーは武術書を見つけたのか静かに読んでいました


教室に戻った3人はすぐに馴染みました

お互いに共通の話題があって、好きなものを言い合いそして偶然が続くように寮の部屋割りでも隣同士でした(部屋の中身は普通の宿屋と対して変わらなかった)そして、私の学院生活が始まった


早朝 寮室

「ん~……良く寝たぁ……」

また動かなくなった目覚まし時計を叩く

授業が始まる前や放課後は外出は自由だし入学後だからと町に出てみた

余りに早く起きすぎたのかどこもお店が開いていない、それどころか人の気配すらない

「もう一回寝ようかな?」

そう言いつつ寮に帰ろうとした時

ぐしゃ……と音がした

「なんだろう?」と言いながら音のした方へ行く、音の出所は路地裏まで続き私は音を辿って歩いていった

音が近くなるにつれこの音が何なのかはっきりとわかってきた、何か肉とかを叩いたりするような生々しい音、そろそろ見えそうだけ……ど……

「……え?」

路地の先には昨日の朝に会った人が市販で売ってある片手剣を2本持ち、返り血の付いた革の上着を着て、魔物の死骸の山を作っていた。


続く

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