二章 そうアニメに関しては全力投球だ

 カラオケ店に入りの飲み物を注いだのを持ってヒカルが音頭を始めていた。

「それでは皆さん乾杯!」

「「乾杯!!!」」

 他の人たちも盛大に言っていて俺も小さな声で言った。

「カンパイ……」

 ヒカルは女子たちにブサイクな顔をして笑っていた。

 ああ、今回も無理だな。

「えっと。知ってるかもしれないけど自己紹介などしませんか?」

「そうね……」

 学園のアイドルが頷いてマイクを持っていた。

 え、マイクで挨拶かよ。嫌だ……。

 自分の自己紹介など女子の前ではしたくない。というか、逃げたい……。

「私の名前は黒田くろだ 志保しほって言います」

 名前を言った瞬間。ヒカルと鉄也が黄色い歓声をあげていた。

「いいね! 志保ちゃん!」 「可愛いよ! 志保ちゃん!」

 志保はその声援に応えて手を振っていた。

「ありがとね」

 ああ、こうやって女子って色目を使うんだよな。

 そう女子なんか信じるだけ無駄……。

『本当に夏来くんって、面白くないよね』

『そうそう。からかったら釣れてるのアイツ』

『それはウケる。あはは! あいつなんか――』

 やめろ……。

「――はっ!」

 一瞬だけ嫌な思い出が脳内にフラッシュバックとして蘇ってきた。

 災厄だ……。早く帰って前作のゲームを4周目にいきたい。

 ヒカルの玉砕の話しはまた後でも聞けるから今は帰ろう……。女子の前は流石に気分が悪くなる。

 どう帰る言い訳をしようか……。

 そして志保が隣の座っている白髪の子にマイクを渡していた。

「えっと……初めまして。小島 つばさです……。好きな物はアニメとゲームです……」

 つばさは頭を下げて二人はまた黄色い歓声をしていた。 

「つばさちゃん! 小さくてかわいいよ!」 「かわいいよ!」

 そして三人目の最後の女子にマイクを渡していた。

 俺は近くにいた鉄也に肩を叩き。小さな声で呟いた。

「俺、腹が痛いんだが帰ってもいいか?」

 腹を摩って頭を下げる。いつも女子から逃げている方法だ。

 けど鉄也は首を縦には振ってはくれなかった。

「まだ女の子が自己紹介しているだろ。逃げるなって」

「……あぁ」

 本当に腹が痛くなってきた……。

 三人目が終わりマイクをこっちに渡してきた。

「……どうも」

 高校の自己紹介と同じように覇気のない感じを出せばいいな……。

「柏木 夏来です。……アニメとゲームが好きです」

 鉄也にマイクを渡して次に回す。

「……ふぅ」

 ソファーに寄りかかり鉄也の残念な武勇伝を聞きながら俺はコーラを飲んでいる。 

 ……決まった。

 自分の中でも会心の覇気のない普通な感じだ。

 うんうんと自我自賛しながら頷いていると一点だけなんか視線を感じる。

「ん?」

 見てみると白髪の子がこっちを見ていたが視線を合ったのがすぐに視線を逸らせれた。

 まさか空気になれてなかったか?

 どこか可笑しかったところはないか考えてみるが自己紹介は普通だ。というか俺は薄味にした分、二人が濃くしたんだがな。

 いや、普通に誰なんだと確認しただけか……。

 多分そうだな。

 そう自分に納得させて俺は鉄也とヒカル達の武勇伝を聞いている。

「――ありがとう」

 ヒカルは立ち上がり腰を90度ぐらいまで頭を下げてお辞儀をしていた。

「それじゃあ歌でも歌いましょうか!」

 ヒカルは曲を入れて歌い始めて女子に選択画面の機械を渡して選んでいた。

「俺も何か歌うか……」

 何曲か歌ってから用事があるからって言えば大丈夫だな……。

 そして俺が歌う曲が流れ始める。 

 するとヒカルが何か言ってきた。

「夏来! 全力で歌わなかったら2次会だからな!」

 マジかよ……。逃げられないとか最悪だろ……。

「まあ、アニソンに関しては全力で歌うから心配するなって」

 そうアニメに関しては全力投球だ。

 俺を救ってくれた。ヒロインなんだから……。  

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