第72話 お家おでん

 10月25日の日曜日。今日もメルヘンタオルシティは元気なお日様が顔を出す、とてもいいお天気です。パレットは前日に夜ふかししたのもあって、ずーっと眠り姫でした。起きたのは11時にも迫る10時55分。目覚めた彼女はすぐに置き時計を確認して、目を疑います。


「……うえーっ? マジ?」


 別に特に予定がある訳ではないのですが、起きてすぐの食事が昼ごはんと言うのもちょっとしたショックには違いありません。ただ、今日一日はパジャマで過ごしてやろうと目論んでいたパレットは、すぐに考えを切り替えました。


「ま、いっかぁ……」


 ベッドから起き上がった彼女は、ハッキリと目覚めるために窓に向かいます。ガラッと窓を開けると、そこには秋晴れの素晴らしい景色が広がっていました。パレットはじいっとお日様を見つめて、ペコリと頭を下げます。


「今日も一日よろしくお願いします」


 その後は、歯を磨いたり顔を洗ったり。昼食の時間も近かったので朝食はお預けです。目覚めの儀式が終わった後は自室に戻ってテスト勉強。教科書とノートを見直して問題集的なのをちょっと解いて。

 その内にお昼になったでの昼食を片付けてまた自室に戻るものの、この時点でもう彼女のやる気メーターは0になっていました。


「録画してたアニメ片付けなきゃ」


 そこから2時間ほどはテレビ画面に釘付けです。アニメを見終わったらネットサーフィン。この頃には既に勉強の事はすっかり頭から消え去っていました。ネットの流れからカクヨムに自作の連載作の続きをアップしたり、フォローしている作品を読んだり、ランキングをチェックしたり……。そうこうしている内に日も暮れてしまいます。


「うわ、一日が過ぎるの……早過ぎ?」


 暮れていく秋の景色を眺めながら、パレットの心はすっかりおセンチに。やがて気温もゆっくりと冷えていき、ピシャリと窓を閉めます。そうしてまた気を取り直すと、もう一度教科書とノートを開いて復習に取り組むのでした。


 その日の夕食はおでんです。お鍋には沢山の野菜とこんにゃくと卵。それとがんもどきにちくわ。お肉は入っていません。それでもパレットは美味しく頂くのでした。


「どう?」

「うん、美味しいよ」


 母親から味を聞かれた彼女は即答します。このおうちおでんの中で、パレットの一番好きなメニューは卵でした。普段から卵が好きなので当然かも知れません。ちなみに、母親の好きな具はと言うと――。


「私ね、こんにゃくが好きなの」

「知ってる。だからこんにゃくは残してるでしょ」

「こら、パレットも食べなさい!」

「はぁい……」


 母親の好きなこんにゃくがあまり得意ではなかったパレットは、親切に見せかけた作戦が見抜かれてため息を吐き出します。その仕草が母親には受けたようで、食卓は細やかな笑いに包まれたのでした。

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