第73話 最後の足掻き
10月26日の月曜日。今日も晴れ。中間テストは明日からです。テスト目前と言う事もあって、パレットのクラスもテストモード全開でした。そこかしこで全然勉強してねーよ的な言葉が飛び交っていますが、それが真実はどうかは分かりません。
パレットも教科書を眺めますが、謎の緊張感も手伝って全く知識が頭に入ってこないのでした。
「うわああああ」
「おっ、焦ってるねパレチー」
「ミッチーは平気なの?」
「ある程度はね」
パレットの席にやって来たミッチーはいつも通りの表情です。普通に振る舞う彼女を見て、パレットも少し落ち着きを取り戻しました。
「流石だね。猛勉強して余裕なん?」
「いや。余裕はあんまないけど、テスト範囲はまぁまぁ把握したかなと」
「もう明日だもんね……。あ~昨日ミッチーんちで一緒に勉強したら良かった」
「今日一日あるじゃん」
平常通り振る舞うミッチーは、パレットからは強者の余裕を持った歴戦の戦士に見えます。今までの成績から言っても、ミッチーの方がテスト順位は上。なので、彼女は思いっきり泣きつきました。
「助けてー! ミッチーえもーん!」
「パレチー、成績は現状維持ぐらいで良かったんでしょ?」
「何か不安になってきたんだよー」
溺れる者は藁をも掴むと言いますが、この直前になってパレットは今の自分の状況があまり好ましくない事を自覚したのです。成績も現状維持ならいいのですが、それよりも下がる可能性がある気がして来たようなのでした。
「今からでも何とかなんないかな~?」
「パレチーは何が苦手なんだっけ?」
「理科と数学」
「私もあんま得意って程じゃないんだけど……」
休み時間の短い時間ではちゃんとした勉強は出来ません。なので、この問題は出そうだとか、この解き方は覚えておいた方がいいとか、そう言う大雑把な指摘をミッチーから教わります。友人からの有り難いアドバイスによって、パレットの心の天秤はある程度傾きを軽減させる事が出来ました。
「助かるよー! ミッチーえもーん!」
「いや分かったから。その呼び方は止めて」
ウエストゴー学園の中間テストは10月27,28日の2日間。果たしてパレットは一夜漬けでどこまでブーストが可能なのか。それは本人ですら未知の領域です。残りの休み時間全部と帰り道にパレットはミッチーからレクチャーを受けました。友人からのアドバイスは分かりやすく、段々とテストに対する心構えも出来てきます。
帰宅後、この日に限ってはしっかりとテスト勉強に集中したパレットは、迫りくる強敵に向けた最後の足掻きを強行するのでした。
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