第51話 秋アニメ

 10月5日の日曜日。天気もいいと言うのに、パレットはテレビにかじりついていました。新作のアニメの吟味のためです。クールの途中からは見る番組も厳選が終わり時間にも余裕が出来るのですが、クールの最初は毎回こうして見られる環境の作品を全てチェックし終わらないと気が済まないのです。


 ちなみに、パレットの好みは少年漫画系の作品です。バトルがあればなおよし。恋愛系は苦手ですが、意外ときらら系は大丈夫だったり。頑張るぞい。

 と言う訳で、今日も彼女はテレビとにらめっこしながら時間を消費しておりました。


「ふいー。何とか昨日の分までのめぼしいのはチェックし終わったかなー」


 週末はアニメの放送が多く、だからこそ番組チェックも大変です。放送作品が少ない日は絵柄と話と演出のどれかが良ければ見る事にしている彼女ですが、放送の多い日はその全てを合格点にしないと追いきれません。

 普段パレットがアニメの話題を気安く出来るのはミッチーだけなので、当然彼女の好みも外せないのでした。


「やっほー、遊びに来たよー」


 そんな幼馴染みが今日もまたパレットの家にやってきました。昨日盛り上がったアニメ談義の続きをしようと約束していたのです。

 この日のミッチーは、毎月読んでいるアニメ雑誌を持参してきていました。


「やっぱ吟味するなら紙メディアでしょ」

「毎月買ってるの? 大変じゃない?」

「ウチは家族でアニメ見てるからさ。親が買ってきてるのだよ」

「おお~。いいな~」


 彼女が持ってきていたのはニュータイプ。KADOKAWAの誇るアニメ雑誌です。ページ数も情報量も多く、昔からアニメ好きも大満足の一冊として有名ですね。ただし、お値段もそれなりなので、お金のない学生達にとっては憧れの一冊なのでした。

 既に読み込んだからとミッチーはパレットに雑誌を渡します。情報に飢えていたパレットはそれを貪るように読み耽りました。彼女が集中してページをめくっている最中、その様子をミッチーが楽しそうに見つめます。


「私が気になってるのはさ~。やっぱ『神様になった日』だよね~」

「ああ、感動系の話だっけ~?」

「そうそう、力入ってるみたいだよ~。パレチーはどうよ?」

「私? うーん……呪術廻戦かなぁ……」

「あ~。いいよねあれも」


 そう、ミッチーのアニメの好みはアニオリ作品。とにかくアニオリが好きで、アニオリだったら多少好みからズレていても楽しむ性分だったりします。アニオリ以外では有名な漫画原作モノが好きで、あんまりラノベアニメやゲーム系アニメは好きじゃない様子。そこは創作が漫画の彼女らしいとも言えます。

 友人のおすすめを聞いたミッチーは、続けて今期の傾向を口にしました。


「今期って新規の作品があんまないのも特徴なのかもね……。続編やリメイクが多いし」

「そう言うの、今後も続くのかもだよね。特に人気作は続編が出なきゃって感じじゃん」

「続編は分かるけど、リメイクって何なんだろうね……。世の中にはまだまだアニメ化を待つ面白い原作が溢れてるのになぁ……」

「私達の親世代需要じゃない? 私は面白ければありかなー?」


 このパレットの持論を聞いたミッチーは口を尖らせます。


「あ~あ、あたしゃオリジナルアニメをもっと見たいよ~」

「私はもっと作品数を絞って欲しい。今の半分くらいがいいな~」

「あ、それあるよね。作品数が多くなるとクオリティ下がっちゃうし」

「や、私は単に放送しているアニメ全部追いたからが理由なんだけど……」


 多少意見がズレているのも2人にとってはいい刺激。その後、パレットの部屋に笑い声が響きました。こうして、アニメ談義は尽きる事なく続いたのです。


 秋アニメはまだ放送が開始されたばかり。全て出揃うにはもう少し時間がかかります。雑誌を読んで情報を補完しても、実際に見て確認しない事には好みに合うかどうかは分かりません。

 と言う訳で、パレットの苦悩はまだしばらく続いてしまうのでした。

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