第36話 卵が好き!

 9月の連休に入りました。4連休のシルバーウィークです。当然パレットはお休みのスケジュールに従って、朝は遅くに目覚めて寝転びながらネットの海を泳いだり。夏休み同然のだらけっぷりです。予定なんてものは何もありませんでした。


「しやわせえ~」


 昼になってお腹の空いた彼女が台所に向かうと、そこには――。


「あれ?」


 またしても昼食が用意されていなかったのです。そこで彼女は記憶を辿りました。昨夜の夕食時の事です。その時にかかってきた電話を受けた両親が慌てていた事を。

 当時、パレットはテレビを見ていたのでその時に話していた両親の言葉はほぼ上の空でした。確か親族に何かあったので朝から出かけなくちゃいけないと言う意味の言葉を聞いた気がします。

 一緒に行くかどうか聞かれたので、ノーと答えたような気がしました。


「ああ!」


 それらしき情報を思い出せた彼女は、ポンと手を叩きます。


「確かご飯は用意するから、おかずは何でも作って食べてねって話だった……」


 パレットは早速冷蔵庫を開けて、おかずになりそうなものを探します。何もなければインスタントラーメンでもいいやと思っていました。家庭科の授業で料理は習っていましたし、簡単なものなら作れる自信もあります。

 肉も野菜もそれなりに揃っていましたけど、彼女のお目当ては別の食材でした。


「あった!」


 庫内を見渡して探し出したそれは――卵。パレットはホクホク顔で卵を2個取り出しました。そうして冷蔵庫を閉じます。そう、卵以外はいらなかったのです。


 フライパンをコンロにかけると、ご飯を用意しました。当然丼です。ご飯の準備が出来たら油を引いて卵を投入。ジュワーッと焼ける音が台所に響きます。その音を聞きながら、塩コショウを一振りした後に菜箸で一気にかき混ぜました。程なくしてスクランブルエッグらしきものが出来上がります。簡単です。超手抜き料理です。


「出来た!」


 パレットは出来上がったそれを丼の上に滑らします。後はその上からケチャップを適当にかけてなんちゃって玉子丼が完成。これがパレットの大好きな料理だったのです。母親といるとをあれを入れろこれを入れろとうるさいので、逆に誰もいない時は材料をシンプルにして自由を謳歌するのでした。

 料理も出来上がったと言う事で、パレットは早速それを口に放り込みます。


「くぅ~。至福~」


 ご飯と卵とケチャップが織りなす味と触感のハーモニーに、箸の動きが止まりません。バクバクと豪快にかき込んで、彼女のお腹は急速に満たされていくのでした。

 最後まで一気に食べて、コップの麦茶をゴクリと一口。こうしてパレットは連休最初のランチを堪能したのです。


「やっぱ卵が最高だなぁ……」


 食事を終えた彼女は食器を洗って片付けて、録画していた番組を見るためにリビングに向かいます。その途中でミッチーが遊びに来たので、そこからは2人で午後の時間を楽しんだのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る