第27話 やっぱ自作に自信がないとダメ! 虚勢でいいから!
真昼にゲリラ豪雨のあったメルヘンタオルシティ。この雨のおかげでまた一歩秋が深まりました。この降雨時、パレット達は教室にいたので濡れる事はなかったのですが、雨の勢いが強くてプチパニックになってしまいます。
「うわああああどうしようパレチー! 傘持ってきてないようー!」
「おおお落ち着いて! 帰るまでに止んでるかも知れないし!」
「何で天気予報はずっと晴れの予報だったのおおお!」
「ほんとそれえええ!」
結局雨は一時間ほどでカラッと止んで、帰宅時に困る事はなかったのですけどね。その後も何やかんやあって放課後になりました。2人は雑談をしながら視聴覚室へと向かいます。
引き戸を開けると、今回はすぐに大西先輩が振り返りました。
「おっ来たね、まぁまぁ近うより~」
「は、はい~」
呼ばれるままにパレット達はいつもの定位置へ。段々先輩のと距離が近付いて来ているような気がして、パレットは少し嬉しくなりました。
「先輩はいつも何を書いてるんですか? 愛好会の作品?」
「ああ、これは個人的なやつよ。授業中は書けんけんねぇ」
「家に帰って書かないんですか?」
「家でも書きよるよ。たださ、アイディアって思いついた時が一番新鮮やん?」
パレットは先輩の考えに軽く感動します。彼女も創作を趣味にはしてましたけど、執筆は専ら夕食後からお風呂に入るまでの時間でした。何故なら、その時間にしか執筆に向き合えなかったからです。それ以外の時間は、何か思いついても他の事を優先してしまっていました。
「私、執筆はいつも同じ時間になっちゃうんです。まだまだですね」
「いや、執筆スタイルは人それぞれよ。パレットはパレットの書き方を楽しめればそれでええんやない?」
「ありがとうございます! 他に何かアドバイスみたいなのありますか?」
「おお、今日は積極的やねぇ……」
パレットに迫られた先輩はいつもと違う雰囲気に若干戸惑い気味でしたが、少し嬉しそうな表情を浮かべます。そうして顎に指を当てると、少しの間考え込みました。
「あ、自作の事を駄作ですとか言っちゃうのはナシ! 自分ではそう思ってなくても、むっちゃおもろい作品ですって胸を張らんといかんよ」
「うーん、それ難しいです。だって私本当に下手っぴだし」
「じゃあ読む側に回ってみ? 作者が下手と公言している作品、読みたなる?」
「ああっ!」
先輩の鋭い一言にパレットは心を貫かれます。確かに作者視点だと自作に自信がないと素直にその気持ちを口にしてしまいがちですけど、読者視点になると印象は最悪になります。読む前からつまらない作品だってイメージが付いたら、誰だって読もうと言う気は起きないでしょう。
彼女が感動に打ち震えていると、ミッチーがずいっと身を乗り出してきました。
「そうだぞパレチー! あたしなんて新作を発表する時はいつも最高傑作だって言って公開してるし!」
「おお~」
「ま、それでもPVは実力通りなんだけど」
ミッチーはそう言って笑います。その笑いにつられて全員が軽い笑いに包まれました。その後は創作談義も何となく終わり、好きなアニメの話とかに移ります。それぞれのこだわりの話をしている内に時間は過ぎて、あっと言う間に下校時間になったのでした。
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