第24話 流行が循環する理由
9月最初の日曜日、パレットがのんびりしていると、リビングでパレットパパに出会いました。彼は暇を持て余し気味で、のんきそうに雑貨関係の雑誌を読んでいます。そこで娘が近付く気配を感じた彼はおもむろに顔を上げました。
「おおパレット、おはよう」
「ちょ、父さんだらしない」
「は? これがいいんだぞ」
「いやダサいって」
パレットパパはシャツをだらしなく外に出す着方をしていたのです。それを見た娘が不快感を示すのは当然の流れでした。とは言え、そんな忠告を父親は右から左へと華麗に受け流します。
「父さんの時代はな、シャツインの方がダサかったんだ」
「え? マジなん?」
「だから今更シャツインが流行っても受け入れられんのだなあ」
「うっそだあ……」
父親の話を信じられないパレットはその昔話自体をスルーしました。その態度にカチンと来たパレットパパはパレットママを呼びます。ちょうどその時間に洗濯物を干し終えてリビングに向かっていた母親は、うまい具合に話の輪の中に入りました。
「父さんの服装? 普通じゃないの?」
「ええっ? ダサくない?」
「私達の時代はみんなこうだったのよ」
「マジか~!」
母親の証言でようやく父親の言葉を信じたパレットは、少し頬を膨らませながらソファに座ります。そうして、改めて両親に向かい合いました。
「でもさ、何で流行って繰り返されるんだろうね」
「そりゃ……飽きるからじゃないか?」
「お父さん、それ違う。そのファッションが当たり前になるとそんな着方をした層が自動的に歳を取っていくでしょ。するとどうなる?」
夫の言葉を否定した妻は娘に質問を投げかけます。この突然の流れに、パレットは若干戸惑いながらも、手を顎に載せました。そのポーズのままうつむいた彼女はしばらく思考を巡らせます。
両親が辛抱強く待っていると、答えに辿り着いたパレットが顔を上げました。
「そっか、それがおっさんのファッションになると若者はダサく感じるんだ!」
「なに~っ!」
「正解!」
「「あはははっ!」」
この説は飽くまでもパレットママの持論ですが、娘もその説に深く納得します。若者はおっさんのファンションを否定するのが常ですからね。だからこそファッションはどんどん古くなり、そして新しくなるのです。
この話題、何故か女性陣だけが変に盛り上がり、家庭内唯一の男性は蚊帳の外。危機感を感じて何とか2人の会話の輪に入ろうとするものの、パレットパパの入る隙間はありません。
何となく居心地の悪くなった彼は家を出て、近所の散歩に出かけたのでした。
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