第15話 コーヒー
8月も終盤も終盤、ついに最後の週末になり、パレットは自室で残った宿題をヒイヒイ言いながら片付けていました。もちろん好きな事ではないので集中力は続かず、ついつい他の事もしてしまうため、進みは亀のように遅いまま。それが彼女のストレスを更に溜める結果になってしまっていました。
「うう……眠い。まだ終わらない。しんどい。もうやだ……」
終わらせなければならない宿題のひとつのポスターは、色が中途半端に塗られています。彼女、線画までは好きなのですが、彩色がとにかく苦手。それもあって一枚の絵を仕上げるのにかなり時間をかけてしまいます。
気がつくと、もう窓の外は真っ暗になっていました。
「うふふ……。今日は秘密兵器があーる! これで勝てる!」
部屋の照明をつけて背伸びをしたパレットは、先日の買い物で買ったアイテムを手に取ります。それはディオで50円で売っているオリジナルブランドの魔剤――ではなく、缶コーヒーでした。しかも、眠気に勝つために普段だったら絶対に選ばないブラックコーヒーです。ちなみにお値段はエナドリとほぼ同じ。これなら気楽に手が出せると言うものですね。
コーヒー缶を手にとった彼女は、まず思いっきりシェイクします。そうしてゴクリとつばを飲み込むと、プルタブを押し込みました。
「初ブラック……どんなかな……」
期待と不安の渦巻く中、パレットはブラックコーヒーを喉に流し込みます。ブラックは大人の味と言うイメージだったので、これで大人に一歩近付いたような気がしました。そうして、すぐに飲むのを中断します。
「まずーっ! 何これ!」
口の中に広がった苦味はまだ14歳の少女には合わないものでした。ブラックのコーヒーは、コーヒーと言うより苦いお茶のようなそんな感覚です。この味を美味しいと思える日が来る事はないなと、この日の彼女は実感したのでした。
それでも何とかポスター作業が詰まる度にだましだまし少しずつ飲み続け、完成した頃に何とか全部飲み干せます。
「うーん、まぁこんなもんでいいや。終わりっ!」
完成したポスターは妥協の産物で、ぶっちゃけやっつけ感満載。それでも描きたくて描いたものではなかったので、これでヨシとしたのでした。
時計を見るともう寝る時間だったのでお風呂に入ってベッドに潜り込みます。けれど、さっき飲み干したコーヒー効果でずーっと眠れなくて、謎の妄想ばかりが頭の中で繰り広げられてしまったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます