第14話 ディオ

 夏休みの宿題もあらかた片付いたと言う事で、パレットとミッチーは2人でお出かけです。まずは田舎のお約束でイオンモールへと向かいました。最初の目的地はイオンシネマ。そこで今割と話題になっている映画を観たりして、宿題漬けだった自分達の心身を癒やします。


 映画はテレビで散々CMをしていた海外のハートフルコメディ。ハッピーエンドですっかり心が癒やされて映画代分の満足をした2人は、そんなほわほわした気持ちのまま劇場を後にします。

 エスカレーターで一階に降りたところで、パレットは振り返りました。


「映画面白かったね~」

「次どこ行く?」

「買い物もいいけど、やっぱあそこっしょ」


 彼女が向かった先はペットショップ。ミッチーもそのままついていきます。2人共ペットを買える程お金持ちではないのですが、動物園気分でショップのペット達を気の済むまで眺めるのでした。


「ああ~ワンちゃんかわいい~」

「ほら、この猫パレットに似てる」

「あ、似てるかも~」


 最初は当然のように犬猫ゾーンで子犬や子猫たちを愛でます。やんちゃな子猫が走り回ったり子犬が寝ているのを眺めた後は、他の動物達の元へ。そうして、ハリネズミや小鳥達やうさぎ達、ハムスターやテグーなどを愛でました。


「あはは、やっぱ昼間は寝ているのが多いね」

「このハムスター、ミッチーに似てない?」

「そっかな? まぁかわいいところは似てるかもだけど」


 ここでも2人は盛り上がります。ただし、冷やかしには違いなかったので、ひと通り見た後はさり気なくショップを後にしたのでした。そこからは服とかを見て回って書店を巡り、最後にフードコートでお腹を満たしてモールを後にします。

 自転車置き場まで戻ってきたパレットは、ヘルメットを被りながらミッチーにお伺いを立てました。


「次はどこ行く~?」

「お菓子とかも買いたいし、ディオ行こう」

「おっけ~」


 ディオとは地元にあるディスカウントスーパーの名前です。イオンであまり買い物をしなかったのは、そのお店の方が安く手に入るからでもありました。2人は自転車を走らせて、まっすぐに地元のディオへと向かいます。

 毎日が特売日状態だからこそ、いつ来ても駐車場は車でいっぱいでした。その賑やかさも2人は割と気に入っています。駐輪スペースに自転車を停めていると、先に自転車を降りたミッチーが急かしました。


「ほら、パレチー行くよ!」

「ちょ、早いよ」


 ディオの店内は見た目普通のスーパーと変わりませんが、とにかくお値段が安い。それが一番の特徴ですが、他にも特徴がありました。お菓子売り場に到着したミッチーの目が輝きます。


「おお、あったあった! ソルティ!」

「こっちにはオールパインがこーんなにたくさん!」


 そう、地元ではディオにしか売っていないお菓子がいくつかあるのです。ここでしか買えないお菓子があって、しかもそれが安く手に入る! だからこそ2人はディオの常連なのでした。


 安さで言えば、ディオリジナルブランド商品は更に安く、魔剤、いや、ディオブランドのエナジードリンクが50円で売られていたりします。レッドブルとかは200円以上しますから破格ですよね。

 とは言え、まだ中学生の2人には縁のないドリンクですけど。


 ディオはその安さから、業務用のお店の人が仕入れにきているんじゃないの? って言うくらい大量に買う人も頻繁に目にします。どの食材も安いから当然と言えるでしょう。だからこそ、タイミングが悪いとお目当てのものが買えなかったりもします。仕方ないのですけどね。


 パレットとミッチーはここぞとばかりに好きなお菓子をホイホイと買い物カゴに入れていきました。クッキーにポテチにチョコに……暑いのでアイスもカゴに入れていきます。コンビニで買えば150円するアイスがここでは100円以下ですからね。当然、遠慮なんてするはずもありません。


「パレチー、そんなに買ってお金大丈夫?」

「ミッチーこそ」


 2人はそんな事を言い合いながらレジに並びます。普通のスーパーなら余裕で予算オーバーなのですが、ディオだからこそ無事に予算内で買い物が出来たのでした。

 こうして2人はホクホク顔でそれぞれの家に帰宅して、自分達にご褒美デーは幕を降ろしたのです。

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