第12話 一雨ごとに涼しくなる?

 この夏、パレット達の住むメルヘンタオルシティでは雨が一滴も降っていません。梅雨の間は割とたくさん降ったのですが、明けてみると連日の晴れ模様。毎日暑い陽射しが降り注いで、住人達はほとほと疲れ果てていました。

 当然、パレットもその1人です。部屋にはエアコンが付いてますが、逆に言うと、その部屋から中々出られません。廊下に出ただけで熱気がすごいのです。


「ぐえええ……今日も暑いいいい」

「まぁ、もう少しの辛抱だから」

「お母さん、そんな訳ないじゃん……。このままずうっと暑いんだよおお」

「それこそありえないって。日本には四季があるんだから」


 パレットママは娘の愚痴をやんわりとスルーします。そうして、窓に目を向けました。窓から見えるのは青い空と元気な夏の雲。むくむくと力強く盛り上がって、今日も元気そうです。

 そんな景色を見ていると、このままずっと夏のままのような気さえしてきます。


「何見てるの?」

「いい? お盆も過ぎたし、これから一雨ごとに涼しくなるんだよ」

「いやその雨が降らないんじゃん」

「だから、雨が降るまでの辛抱なのよ」


 パレットママはそう言うと、洗濯物の作業をしに脱衣場に向かいます。1人取り残された娘は台所に向かい、冷蔵庫から麦茶を取り出すとコップに注ぎました。


「ぷはぁ~、うまいっ! やっぱ夏は麦茶だねぇ」


 大好きな麦茶を飲んで元気をチャージしたパレットはまた自室に引きこもります。今日はミッチーと遊ぶ予定もありません。アポなしでもきっと家に行ったら遊べるのでしょうけど、今はそんな気分ではなかったのです。何故なら――。


「うう、宿題が全然終わってない……」


 そう、夏休みの宿題の存在でした。宿題を片付けるには、もう残りの8月の日全てを使いきるしかないほどに追い詰められていたのです。今まで遊びすぎていた事を今更後悔するのも、毎年のこの時期のお約束なのでした。

 パレットママは中学に進学してからは一切手伝ってくれません。そんな事情もあって、パレットは窓を眺めながらため息を吐き出すのでした。


「みんなこの暑さのせいだ……。雨なんていつ降るのぉ……」


 エアコンをフル稼働させておきながら、暑いも何もあったものではないのですけどね。窓の向こう側では入道雲がもくもくと膨れ上がり、蝉の声もまだまだ賑やかです。

 パレットは頬杖を付きながら、夏休みが後一ヶ月あったらいいのにとかそんな事ばかり考えて、宿題はちーっとも進まないままなのでした。

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