第7話 風鈴

 今日2人は街のホームセンターに来ていました。お盆を過ぎてもまだまだ暑いので何か涼しくなるようなグッズを探していたのです。パレットが扇風機を展示してある辺りに行こうとすると、ミッチーが美容関係のグッズの方に流れていきます。


「あ、ちょ」

「だってこっちも気になるじゃん」

「しょうがないな~」


 ミッチーに引っ張られる形でパレットもそっちの方に足を向けます。ホームセンターなのでそこまで魅力的なものは見つからなかったものの、値段は割とお手頃でミッチーは色々と悩み始めます。


「うーん、何がいいと思う?」

「そうだねぇ、これなんかいいんじゃない?」

「なるほど、うーん。でも別にホームセンターで買わなくてもいいんだよねぇ……」


 結局散々悩んだ末の結論はドラッグストアで検討すると言うものでした。このホームセンターのすぐ側にそのお店があるので、そこでもう一度悩もうと言う事で決着が付きます。

 で、今度こそ冷感グッズを見る流れに――。


「ねぇパレチー。色々あるよ」

「本当だ。水で濡らして何回も使えるのとか。スプレータイプの涼しくなるやつとか……。効果あるのかなぁ」

「こっちにはテレビでやってた肩にかける扇風機がある!」

「おお~っ」


 肩かけ扇風機は2000円くらいします。買おうと思えば買えなくもないのですが、同世代で使っている人を見た事がなかったので、その商品が実在している事を確認しただけで終わりました。

 その後の冷感関係では、敷布団に敷くタイプのシートやら涼しく感じるらしい枕などのチェックをします。


 結局はどれもあと一歩の決め手に届かない感じで、2人はぐるぐるとセンター内を巡りました。ホームセンターと言えば便利グッズなども売っています。いつの間にか2人の興味はそっち方面に流れていきました。


「おお~、これ料理で楽出来るやつ~」

「でもミッチー料理しないじゃん」

「ぐぬぬ……。ま、ママに買ってあげよっ!」


 こうして、ミッチーが料理系便利グッズをいくつかカゴに放り込み、2人は他に何か魅力的なものがないかぐるぐる店内を回りました。大体の欲しい物を選び終え、そろそろ帰ろうとしたその時、パレットの目に夏の風物詩の姿が目に入ります。彼女は吸い込まれるようにその売場に歩いていきました。


「ちょ、パレチーどうしたの?」

「ほらこれ、かわいい」

「あ、風鈴……」


 そう、それは風鈴のコーナー。安いものから本格的なものまで、いくつかの種類の風鈴が並べられています。とは言え、いざ買おうとすると値段だけでは決められないものがあるのでした。

 パレットが風鈴の前で固まっているところに、ミッチーもやってきます。


「悩んでんの?」

「やっぱ風鈴と言えばデザインより音色かなって」

「じゃあ鳴らせばいいじゃん」


 ミッチーはすぐに並んでいる風鈴を順番に軽く鳴らしていきます。その結果、安いものは安っぽく、高いものは本格的で涼しげな音色を奏でてくれました。

  

「どう?」

「ミッチーはどれが好き?」

「私は買うつもりはないけど、買うならこの一番高いのかな。風鈴って感じの音だし」

「だよねだよね!」


 こうして友人の後押しもあって、パレットは並んでいる中で一番高い風鈴の購入を決めます。帰宅後、部屋の窓に吊るされた風鈴は時折涼しげな音色を奏でてくれました。その鈴の音は体感温度を数℃下げるのに役立ってくれます。

 ただ、風が強いと鈴が鳴り響きすぎて、風情も何もあったものじゃないと言うのが難点ではあるのですけどね。

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