第5話 地元は過ごしやすい

 パレット達の住むみかん県は温暖な気候です。夏はそこまで暑くもならず、冬もそこまで寒くもなりません。地形から言っても地中海の気候に近い感じなのです。地元であるメルヘンタオルシティは台風の影響もあまりありませんし、景色もまた中々美しいのでした。


 今回、パレットはミッチーは2人でお出かけ。地元の展望台に来ていました。日焼け止めをたっぷり塗って、しっかり帽子をかぶって対策は万全です。展望台は人気がないのか2人だけの貸切状態でした。夏は暑いですからねえ。

 時折吹く風に帽子を抑えながら、パレットはまぶたを閉じました。


「ふー、潮風が気持ちいいね」

「でもやっぱ暑いよ。下の海水浴場で泳ごうよー」


 ミッチーはどうやらこの環境があまりお気に召さない様子。そりゃ夏は泳ぎたい季節ですものね。この展望台の下は海水浴場になっていて、夏は割と多くの人が海で遊んでいます。今展望台に人がいないのも、みんな泳ぐ方を優先してしまうからなのかも知れません。

 泳ぎたがる友達の顔を、パレットはじいっと見つめます。


「水着持ってきてないじゃん」

「だから水着に着替えてさー」

「今日はこの景色を眺めに来たの! この展望台からの景色を独り占めとか贅沢じゃん」

「単に暑くて誰も来ないだけだよー」


 展望台から見える景色は、海と島々と対岸の隣県と島々を繋ぐ大きな橋。昔から続く景色と、最近出来た近代建造物が見事に調和しています。遠くに見えるゆっくり海を進む船もまた風情のあるものでした。


「潮風が心地良いでしょ」

「まぁ、それはそうだけど」

「地元は過ごしやすい方だよ。暑いところなんて40℃近くになるんだよ」

「30℃超えたら暑いんだよー」


 パレットのどんな言葉もミッチーには届きません。展望台でじいっと景色を見ていると、2人共大量の汗を流し始めていました。流石にこの状況が長く続くと言うのはまずいと言う事で、2人共一旦この場所を離れてミッチーの家に避難する事にします。

 自転車で並んで坂を下っていると、泳ぎたがりの友人が話を持ちかけてきました。


「ねぇ、家に帰ったら水着持って泳ぎに行こうよ」

「じゃあ私は一旦自分の家に戻るけど?」

「それでもいいよ」


 こうして、その道中で次の予定は決まり、そのまま2人は別れます。家に帰ったパレットは着ていく水着をどれにするか考えていたものの、不意に襲った眠気に負けてしまい、そのまま眠りこけてしまったのでした。

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