第2話 『としている』が嫌い!
パレットが通うのは市立ノウスゴー学園。放課後に彼女が窓の外を眺めていると、友達のネズミ耳のミッチーがやってきました。
「パレチー。今日部活ないんだから早く帰ろうよー」
「そだね、帰ろっか」
友達に誘われたので、パレットもすぐに教科書とかをかばんに詰め込んで席を立ちます。2人は共に同じ部活『文芸愛好会』に所属しているのですが、部員が集まるのは週に一回なので、その日以外は帰宅部員状態なのでした。
ミッチーとパレットはお互いの家も割と近いので途中までは一緒に帰れます。なので、その道中で色々雑談して帰るのが日課のようになっていました。
「ところで、何でぼうっとしてたの?」
「ちょっと色々考えててね~」
「何々? 恋バナ? おねーさんに聞かせんしゃい」
「いや同級生やん」
パレットがツッコミを入れたところで2人は笑い合いました。ひとしきり笑ったところで、彼女は心の中に溜まっていたものをぽつりぽつりと吐き出し始めます。
「あのさあ、新聞とかで『~としている』って言い回し? 文法? そう言うのがあるじゃん」
「え?」
「私、やっぱアレが好きくないんだよね。ネットニュース読んでいたらまたその文章が出てきてムカムカしちゃってさ。それで心を落ち着かせてた」
「何それ、変なの……」
パレットのいきなりのカミングアウトにミッチーは目を丸くします。このいまいち響いていない友達の反応を見た彼女は、マジ顔で見つめ返しました。
「だって何でもかんでも『~としている』で済ませてるんだよ。手抜きすぎ! こことか見てよ。『「無事に解決して良かった」としている』だってさ。日本語として変じゃん?」
「んまぁ、確かに何か足りないような……」
「この場合、コメントしているってちゃんと書かなきゃでしょ! コメントを省略しているんだよ。手抜き! わざわざ手を抜く意味が分かんない!」
「う、うん。分かったよ。まずはちょっと落ち着こうか」
この熱弁で一応意味を理解したミッチーはパレットを落ち着かせようとします。けれど、その後も彼女は自分の不満を一方的に語り続け、ネズミ耳の少女はずーっとそれにうなずく事しか出来ませんでした。
「でね、私はこう言う文章を見る度に……」
「ごめん。私の家、こっちだから」
「あれ、もうここまで来てたんだ。じゃあまたね~」
「またね~」
言いたい事を友達に吐き出せたパレットは、いつの間にかスッキリした顔つきになっていました。日本語に細かいこだわりのある女の子だったのですね。
それにつきあわされたミッチーも災難でしたけど、幼い頃からの付き合いなので今日はちょっと失敗したなくらいにしか思っていないみたいです。
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