第38話 背伸びをし過ぎたら脹脛が攣る②
放課後になり、竜也は自分の学童机の物入れに、財布に入っていた、
「
やがて空はすっかり茜色に染まり、外では家路に帰ろうとする
「いつだ。いつ現れる、犯人め」カッターシャツの背中は、汗でビッショリと濡れ、背中にくっ付いたシャツが不快感を増していた。
そんな時だった。人が近付く気配があり、ロッカーの溝穴から教室内を覗いた。その人物は、クラスメイトの上田だった。部活をしていない上田は、校外でロックバンドを組み、バンド活動費を捻出する為に、アルバイトに
上田は周りを警戒するような仕草をしながら、ゆっくりと竜也の机に近付いた。意を決した竜也は、勢い良くロッカーの扉を蹴り開けた。
「遂に姿を現したな、窃盗犯、
「な…な……何だよ。俺が何かしたってのかよ」上田は突然姿を見せた竜也に、完全に狼狽えていた。
「何かした?巫山戯んな!お前が手にしているそれが何よりの証拠だ」上田の手元には、弁当箱が握られていた。
「俺の弁当箱が何の証拠だってんだ?」
「いや……俺の机には弁当箱じゃなく、茶封筒が入ってて……その…お前が探ってたのは、俺の隣のお前の席……だよな。そう思ってたんだよなぁ、ハハハッ」竜也はテンションを下げながら、自分の勇み足に気付き、笑って誤魔化す他なかった。
「何だよ、びっくりさせやがって」上田は額から滲み出た汗を袖で拭った。
「でもよ、お前だってややこしいんだよ。周り気にしながら不審な行動を取るからよ」
「
そして次の日。
「川島。昨日はダメだったけど、今日こそは犯人を炙り出すぜ」竜也は意気込んで言った。
「あぁ、神子園か。すまん。実は同じ野球部の山本が、気を利かせてジャーマネに出してくれてたんだよ」それを聞いた竜也は、ゆっくりと山本に振り返った。
「や・ま・も・と。チェースト!」竜也の正拳が、身構える山本の顔の前で寸止めされた。
「な……何だよ。いつもみてぇに殴らねぇのかよ」
「ふん。ここで殴ったら過剰防衛。悪きゃ暴行罪になっちまうからな」竜也は格好をつけて
「なぁ、あいつ過剰防衛の意味分かって言ってんのかな」
「さぁ。でもまぁ誰と出会って何があったか知らねぇけど、殴らなくなったんなら良かったんじゃねぇ?」
神子園 竜也の名探偵への道は、まだまだ遠い先の事のようだった。
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