第37話 背伸びをし過ぎたら脹脛が攣る①

「だから、本当マジなんだって」

「そんなに言うんなら、証拠見せろよ証拠を。この記事にも、私立探偵が事件を解決って書いてあるだけで、高校生の “こ” の字も出て来ねぇじゃねぇか」連続放火事件解決の翌日、神子園 竜也は、ここ尚岳しょうがく高校の同級生たちに、自分が事件解決に一役買った事を自慢していた。しかし新聞記事にも探偵を賞賛する事は書いてあるが、竜也の事は微塵も書いておらず、信じてもらえずにいた。

「しょ……証拠かよ。ほら、この記事の名探偵、伊集 練斗先生こそ俺の師匠だよ」竜也の幼稚な発言に、クラスメイトたちはバカらしくなり散っていった。

「クソッ、俺だって『貴男のその行動こそが貴男が犯人である証拠です!』なんてやってみてぇよ」竜也は犯人を指差すような仕草で探偵を真似た後、地団駄を踏んだ。

 すると教室の隅で、何やら騒ぎが起こっていた。

「無い、無いぞ。確かにこのカバンのポケットに入れていたはずなのに」野球部員の川島と言う生徒が、自身のバッグをいじりながら、今にも大雨を降らしそうな面持ちで、狼狽うろたえていた。

「どうしたんだ、川島。事件か?」竜也は胸躍らせる気分で川島に聞いた。

「何だよ、俺の不幸がそんなに楽しいってのか」川島は遂には瞳を潤ませて、恨めしそうに竜也を睨みつけた。

「違う…違うよ。何かあったんなら、俺が力になるよ。この名探偵の一番弟子、神子園 竜也様に任せなって」

「お前の冗談に付き合ってる場合じゃねぇんだよ。今日提出しなきゃいけない合宿費用の二万五千円が盗まれたんだ」川島は学ランの袖で目をぬぐった。

「何?それなら俺に任せなよ。良いか。犯人は金の匂いがしたら、必ずもう一度犯行を犯すはずだ。だからそれを逆手に取って、縄を仕掛けるんだよ」竜也は胸を張って、自信満々に答えた。

「何だよ、縄って。罠の間違いじゃねぇのか?」川島は不信げに竜也を睨みつけた。

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