第28話 殴るは恥だが役に立つ①
探偵は
「で?これは何?こんな物であなたを許せと言うの」凛子は探偵も見ずに、冷たい顔つきで言った。
「まぁ、そう言わずに食べてみてよ。桃園郷の名物らしいからさぁ」探偵の言葉を受け、凛子は仏頂面のまま紙包みを開けた。
「えっ、なんかかわいい」凛子は普段の凛とした雰囲気を一変させ、頬を赤らめた。
「なんかね、桃園郷の合掌造りの建物を模した
「なんか幸せ。これは……抹茶じゃん」初めて見る凛子の乙女チックな雰囲気に、探偵は胸を
「ねぇ、それでさぁ、仕事の話しなんだけど」
「はぁっ?仕事。あなたから仕事の依頼なんて珍しいわね。まぁ一応聞いて上げるわ」凛子は憮然とした表情を作って、二個目の
探偵は桃園郷での殺人事件について詳細を説明した上で、村上 千代乃の弁護依頼を伝えた。
「分かったわ。犯行を認めてるんなら、ある程度の減刑は可能と思うわ」
「担当刑事の南警部補ってのがいんだけど、連絡があって、僕が推理して事件が解決したところから、自首扱いにするって言ってくれたんだ。どうか彼女が一日でも早く出て来れるように頼むよ」言っている探偵の表情を見て、凛子は訝し気な顔をした。
「な……何だい。何か言いたい事でも?」
「それはこっちの台詞。他にも頼み事があるんじゃないの」クールを決め込んでいても、弁護士にはお見通しのようだった。
「参ったなぁ。言い
「いいわ。聞かしてちょうだい」
探偵が桃園郷から帰った日、事務所のドアに一枚のメモが挟まれていた。メモの内容は以下のようなものだった。
『緊急を要する依頼の為に来訪しました。お帰り次第、ご連絡を希望します。井上 翔子』芳名と共に電話番号が記載されていた。
探偵は早速記載された番号に掛けた。依頼人の
翔子の依頼内容はSNSによる誹謗中傷をした人物の特定という事だった。中傷の内容も直接本人を目の前に言えば、名誉毀損罪が成立するようなものだった。
探偵は
探偵の頭の中には、無邪気にはしゃぐ一人の女子高生の姿しか浮かばなかった。
「なるほど、分かったわ。美々は言わば私たち家族が生み出した
「詐欺事件の時もそうだったけど、彼女には事務所から指示を出してもらう役割りを担ってもらう。決して現場には出さないよ」
「分かりました。村上さんの事は任せておいて。くれぐれも美々の事をよろしく」凛子は出張の為の身支度を始めた。
「鳴海弁護士。どうか千代乃さんの事を重ねがさねよろしく」探偵はスーツを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます