第23話 名探偵は安らぎの地でも事件に遭遇する②
滅多に大きな事件など起こらないこの温泉地で、殺人事件があったとして、周囲は騒然となった。
「おい、お前さぁ。この前に殺人事件を担当したのっていつだっけ」捜査の指揮をとる南警部補が部下の
「僕が三年前に捜査一課に配属になって初めてです。何年前って言われたって分かりませんよ」
「あの……司法解剖の結果はいつ分かりそうですかね」
「はっ?あんた誰?」もちろんそうなる。
「失礼。僕はこう言う……」探偵は着ていた浴衣の懐に手を入れた。
「そっか。僕は私立探偵をしている伊集 煉斗と申します。たまたま休暇でこの温泉地に赴いていたところ、この事件に遭遇した訳です」
「ほうほう、警察も舐められたものですな。こんな事件くらいあなたのような方の力をお借りしなくとも、我々で解決しますがな」南は鼻息荒く答えた。
「そうですか。それではお手並み拝見と言う事で」探偵は
そのまま菊の間へ行った探偵は、規制線の外から現場を眺めた。
『この部屋は明らかに僕の部屋とは違う。何が違うんだ?』そこへ通り掛かった仲居に声を掛けた。
「えぇ、この部屋は特別室ですので内風呂がついてございます。黒川様はご希望なされませんでしたが、
「仲居頭?
「えぇ、仲居頭の
「ふーん。そうなんだ。ところでさぁ特別室の温泉と大浴場の温泉は同じ源泉なのかな」
「同じと言えば同じですが」仲居の奥歯に挟まったような言い方に探偵は反応した。
「ここの源泉は五十度から六十度くらいあります。大浴場はそのままかけ流しにすると、当然温度が高過ぎるので、地下水で温度を下げています。内風呂はポンプで二階まで吸い上げるのですが、特にこの時期は、外気が低いので、給水管を伝う間に温度は適温になるので、源泉そのままが供給されています」
「そう言う事か……それで千代乃さんはここに来る前は何をしてたの」
「詳しくは知りませんけど、なんでも官僚だか政治家の奥様であられたとか。ご主人が自殺で亡くなられて、ここにおいでになったとか。あっ!私が言ったなんて言わないで下さいよ」探偵は人差し指を唇に当てがいウィンクした。
一度自室に戻った探偵は、ノートパソコンを開き、何やら検索をし始めた。そして検索結果から、ある一つのネット記事に目を止めた。
「ふーん。そんな事が……後は司法解剖の結果と、どうやって実行したかだよね」探偵は熱い日本茶を啜った。
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