第13話 騙す奴らは馬に蹴られて死んじまえ①
「おっはよー。かわいい天使、美々ちゃんが来てあげたよぅ」
「ゲホッ、ゲホッ」朝の
「大丈夫、探偵……キャハハ、鼻から黒いの出てんじゃん」
「おかしくない。なに本当に来てんだよ。学校はどうしたの。学校は」探偵は鼻を拭くついでに、おしぼりで顔全体を拭いた。
「あれ?姉貴に聞いてない。アタシ通信制だよ」
「通信制?頭の良い君がかい」
「そうアタシ元メンヘラなんだ。とは言っても恋愛系のやつじゃないよ。対人系ってのかな?高校に上がる時は自分と向き合う必要があったの。だから引きこもり」
「メンヘラ?恋愛系?何言ってんのかさっぱり分からん」メンヘラとはインターネット上で作られた造語でメンタルヘルス(心の健康)を略してメンヘル、語尾にerがついてメンヘラとなった。心に問題があり、精神状態が不安定な人の事を指す。最近は恋愛関係における相手への異常な依存状態を指すが、美々の場合は家族に受け入れられていないとの強い想いから自己否定に
「なるほどねぇ。それで世の中の人間や家族に対して存在意義を示す為に正義の味方ごっこって訳かい」探偵はすっかり冷めて
「さすが探偵。察しが良い。その通り。だから今度のターゲットはお年寄りを騙して金を巻き上げる詐欺集団よ」今度はコーヒーを吹き出してしまった。
「美々ちゃん。まだ懲りないのかい。昨日、あんな危ない目に合ったのにさぁ」
「別にアタシ危ない目になんか合ってないもん」
「それは僕が
「だから今度は探偵がいるじゃん。こぉんなに頼りになる探偵がさぁ」探偵は長い溜め息をついた。
「そもそもさぁ、何でそんな危険な情報が女子高生の君に簡単に入ってくるかなぁ」麻薬取り引きにしろ、今回の詐欺集団にしろ、何故、一女子高生の美々にそんな情報が
「情報?そんなの簡単じゃん」そう言うと美々は背負っていたリュックからノートパソコンを取り出した。そして開くなりキーを叩き始めた。
「例えばだけどこれでしょ。それからこうして、ここをクリックすんの。ほら出たじゃん」パソコン画面には県警本部からしか見られない内部データが写し出されていた。
「おい……これって……」探偵は目を見開いて画面を注視した。
「うん、県警の。そんな具合で次はこうするじゃん。そんでキーワードを入れんの」すると次は県警が極秘理に追っている詐欺集団の情報が写し出された。
「だからぁ。今警察が重要案件として調べてる事件なんて簡単に見られるって訳。でも探偵も知ってると思うけどぉ、警察って無能じゃん。だからぁ美々ちゃんがこうやって捜査して上げてるって事」
「まさか、半年前の県庁に不正アクセスがあったって事件……君か。子供じみた台詞で "弱い者イジメしたら許さねぇ" とかってやつ」
「バレちゃった。まぁ県庁ほどのお硬い組織のデータベースに入るのってどんだけ難しいのかなって思って、試しに入ってみたら、南京錠しか掛けてない
「じゃあ君は引きこもりのハッカーって訳かい」
「そんな言い方、
「ねぇ探偵。これ見て」美々がパソコン画面を示すと、そこにはどこかの事務所のような場所が写し出された動画だった。
「この動画が何か?」
「これは県警本部から仕入れた情報を元にアタシが探り出した県内某所の詐欺集団の
"だから頼むよ。母さん。急いで百万円用意してよ"
"コウジ、落ち着くんだよ。心配ないから、百万円は
"この後、弁護士のハシモト ユウイチと言う先生から電話が入る。後は先生の指示に従ってもらえないかな?"
"あぁ分かったよ。必ずお母さんが助けるから、気落ちしちゃいけないよ"
「このクソ……探偵、行こ。こんなクソ共ギタギタなんだから」美々は意気込んで立ち上がった。
「待ちなさい。美々ちゃんはお留守番だ」そう言うと、探偵はイヤホンマイクを美々に装着し、コードをパソコンに繋げた。
「良いかい。君はこのパソコンから情報を仕入れて僕に指示を出してくれ。僕は現場で君からの指示を元に、奴らの悪事を食い止める」そう言ってパソコンにUSBを差した。
「君の声はそのUSBを通してこのイヤホンに届く。そしてこの腕時計型マイクの声は君のイヤホンに入ってくるようになっている」探偵はイヤホンを耳に装着した。
「探偵。何か作戦とかあんの?」
「いや。その時々で考える。後は指示だけ頼む」そう言って探偵は事務所を出た。
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