第12話 危険なJK④
探偵は
「ところで何故あの暗号文が降下法だって気付いたの。あの意味が分からない文章が、何かの暗号だって事は私にだって分かるわよ。でも暗号なんて何種類もあるんでしょ。それを降下法と見抜けたのは何故なのかしら」凛子はカシスソーダを人差し指で軽く混ぜた。
「うん。答えに辿り着く切っ掛けは最後のリターンマークさ。あれを改行みたいな意味に取るのか、下がると取るのかで意味は変わってくるんだろうけど、決め手は日本語としては違和感だらけの "づ" と "な" の後に記された小さな "や" だよ。特に小さな "や行" は通常では母音が "い" の文字の後にしか来ない。だから "な" は "に" の前だから、自ずとこれは降下法で書かれてるって気付いたのさ」探偵はバーボンを一気に飲み干すと、グラスを頭上に掲げてマスターに合図した。
「なるほどね。大した名探偵っぷりだわね。気は引けたけど、今回あなたに依頼したのは正解だったかも知れないわね。でも美々とのやり取りでは醜態を
「それだってちゃんと調べてたんだろ?美々ちゃんの母上・文乃さんに聞いて、ちゃんと道広氏を愛していたと。美々ちゃんも、れっきとした道広氏の娘であると。しかし道広氏の愛情が
「何でも分かったような事を言うのね。あなたの言う通りよ。黒い噂にしたって本当は
「少しは僕の事を見直してくれたって事かい?」
「ふっ。気にいらないけど、認めて上げるわ」
「いたーっ。やっと見つけたよ」入り口のドアの鐘が鳴ったと思ったら、女と呼ぶには少し早いと思われる女が、興奮気味に立っていた。
「み……美々?」さすがの凛子も大人の社交場で見かける未成年の妹には面食らった。
「ねぇ、探偵。アタシ決めた。このかわいい美々ちゃんが探偵の助手になったげる」美々の突然の宣言に、凛子は目を白黒させた。
「アンタ……何言ってんの?ねぇ伊集さん。もちろん断る……」
「君に僕の天才的推理について来れるかな?」探偵は遊んだ前髪を
「もっちろん!このかわいくて頭の良い美々ちゃんに任せなさい」美々は胸を張って叩いた。
「こ……この変態!未成年者との交友は犯罪よ。ぜーったいに訴えてやる!」またしても探偵の左頬を激痛が走った。
「ちょっ……話しが違うじゃんか。僕を認めてくれたんじゃ……」
「良いじゃん。探偵にはこのかわいい助手、美々ちゃんがいるんだから」店を出ていこうとする凛子を追いかけようとする探偵の腕を、長年探してきて、やっと見つけた居場所を離してなるものかと、美々はしっかりと掴んでいた。
「もう何回殴られても良い。凛子ちゃーん!待ってぇ」探偵の魂の叫びは店内を虚しく響き渡らせた。
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