第10話 危険なJK②
凛子は探偵の愛車、フォルクスワーゲン・ビートルの助手席に乗り込んだ。正直なところ探偵が言っている意味も、やろうとしている事も、まったく理解出来ずにいた。
「それで?これから何処に行こうって言うの」
「何処ってラブホだけど」探偵の左頬を懐かしい激痛が走った。
「あなたやっぱり最低ね。私が本気で妹を心配してるって言うのに」凛子はほんのり涙目になっていた。
「ご……誤解だって。これを見てごらんよ」探偵はスマートフォンに映し出されたマップを見せた。
「良いかい?美々ちゃんはMimichantoと言うハンドルネームでSNSを投稿している。頻度も頻繁だ」そう言うと探偵はマップ画面を美々のSNS投稿ページに切り替えた。
「何?このいかがわしい映像は……」凛子は目を白黒させて絶句した。
「いかがわしいと思うのも無理はない。だけど賢明で堅実な君が取り乱しちゃいけない。美々ちゃんは感も頭も良い
「あなた……父を……美々を信じてくれるの?」
「いや。君をさ。このSNSを見る限り、美々ちゃんはこのホテルから投稿している回数がやたらと多いんだ。これは何かのメッセージと受け取るべきなんだ。今もこのホテルにいるか
十五分ほど車を走らせると、やがてホテル "フォーリンラブ" に到着した。探偵は迷う事なく入り口を入ると、部屋案内の電光掲示板を
「申し訳ありませんが、こちらの402号室から通報がありましてね、中で暴行が行なわれてるとの事なんですが、確認させてもらえますか?」探偵は黒い手帳を開いて案内係に見せた。
「わ……分かりました。それでは同行して鍵を開けます」
「いえ。凶暴な男の可能性もあります。危険ですのでカードキーをお渡し願えますか」探偵はカードキーを受け取ると、凛子と共にエレベーターに乗り込んだ。
「あなた、どう言う事?それ偽造品でしょ。しかも嘘までついてカードキーを受け取るなんて」
「探偵は弁護士や警察とは違って法の対極に存在してるものなんだ。目的の為には何とやら……なんてね。そこは自転車の二人乗り程度にさ」探偵は軽くウィンクをした。やがて古い型のエレベーターは、甲高い到着音をかき鳴らした。
402号室の扉の前に立った探偵は、激しくノックして、声を
「警察です。事件の可能性がありますので、
「フロントからカードキーを預かっています。開けますよ」探偵が追い打ちをかけるように続けると、中から気配がした。すると解錠の音が聞こえ、
「はぁ。事件?何かの間違いじゃないのか」髭面の男は機嫌が悪そうに対応した。
「通報がありましたので確かです。中を確認させて頂いてよろしいですか」そう言いつつ部屋中に半身を入れた。
「おい。ちょっと……」男の静止も聞かず、探偵は中へと入っていった。
ベッドの上には上半身裸であろう女が、シーツを
中には一枚の紙切れが入っており、それを手に取った。しばらく探偵は書かれている文字の内容を精査した。そして紙切れを折り畳むと、ジャケットの内ポケットに仕舞いながら薄笑いを浮かべた。
「なるほどね。美々ちゃんは中々の策士なのかな」そう言うと、問題はなかったようです、などと言い、
「ちょっと、分かるように説明してちょうだい」急ぎ足で歩く探偵を追いかけながら凛子は問い
「今は説明している暇はない。続きは車の中で」ビートルに乗り込んだ探偵はエンジンを始動させるとスマートフォンを凛子に渡した。
「そのSNSの画像を見てごらん。
「次もやっぱり左端に写っている。口には四つの苺。中央には林檎かな?そして右端にトランプのハートの二が。そんな具合に彼女は自分のいる部屋が402号室である事をアピールしていたんだ。そして中央の丸を示す
「そしてこの紙切れだ。彼女も、もしかしたら賭けだったのかも知れないね。しかし感や頭だけじゃないようだ。運も良かったみたいだね。何せこの紙切れは僕に見つけられたんだから」紙切れを受け取った凛子は首を
「でもこの書いてある内容、全然意味が分からないんだけど」
「それは彼女が今いる場所と、彼女の行動の真意が暗号として書かれているのさ」ニヤリと笑った探偵は、アクセルを踏み込んだ。
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