第7話 スケルトンの魔力

「コツコツ(神龍バハニュート様?、魔力枯渇って何ですの?)」


生後数日のスケルトンには魔力枯渇に関する知識はない。


人格が戻って生前の記憶が多少思い出せるがそれも途切れ途切れで魔力枯渇に関する記憶はない。


そして取り込んだホネを召喚できるという自分の能力すら知らないスケルトン以下の知識しかないのだから当然と言えば当然だ。


「ダスケはワシが神龍じゃと全く信じておらんな。」


「コツコツ(そんなことないよ。ホネは天にも昇るほど美味しいから天地がひっくり返ったらあり得ると思うよ。)」


天地が引っくり返ることはない。


つまりスケルトン改めダスケは神龍であると全く信じていないわけである。


トカゲを見て神龍だと思える生き物はどこにもいないだろうからダスケが悪いわけではない。


「ハァ~、こんなナリで神龍と言っても信じてもらえんかぁ。」


自分でも分かっていたようでトカゲも信じてもらえるとは思っていなかったようだ。


それならどうして怒りを爆発させたのか不思議に思うがそれはそれ、これはこれなのだろう。


「それで魔力枯渇じゃったな。読んで字のごとし。魔力が空っぽになった状態じゃ。魔力が空っぽになると生き物は生命活動を最小にして魔力回復を最優先に行うんじゃ。普通の生物なら眠りにつくことで魔力の回復を促すのじゃが眠れないスケルトンは気絶するんじゃ。分かったか。」


「コツコツ(それでスケルトンは取り込んだホネを召喚しただけなのにはどうして魔力枯渇になったんだ?)」


この疑問は正しい。


召喚に必要な魔力は物体より生き物、近くにあるものより遠くあるもののほうが多くの魔力が必要になる。


どこか別の場所や次元にいる生き物ではなく自分で取り込んだ物体を召喚するのに必要な魔力は少ないはずなのだ。


もちろんスケルトンはそのことは知らないが。


「ホンマにワシも不思議で仕方ないわ。考えられることはただ一つ。ダスケの魔力が非常に少ないってことだけじゃ。高密度魔素の塊であるホネを取り込んだんじゃからそれに比例した魔力を持っとると思ったんじゃがなぁ。」


繰り返しだがダスケはその素体となった白骨死体が取り込んだホネ以上の魔素を吸収して変質したためにそれ以下の魔素の塊を取り込んでも大きな変化がなかったのだ。


ハッキリした意志が出てきたのは高密度魔素のホネを吸収したからではなく、そのあまりの美味しさに感情が刺激された結果眠っていた意志が呼び覚まされたのだ。


彼は生前はグルメだったの・・・はずはない。




「コツコツ!(俺って魔力が少ないのか!)」


「いや、自分のことじゃろ!?」


生まれて数日のスケルトンは未だに自分自身のことが分かっていない。


「コツコツ(そう言われても分からんものは分からん。って言うか自分の魔力が多いか少ないかどうやって調べたらいいんだよ。比べる方法も知らんし、比べる相手もいないぞ)」


「何言っとんじゃ。そんなのはステータスを見れば一発じゃろ。」


「コツコツ(ステータス?)」


これまた何度も言うがダスケは生まれて数日のスケルトンだ。


そしてバハニュートが初めて会った生き物だ。


知識を得る機会がなかったのだから知らないのは当たり前なのだ。


もちろんバハニュートは心を読めるわけではないのでダスケが言わないことは知らないのだからステータスくらい知っているはずと思うのも無理はない。


ただ神の一柱である神龍なら心を読めても不思議ではないが・・・。

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